14「膝枕は青春の奥義じゃね?」②
名残惜しいが夏樹はすみれの膝枕から起き上がった。
両手にあるウィジャボードとウェットティッシュが海の神たちと邂逅したことが事実であることを教えてくれた。
「ちょっと真面目に話をするんだけど――」
「……夏樹くん? 真面目な話できるの?」
「お兄ちゃん、無理しなくていいんだよ?」
「あまり無理するのは青春じゃないわよ?」
「真面目に話をするんですけどっ!」
夏樹は気絶している間に起きたことを一登たちに語った。
意識を失い気づけば常夏のビーチにいて、海の神、大地の神、炎の神と出会ったこと。風の神だけは最後に会えそうだったが、会えなかったこと。
夏樹の精神世界にシイラがいたこと。それを食べたこと。
売店もあり、働いている人がいるらしいこと。
そして、夏樹に宿る海の力が、海の神が姉と呼ぶ、始まりの海であること。
「…………夏樹くん、ちょっといいかな?」
「うん?」
「ツッコミどころが多すぎて千手さんを呼びたいところなんだけど、夏樹くんの話だといずれ炎の神が俺のところに会いに来るよね?」
「うん! 一登なら仲良くできるさ! 強化フラグ強化フラグ!」
「……どう反応すればいいのかわからない」
一登は頭を抱えてしまった。
奇遇なことに、夏樹も頭を抱えたい出来事だった。
「ねえねえ、お兄ちゃん。じゃあ、その手に持っているウィジャボードって大地の神様がくれたってことだよね?」
「そうだね。見てみる?」
「いいの!? 杏ね、こういうのに興味があったんだけ……ど? あの、お兄ちゃんが持っているウィジャボード……気のせいかな、しっとりぬっとりしていない?」
「してるね。とってもねっとりしています」
「どうして!?」
「それはね――大地の神のふんどしの中に入っていたからだよ!」
「いやぁあああああああああああああああああああ!」
杏が悲鳴をあげて距離をとった。
すみれも同じく、逃げてしまった。
「あ、あんたなんてもんを持ってきたのよ!?」
「強制的に渡されただけですぅ! なっちゃんだって欲しくありませんでしたぁ!」
「……杏、やっぱりいいよ。お兄ちゃんが大事に保管しておいてね」
「あげるよ?」
「いらないもん!」
「すみれさんは?」
「いるわけがないでしょう!? ツインテールで締め殺すわよ!?」
残念だが、ウィジャボードの引き取り手はいないようだ。
「じゃあ、一登に」
「どうして俺に!? いらないよ!? 夏樹くんがもらったんだから夏樹くんがどうにかしてよ!?」
一登もいらないようだ。
みんな遠慮しているらしい。
「いっそアイテムボックスの中に入れちゃいなよ」
「……アイテムボックスの中には食料も入っているんだけど」
「やめておこう。うん。その方がいいよ」
「でしょう?」
とりあえず夏樹はウェットティッシュを取り出し、ウィジャボードを拭き始めた。
決して大地の神が悪いとは思わないが、ふんどしの中に入っていたものに抵抗があるのも事実だ。
炎の神の気遣いをありがたく頂戴し、一生懸命拭くしかない。
「それで、結局のところ海の力の女性とはどうなるんだって?」
「それがねぇ、なーんも話が進まなかった! 海の神たち俺の中でやりたい放題やって帰りやがった!」
有益な情報をいくつかもらったのですべてが無駄だったと言うつもりはない。
海の神たちと交流できたのも良いことだと思う。
――それでも、ホラーさんこと海の力に関しては、未だ解決策はなかった。




