1「魔王と一緒に始まる一日じゃね?」
「……夏樹、おはよう。サタンさんね、ここ数日、毎日夏樹の大きな声で起きちゃってるんだよね。いいんだよ? 目覚まし時計の代わりだと思っているから。でもさ、毎日何をそんなに言語を変えながら、なぜ、とかどうして、とか叫んでるんだ!?」
「だってレベルアップが」
「レベルアップってなに!?」
「寝てたら、俺のレベルを上げようかどうか悩んでいるっていうから」
「どなたが!?」
「わかんない!」
ちゅんちゅん、と雀が囀っている。
ゆっくり寝るはずが、時計を見ると七時前だ。
「……なんて健康的な起き方をしてしまったんだ。お昼まで眠るつもりだったのに」
「よくわからんが、早起きは三文の得だぜ」
「……サタンさん、本当に魔王? 自分をサタンだと信じているおっさんじゃないよね?」
「ちゃんと魔王だよ! ちゃんとって言い方もなんか変だけどな!」
夏樹もサタンも朝からテンションが高い。
しかし、すぐにしゅんと元気がなくなった。
「昨日までは一登と義政先生がいたのに、今日はサタンさんとふたりだけの朝か……なんか寂しいよね」
「言い方が誤解を招きそうな感じがするけど、そうだな。一登はさておき、義政先生は五歳児だからいつまでも由良家で預かるわけにもいかないだろう」
「……そういえば五歳児だったね。間違いなく中の人がいるような言動だからつい忘れそうになるよ」
「絶対にいるよな。いなかったら逆に怖いって。俺、義政先生なら魔王譲ったっていいもん」
「さすが義政先生だ!」
朝から喧しいふたりであるが、きちんと防音対策はされている。
最近、叫び癖がある夏樹のために、サタン自ら防音結界を部屋に施している。
これはメリットはもちろん、声が外に漏れないというものだが、デメリットも同じであった。
例えば、何か問題が起きて助けを求めても外に声が届かないのだ。
異世界帰りの勇者と魔界を統べる魔王が揃っているので、助けを求めることはあまりないと思われるが、万が一もあるので簡単に魔法が解けるようにしてある。
魔王サタンにとってこの程度の魔法は朝飯前だ。
「さて、俺は朝飯の支度をするけど、夏樹はどうする? 一緒に、北海道の朝市でも行くか?」
「もしかして……サタンさんが来てから美味しいお魚が出てくることあるけど」
「おう! たまにな。だって、スーパーだと主婦のおばちゃんたちに勝てないんだもん」
「わかる。割引シールが貼られた商品奪い合いだもんね」
「雲海のばあちゃんは俺のスーパーの師匠だ」
「……雲海おばあちゃんも登場時もちょっと愉快な感じだったけど、今はもっと愉快なおばあちゃんになっちゃったなぁ」
「人間でありながら天照大神や花子におばあちゃんって慕わるとか普通はありえないから。水無月家と縁を結びたい家は多いだろうなぁ」
「当主さんとか澪さん都さんじゃなくて、雲海のおばあちゃん狙いなのがウケる」
「水無月家にしたらあまり笑えねえだろうがな」
夏樹とサタンはそんな会話をしながら着替えると、カーテンを開けた。
すでに太陽が顔を出し、眩しかった。
「……サタンさん、朝市はいいから卵かけご飯食べたい」
「はいよ。日本人は卵かけご飯だよな! 俺も大好きだぜ!」
「名前以外日本人じゃないけどね!」
「魂は日本人だ!」
「西洋の魔王がそんなこと言わないで!?」
由良家の何気ない一日が始まる。
「今日もイベントお休みでゆっくりできるといいなぁ」
「……なんかフラグに聞こえるから、いちいち言うのやめとけって」
イベントさん「平和だねぇ……にちゃぁ」
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