101「月読先生のびっくりじゃね?」
「――おはようございます、夏樹くん」
「おはようございます、月読先生。ごめんなさい!」
職員室に連れてこられた夏樹は、朝の挨拶と一緒に謝罪をした。
「……なぜ急に謝罪を?」
「え?」
「何か謝ることがありましたか?」
「えっと、遅刻しちゃったので」
「ああ、そういうことですか。特別扱いすることはよくないのですが、昨日は死の神と遭遇しましたし、疲れていたのでしょう。仕方がありませんよ」
てっきり怒られると思っていた夏樹だったが、思いの外、月読は優しかった。
彼の中では、死の神はよほど厄介な存在なのだろう。
ただ、夏樹としては死の神と会ってもストレスもなにもない。いつも通り、面倒くさそうなのが来たな、くらいにしか思わない。
むしろ、その後の漆黒騎士さまたーんことマモンとの戦いの方が大変だった。
「その後、どうですか? 体調とか、メンタル面とかに変化は?」
「いえ、別に、いつも通り元気ですよ」
「ならよかったです」
内心、ほっとする。
河川敷でのジェイソンとの邂逅と、川の地下にあった未知なる空間などは月読にバレていないようだ。
「いろいろ話をしたいことはあるのですが、まずお尋ねしてもいいですか?」
「はい? どうぞ?」
月読の目線は夏樹の首に注がれていた。
同じく、一緒に職員室に入ってきてから話を邪魔することなく静かにしていた萌葱の視線も夏樹の首に向いている。
「……その、首のアザはどうしましたか? 気のせいでなければ、まるで首を絞められた時の手形のように見えるのですが?」
「実は、私もずっと気になっていたんだが!」
「あー、これですか。実は、ちょっとホラーなことが続いていまして」
夏樹は月読と萌葱に語った。
何度か夢の中で、夜の海にいたこと。そして、女性と出会ったこと。
基本的にホラー展開なので、叫んで起きることばかりだったこと。
そして、昨日、首を絞められて、アザがくっきり残ってしまったこと。
言動から、夏樹が持つ海の勇者としての力であること。
「……海の勇者としての、力ですか」
「何か心当たりとかあります?」
「いえ、申し訳ありませんが、私ではあまり力にはなれないでしょう。以前から思っていましたが、夏樹くんの力は異世界で得た力ですので、我々の力とは少し違うようですね」
「そういうもの、ですかね? よくわからないです」
「……海の力に関してですが、夏樹くんの内側に凄まじい力が宿っていることは知っていました。蒼穹の星槍も十分すぎるほど凄まじい。ですので、可能であるのなら、海の力は使わない方がいいでしょう」
「えー」
「えー、と言われましても」
「だって、使わないからホラー展開なのに!」
「そこはなんといいますか、夏樹くんの我慢次第ですよ」
「無理ですって! 多分、あと何回か繰り返したら漏らしますよ!」
「……そんな堂々と言われましても」
日に日に恐ろしくなっていく海の力の接触に、夏樹の限界は近かった。




