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054話 レジスタンス結成

-ギュノス領 名も無き村-


当日の昼過ぎに村に戻り、シゲオ店長と女将さんに事の顛末を説明する。


私達の話だけでは事実を認められない様で自分達で確認すると言って村人数名でギュノス国へと向かって行った。


私達以外にもギュノス国へ仕入れや買い付けに行った人達も居たらしく、約10名が馬車に乗り合い向かった様だ。


私と咲耶は店休日の店で留守番をする事になった。

宿屋に宿泊しているのは私達だけなので食堂が休みの時はかなり静かだ。


DOS(どっちゃん)達は大丈夫かな?私達みたいに2人でマザーブレインと戦ってたりしないよね。」


「どうでしょう。そもそも1週間近く連絡無いとか、社会人としてどうかと思いますけどね。」


「そ、そうだね。」


翌日の夜遅く、ギュノス国に向かった店長夫婦と数名の村人達が項垂れながら村に帰還した。


シゲオ店長の話ではギュノス国の周囲5キロメートルは立入禁止区域として区画が仕切られており、それ以上近付く事が出来なかった様だ。


恐らく、それ以上近付くと守護機械兵(ガーディアン)が襲って来るからだと思う。


この事態は小さな村に瞬く間に広がり、戻らぬ家族に涙する人も居た。

当然食堂も臨時休業となり村事態も暗い雰囲気に包まれた。


ギュノス国が鎖国してから約3日が立った早朝、村にギュノス兵約400名の騎馬隊が訪れ村長と一頻り話したのち村の入口付近に大型テントで簡易宿泊施設を20張り程建設を始めていた。


