13「膝枕は青春の奥義じゃね?」①
「――――A hui hou!」
がばっ、と由良夏樹が目を開けて叫んだ。
視界には青空が広がっている。
(――もしかして、まだ常夏のビーチに?)
「な、夏樹くん? 目が覚めた?」
「お兄ちゃん、どうして急にハワイ語でまた会いましょうって大きな声で叫んだの?」
「……今のハワイの言葉だったの!?」
「う、うん。よく使うよね?」
「どこで!?」
(あ、帰ってきてりゅー。なんか一週間くらい常夏のビーチにいた気がしゅりゅー)
よいしょ、と夏樹が身体を起こす。
「おや?」
後頭部にやわらかな感覚があったので振り向く。そして、また身体を横たえた。
「なんでまた寝ちゃうの!? ツインテールする!?」
「い、いや、せっかくすみれさんが膝枕してくれているからおかわりしようかと思って」
「……つまり青春ね?」
「青春です!」
「ならいいわ!」
「やったー!」
夏樹はお言葉に甘えて青春すみれの太ももを堪能することにした。
「……夏樹くん、さすがにそれは」
「ちょっとどうかなーって」
「あのね、俺は大変だったの! 陽キャとふんどしと僕っ子と一緒で大変だったの! 俺の中に常夏のビーチと売店があって大変だったのぉ!」
「何を言っているのかまったくわからない」
「うん。全然わからないよね」
「あまり青春っぽくないわねぇ」
「お世辞にも青春とはいえない時間だったよ。ていうか、俺ってどのくらい意識を失ってたの?」
「えっと」
一登がスマホの画面を確認してくれた。
「五分くらい?」
「五分!? あんな濃厚な時間が五分!? ――お得すぎるだろ」
「やっぱり夏樹くんが何を言っているのかわからないよ」
「俺だって気絶している間に起きたことがなんだったかよくわからないんだよ!」
「夏樹くんのことだから、また愉快なことになったんでしょう? 何が起きたの?」
「……実は、俺の中に陽キャがいたんだ」
「うん、まあ、夏樹くんは陽キャだもんね」
「……違うよ? なっちゃん人見知りさんだもん! 陽キャじゃないもん!」
「陽キャな人でも女の子の膝枕おかわりとか平然とできないから」
「……なん、だと」
「ほら、恥ずかしかったり、するじゃない? やっぱりちょっと異性との触れ合いっていうのは」
「……一登が何を言っているのかわからない。すみれさんがしてくれると言っているんだからお言葉に甘えただけですけど! そこに恥ずかしさはない!」
「かっこ……よくはないかな。うん」
一登との会話のおかげで無事に帰ってこられたのだと実感した。
「ねえ、お兄ちゃん」
「うん?」
「どうしてウィジャボードとウェットティッシュを持っているの?」
「――え?」
杏の指摘に、視線を手に向ける。
すると、右手にはウェットティッシュが、左手にはウィジャボードがしっかりと握られていた。
「……ひえっ」
道理でしっとりしているわけだ、と納得した。
同時に、やはり今までの出来事が夢ではないと確信した。
「ちょ、夏樹くん! 降霊術だけは絶対にやらないって約束したじゃん! 夏樹くんのことだから歴史上の偉人とか、奇人とかを呼び出しちゃう可能性があるから手を出しちゃダメって言ったでしょう!?」
「違うよ! このウィジャボードは俺の意思で持ってきたわけじゃなくて! 祐介くんに力を与える眼鏡をかけたクール系イケメンふんどし大地の神から無理やり渡されただけで」
「何言っているの!?」
「だよね! 自分でも何を言っているんだろうって思うよ!」
せっかく現実に戻って来れたものの、気絶中の出来事をどう説明しようかと夏樹は悩んだ。
――太ももはとても柔らかかった。




