032話 偽国王「ヴァッサゴ」
「私が先行します!シグは【セイクルレイン】で援護をお願いします!私達で隙を作るのでクリス君とDOSは中距離から特殊技能攻撃をお願いします!デイアさんは後方で補助をしつつ余裕があったら上位魔法で攻撃をお願いします!出来るだけ爆発しないヤツでお願いします!ヤツの肉片はモブモンスターに変成します!」
早口でゲーム上での一般的な攻略パターンを叫び、私は【縮地】を使用しヴァッサゴ目指して突進する。
DOSなら現状を把握して上手くフォローしてくれるだろう。
暗殺特殊技能の様な即死を誘発する特殊技能はレイドボスには効かない。
攻撃を回避しながら【不知火】を連続で使用し隙を作る!
【影分身】との連続使用はSP消費量が激しいので第二形態までなるべく温存しよう。
とにかくSP切れには注意しないと。
「いっくよ!剣技!【不知火】!」
足、太腿、腹、脇と火炎を纏った刀で各部位に四連撃を加えつつ、ヴァッサゴの身体を素早く駆け上がって行く。
両手に持った刀が更に激しく、そしてより蒼く燃え上がる。
「剣技!【地獄ノ業火】!」
ヴァッサゴの左腕の筋肉が脈動し、鋭く尖った4本の爪で空を斬り裂き攻撃を仕掛けてくる。
体を逸らし余裕で回避する。
相手の爪と私の隙間は約1センチの僅差で回避成功。
その左腕を蒼い炎の六連撃で輪切りにし、斬り落された腕は炎で激しく燃え消し炭となった。
行ける!
第一形態はまだ余裕が有る。
「凄い!あの強さは!そしてあの華麗な技は!?私も行きます!【セイクルレイン】!」
シグは驚愕の表情で叫びながらも特殊技能を発動する。
「強い!そしてサクラ様より速い。喰らえ!剣技!【天業ノ黒】!」
シグの剣から放たれた無数の光りの矢が全弾右足太腿に刺さる。
そしてクリス君の放った特殊技能は【ドラグスレイヤー】を3メートルの黒炎を纏った巨剣へと姿を変えて、さらに圧縮される様に細く収縮しヴァッサゴの右足の腱を貫き態勢を崩す。
同時にDOSの放った弾丸が左肩に着弾し左腕が解ける様に跡形も無く消滅する。
あの威力は扉を溶解させた課金弾丸と同じアイテムだ。
レイドボス相手にも超ダメージを与えている。
「シノブとか言ったか、美しい戦い方だ。フフッ・・・ヤツの案に乗ってやろう」
デイアが右手を高らかに上げ、何らかの上位魔法を無詠唱で発動する。
彼女の全身が黄金色に輝き私達5人の体に光の粒子が纏わり付く。
先程までの連撃により消費したSPが全開近くまで瞬時に回復する。
すごい!
これボス専用の特殊技能だろうか?