レジスタンスの立ち上げ初期と言った所だ。


翌日兵士達の宿泊施設が出来上がり、ギュノス国が鎖国してから約4日目が過ぎる。

村長と兵士長ゴウトが村人と兵士全員を中央の広場に集め現在の状況を説明していた。


ギュノス国内部に閉じ込められた人間は恐らく安全だと思うが、住民全員が何ヶ月も暮らせる程食料の備蓄が無い上に外部との連絡手段も無いと話していた。


何とか救い出す計画を立てる為、この村に臨時作戦本部を作り国民の救出作戦を計画すると宣言していた。


兵士100名はオスロウ国やハイメス国から食料・物資の調達部隊に任命され、各地へと派遣されて行った。


200名はギュノス国周辺で監視業務を行い、残り100名は村の仕事の手伝いをしながら村の基盤を整えるとの事だ。


人口約200名程度だったの名前の無い村は、一気にその規模を膨らませた。


兵士長ゴウトの話を聞き、娘の安否が心配で店を閉めていたシゲオ店長も本日の夜から再度開店する事を決意した。


都市内部は数多の機械兵が警備しており内部暴動に巻き込まれたりする事は無いと断言していた為、営業を再開すると決めた様だ。


確かにシェルターとして超一級だ、下手に内部で騒ぎを起こさなければ暫くは安全だろう。


当然私達もお店を手伝う。

数名の女性兵が店の経営を手伝う事となり一緒に準備を始める。


恐らく兵士達もこの店に食べに来ると思うので情報を集めながら、期を見てレジスタンスに参加する事にしよう。


夕方日が落ち始めた頃、酒場として久々の開店をする。

事前に開店する事を知っていた常連のお客様も大勢押し寄せ酒場は大盛況だった。


3名の女性兵も厨房での慣れない作業を一生懸命こなし、何とかお店として回す事が出来た。


「一生分のジャガイモを剥いた様な気がする。」


「花嫁修業と思えば良いじゃん?」


「お前が嫁にいけるのか?そんなに筋肉付けちゃって。」


「あんたらくっちゃべってないで手ぇ動かしな!!」


「「「ごめんなさ~い!」」」


ってな感じで無駄口を叩いている所を厨房を仕切る女将さんに怒鳴られると様子を頻繁に見かける。


この食堂に臨時採用された女性兵は「ナナ」「シャオ」「エレン」と言う名前で、恐らく1番下の階級の様だ。


彼女達も「軍隊より厳しい」と言っていたが、結構楽しそうに仕事をしていた。

彼女達のお陰でかは分からないが、娘が心配で沈んでいた店長と女将さんの表情も少しは笑顔が戻っていた。


彼女達は自分達で志願して宿屋に住み込みで店を手伝う許可を貰ったらしい。

彼女達が言うには、宿屋で働けばプライベート皆無な集団生活から脱却出来るのが最大のメリットだそうだ。


狭いとは言え2階宿屋の空き部屋を格安で借りれている。

それはつまりプライベート空間の確保に他ならない。


自主的に志願したのは策士だと感心する。

実際ギュノス国からの冒険者の来訪は減少している様なので宿屋としては問題無さそうだ。


翌日から昼の営業の食堂部分も開き、女性兵の話を聞いた同僚の兵士達も少しずつ店で食事をする様になって来た。


食事をしに来た兵士の中には以前大門の前で戦闘に巻き込まれた兵士も居たらしく開店から4日目の夜、兵士長のゴウトが私達を訪ねて店にやって来た。


彼等が席に着くのを確認して咲耶が接客へと向かう。


「探したぞ!君達は守護機械兵(ガーディアン)を倒した冒険者だろう?」


案の定、咲耶を見たゴウトは注文を取りに来た咲耶に声を掛けていた。


「何の事でしょうか?それよりご注文をお伺いいたします。」


「少し話を聞いてくれないか?俺はギュノス国の兵士長をしているゴウトだ。君達の力を是非貸して貰えないだろうか?」


ゲームと同じ台詞だ、レジスタンスへの勧誘してストーリーは進む。


「御指名でございますか?当店ではそう言った夜の個人的接客は行っておりませんので。」


大門前の仕返しとばかりに咲耶は周囲のお客様に聞こえる様な大声で煽る。

男装している咲耶をゴウトが誘っていると言う様に見える様に発言する。


流石に数日過ごしていたので、この村の住民の殆どが咲耶は男装しているハスキー声の女性だと理解している。


当然ナンパしようものなら男性常連客全員から怒りの視線を浴びるだろう。

いや、男性客ばかりでは無い一部のコアな女性客の悪意に満ちた眼光も光っているに違いない。


ゴウトは「違う!そうじゃない!」と叫ぶ、周囲のお客様の視線を一心に浴びながら咲耶の言葉を否定する。


咲耶がニヤニヤしながらゴウトを弄ぶ姿を見て、根に持っていたんだなと私は思った。


導入部分はゲームと多少異なるが、ストーリー通りの進行だ。

私達は仕事が終わった後ゴウト達兵士幹部が滞在している作戦本部へと赴く事となった。


-名も無き村 ギュノス兵作戦本部-


