6「敵討ちじゃね?」①
「酒臭いわねっ、こんなものを盾にして――え?」
花粉症の神はビールに濡れた腕を引き抜こうとして、目を見開く。
女神の右腕が肘の上から両断されていた。
「――ビールさんの痛みはこんなもんじゃなかったっす!」
「……なにを、した?」
血の流れる腕を抑え、花粉症の神は銀子を睨みつける。
「お怒りは俺様もじゃ!」
純白の翼を広げた小梅が花粉症の神の顔に全力の拳を叩き込む。
「ビール様の恨みじゃぁああああああああああああああああああああ!」
踏み込んだ足にこれでもかと力を入れ、歯を食いしばってそのまま花粉症の神を地面に叩きつける。
轟音が響き、地面が揺れた。
それだけでは済まず、蜘蛛の巣状に砕けた地面が崩壊し、大きなクレーターを作った。
「……神が作った擬似空間でよかった」
周囲の家が倒壊し、吹き飛ぶ小梅の一撃が本来の向島市で行われなくてよかったと夏樹は心底思う。
「…………ビールさん、今はここにいてくださいっす。あとできちんと埋葬をしてあげるっすから」
「あの、銀子さんいつの間に短剣をお持ちでしたか?」
「私は刃物しか使えないっすからね。服に仕込んでいるっす」
「銃刀法違反!」
「霊能力者ですし、携帯許可もちゃんとあるっす。というか夏樹くんのアイテムボックスに入っている物に比べたら大したことはないっすよ。――それはさておき、申し訳ないっすけど、自分はやることがあるっすので、お話は後にするっす」
銀子は涙を流し、動けない花粉症の神に拳を叩き込み続けている小梅を見た。
「えっと、やることって」
涙を流しながらも、銀子は可憐に微笑んだ。
「――神殺しっす」
(あ、本気だ。これ、実力がどうのこうのじゃなくて、力の差とかじゃなくて、もう殺すことしか考えていない。止めたら多分俺が斬られる)
怒りながらも理性を失っていない人間が一番怖い。
夏樹は、踵をつけ、敬礼をする。
「ご武運を!」
「ありがとうっす。心配せずともあの神の生首を由良家の門前に飾ってやるっすよ!」
「さらし首!? やめて! ご近所さんの噂になっちゃう!」
夏樹の悲鳴を無視して、クレーターとなった地面に銀子は飛び込んだ。
「……ツッコミどころが多くてどこから突っ込んでいいのかわからねえけど、とりあえず。さらし首は近所の噂じゃすまねえよ!?」
「こんな時でもツッコミを忘れないダーリンったら、素敵! ――じゃあ、あたいもあのよくわかんねえ神をぶっ殺してくるから!」
「ちょ、虎童子!? お前もかよ!?」
シリアス先輩「――かつてないほどのシリアスが始まる」
シリアス後輩「嘘だー!」
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