「ぐあぁああおおおおおぉおおぉ!」
ヴァッサゴが雄叫びを上げながらバランスを崩し傾いた瞬間、クリス君に向け大きく口を開き暗黒を凝縮した様なレーザーを放ち回避行動をしたクリス君の左腕を掠める。
左腕の防具が弾け飛び散り左手が火傷を負った様に黒く焼け、その衝撃で全身を壁に叩きつけられる。
ヴァッサゴは更に大きく首を振り、黒いレーザーは二撃目の【セイクルレイン】を放ったシグを吹き飛ばす。
光の矢はヴァッサゴの左足の腿に着弾するが、半分以上黒いレーザーに相殺され消滅する。
私は小太刀を納めクリス君に上位回復薬【ハイポーション】を使い左腕を回復し、シグは・・・・
ま、大丈夫かな!と思った瞬間にデイアが回復魔法で傷を癒していた。
「DOS!援護をお願い!」
DOSは背中から素早く武器を取り出し構える。
装備した瞬間、銃を固定する為の2本の金具が伸び地面に強く刺さる。
ガトリングガンの様な形状の武骨な銃から爆音と共に細長く短い槍が連続で発射されヴァッサゴの頬に刺さりレーザーが止まる。
私は再度小太刀を抜き二刀流で【影分身】を発動し3体の分身体を作る。
「此処で畳み掛ける!」
デイアさんのSP回復する特殊技能を期待して高火力な攻撃を使う。
「【地獄ノ業火弐連斬】!」
「【天業ノ黒】!」
赤黒い炎と蒼い炎がヴァッサゴの左足を螺旋状に流れる。
そして音速を超えた十二連撃が少し遅れて表に現れる。
大量の紫色の血を吹き出し、その血すらも混ざり合った2種類の炎で焼き尽くす。
大きな咆哮と共にヴァッサゴの体が黒く輝き出す。
「風属性の魔法攻撃が来ます!」
ヴァッサゴはある程度ダメージを与えると風属性の上位魔法を繰り出す。
ゲームと同じ行動パターンだ。
全員が防御姿勢を取り、魔法を反射するデイアは再度SP回復の特殊技能を使用し、全員を癒す。
その場に居た全員が風属性の斬撃を受ける。
防御姿勢を取っていた為ダメージは少ない。
しかしヴァッサゴそのまま第2形態に変異していく。
・・・って事は!?まずい!
極大攻撃魔法が来る!
ゲームと同じなら第2形態に変異する時に極大攻撃魔法を発動し城を破壊し、室内戦闘から屋外戦闘へとフィールドが変更される。
屋外フィールドが変わると天候等の外的要因が特殊技能や魔法に影響を与える。
「デイアさん全体魔法防御障壁を!!皆は防御を!」
デイアさんの着ている銀色に輝くローブは全ての魔法を弾き返す効果が有る為、魔法によるダメージは一切入らない。
他の皆も魔法障壁で威力が軽減されれば耐えれるはず。
シグは能力的にギリギリかも知れない。
がんば!
・・・とは言え、回避行動を取らないと物理・魔法防御が紙レベルの私も大ダメージは必至だ。
私もこの場を離れよう、この場を離れる為に後方に飛んだ瞬間に不意に足がよろめぎバランスが崩れる。
時間がゆっくり流れる感覚、視界に映る全てがスローモーションの様に流れていく。
まずい!
その瞬間、黒い稲光と閃光が辺りを包み城の屋根全体が吹き飛ぶ程の大爆発が起こる。
ヴァッサゴと暗黒神ザナファのみが使えるレイドボス限定の極大攻撃魔法が発動し周囲の情景が大幅に変わる。
強力な無数の黒いレーザーがフィールド全体を貫き薄れて消える。
ああ、私は死んだのか・・・
DOSは?皆は無事かな?
DOSは即時復活薬【アナスタシン】を持っているかな。
意識が遠のく、大きな川の向こうにお花畑が・・・
「見えない!・・・・ってあれれ?生きてる。ちょっとダメージ食らったみたいだけど」
しゃがんだ姿勢から顔を上げると2人の人物と目が合った。
「シノブ殿は拙者が守ると言ったであろう!」
「シノブは私がお守りします!」
極大攻撃魔法を喰らい半分焦げたサクラと咲耶が、仁王立ちをしながら口喧嘩をしていた。
駆けつけた2人が肉の壁となって私の前に立ち、守ってくれたのだ。
そのダメージを物ともせず2人が言い争いを続ける。
その光景を見て思わず吹き出してしまう。
・・・まったく2人共無理しちゃって。
私は良い仲間を持ったと嬉しくて少し泣いた。
「ありがとう!サクラ、咲耶!」
咲耶は私とサクラに回復魔法を使い、私達の怪我が完全に癒える。
主要メンバーは揃った。
ヴァッサゴ第2形態と決着を付けよう。
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