村の入口のテント群の中に一張りだけ赤いテントが中央に有り、そこが作戦本部として各部隊長と兵士長ゴウトが宿泊している場所だ。


私達は仕事終わりにそのままの恰好で作戦本部を訪ねる。

テント内には8名程の上位階級の兵士が待機しており、いずれも部隊長を任されている人達の様だ。


「今日は御足労頂き感謝する。改めて自己紹介をさせて貰う、俺はギュノス国の兵士長をしているゴウトと言う。君達を呼んだのは他でも無い、我々の作戦に協力して欲しい。」


華奢なウエイターとウェイトレス姿を私達を見て、守護機械兵(ガーディアン)を倒したとは思えないと言った表情で値踏みする様に凝視して来る。


初対面の時もそうだったが、自身の階級が高いと思っている人物は基本上から目線でムカツク。


「隊長、こんなひ弱そうな者達が守護機械兵(ガーディアン)を破壊したのですか?」


1人の兵士が訝しげな表情でゴウトに訪ねる。


ひ弱そうに見えるのはゲームのキャラクターフォルムが反映されているからで、能力値はデコピン一発でこの兵士の頭を破裂させるだけの腕力が有るんだけどね。


「ふ~ん、試してみますか?」


咲耶が邪悪な笑みを浮かべながら、アイテムストレージから【雷槌ミョルニル】を片手で取り出しヒョイっと肩に乗せる。


帯電し電気が目視出来る状態の巨大な武器を見た兵士全員がゴクリと喉を鳴らし息を飲む。


背丈程有る大槌を片手で軽々と持ち上げる咲耶、その肩には神話級のレア武器。

どんなに無知でも、曲りなりに戦士職で経験を積んだ彼らからしたらその実力差に簡単に気が付くだろう。


「も、申し訳ありませんでした!!その様な武器を片手で扱える時点で私達に勝ち目などございません!!どうか、ど~か!武器をお納めください!!」


挑発的な態度を取っていた兵士が、瞬間的に頭を垂れる。

良く見ると少し震えている様に見える、他の兵士も唖然とするやら硬直するやら騒然とした状況になっていた。


ゴウトは事情徴収の時の事と部下の態度と非礼な態度を含めて謝罪し他の部隊長達も頭を下げる。


咲耶は少し満足気な表情で謝罪を受け入れる。


ゲーム本筋通り、私達の戦闘能力を貸して欲しいと言う依頼を受けた。

都市内部には入れず連絡手段も無い為、昨日門を強制解放する作戦を慣行したが作戦は失敗に終わったと語る。


総勢200名で守護機械兵(ガーディアン)に挑んだが、結局1体も倒す事が出来ず大門の開錠も出来なかったので敗走して村に帰還したらしい。


その時の死者数が約70名、その為兵士総数は330名へと減少したらしい。


そしてほぼ2人で守護機械兵(ガーディアン)を倒した私達の事を思い出し、総出で探していたのだと語る。


「君達の力を見込んで前線で戦闘指揮をして欲しい。頼む!人口1億人近く存在する都市内の食料が尽きる前に国民の救出作戦を慣行しなければ、1ヶ月もしない内に餓死者が出始める。頼む、どうか力を貸してくれ!」


「・・・いくつかの条件が飲めるなら手を貸しましょう。」


咲耶は了承する代わりにいくつかの条件を出した。


①隊長を私と咲耶のダブルリーダーにする事。


②私達の部隊は電撃系攻撃魔法か補助魔法が使える少数精鋭を精査する事。


③都市開放が成功した場合、多額の報奨金を出す事。


咲耶の出した条件は以上だ。死者数を減らす良作と言える。

藁にも縋りたいのかゴウトは全ての条件を飲み、自身の立場を私達に明け渡した。


「正直剣士職は役に立ちません、私達が大門を解放するまで仮説避難場所を造りながら待機。東西南北の大門解放後に住民の避難誘導に当たって下さい。・・・後、折角なので我がレジスタンス軍に名前を付け様と思います。」


咲耶が突然机の上に立ち上がり、部隊長連中よりも高い視点で見下ろす様に仁王立ちをする。


何だこれ?何が始まるんだ?

咲耶は【雷槌ミョルニル】を持った右腕を高らかに上げ叫んだ。


「今より我々は機械都市ギュノス国を開国し国民を救う救世主となる!我々はレジスタンス軍として名乗りを挙げる!その名を「サスケノハナ」!」


丁度テント上部の電球の真下に位置する咲耶は、光に照らされて神々しく見えなくもない。


「うおおおおおお!!」


咲耶が名乗りを上げると、ゴウト兵士長と部隊長達は歓声をあげてテンションが一気に急上昇する。


サスケって何だ?忍者か?

しかし男性は何歳になってもこういうノリが好きなのか?


ゴウトや部隊長達の目を輝かせて同調をしていた。

私には良くわからんノリだが、やる気が有って大変宜しい。


なんやかんやで、この日の夜レジスタンスは発足し咲耶と私を中心に動き出した。

お読みいただきありがとうございます。

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