間話「ツッコミ担当の業じゃね」①
向島市にあるとある耳鼻咽喉科に七森千手はいた。
「はい、こんにちは。初めましてですね。えっと、七森千手さん。本日は、喉の痛みがあるということでよろしいですか?」
診察椅子に座る千手は、力なく「はい」と言う。
「最近、声をよく出すことがあるせいか痛みが残ってしまって。うがいとかしているんですが」
「そうですか。それはお辛いでしょう。では、診てみましょう」
「――あーん、してください」
「あーん」
診察が始まった。
医者は喉の奥を覗きこみ、ふむふむ、と何やら納得したように頷く。
「はいはい、これはツッコミの多用による喉の炎症ですね」
「ツッコミのせいなの!? ていうか、喉の炎症を見てツッコミのしすぎってどうやって判断するんだよ!」
「つまり、今のツッコミを続けているから起きる炎症ですね。ツッコミ役には避けて通ることができない業のようなものです」
「おい、この医者、業をカルマって言いやがったぞ」
「七森さん。そういうところが喉を痛めてしまうんですよ。もっと喉のことを労わりながらツッコミをしてくださいね」
「いやいやいや、喉を労るツッコミってなんだよ! まず、ツッコミをやめさせろよ! ていうか、俺だってツッコミをしたくてしているわけじゃないからね!?」
「――そこです」
「どこだよ!?」
おかしい。
喉の痛みを訴えて耳鼻咽喉科に来たのに、ここでもツッコミをしたせいで喉の痛みが増した気がする。
正直、来る病院を間違えたのではないかと思った。
「七森さんは少しツッコミのフレーズが多いようですね。眼に見えるすべてのものにつっこんでいるから、喉に負担が大きいんです。一番、ツッコミをしなければならないことを的確にツッコみをいれてこそツッコミ担当です」
「……なんで病院でツッコミのダメ出しされなきゃならねえんだよ」
「――それです!」
「だから、どれ!?」
「今のツッコミは良かったですね。一番ツッコむべことだけ、ツッコミましょう。一気にがーっとツッコミを続けると、喉だけではなく身体にも負担は大きいのです。長くツッコミを続けるのであれば、若いからと言って無茶をしないように」
「……職業みたいに言われてもこまるんだけど」
「とりあえず、炎症を取るお薬とうがい薬を出しておきますね。一週間ほど様子を見て、痛みが続くようなら――修行しましょう」
「治療しろよ!」
「ツッコミを良いツッコミにすれば、自然と喉の痛みも取れます。ですが、このまま無理なツッコミを続けていると」
医者が真剣な顔をする。
千手も背筋を伸ばした。
「なんやかんやあって、喉が爆発します」
「するわけねえだろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「今のツッコミは、少し良くないですね。――するわけねえだろっ、で大丈夫です。では、お大事に!」
「二度とくるか!」
「――きっと来ますよ、君は。一週間後にまた」
「意味深なキャラみたいな感じ出してくるんじゃねえよ!」
千手は椅子から立ち上がると、一応、お辞儀をしてから診察室を後にした。
――残念ながら、医者の予告通りに一週間後にまた耳鼻咽喉科にお世話になるのだが、それはまた別のお話。
体調不良のため間話で失礼いたします。




