229話 最悪の状況
「魔法と銃撃が効かないだと・・・?」
「違う、防具の能力だ。極稀にダメージを無効化する装備だ、デイアの装備と同じ様な物だ。」
「運が悪かったと言う事か・・・?どんな者をも貫く魔槍の一撃すら無効とするとはな。」
「・・・・その運すらも操作されてなければ良いがな。」
ミカさんが単騎で破壊神ヨグトスと対峙する。
シャルの分身体を含めて6人で攻撃したにも関わらず、全ての攻撃を回避もしくは弾いていた。
唯一攻撃を当てていたDOSの銃弾もダメージ軽減された上に装備品で回復している。
そして最大火力を込めた課金弾丸を込めた特殊技能すら無効化されてしまった。勝てる訳が無い、アイツは「まだ遊びますか?」と言っていた。
この戦いは破壊神ヨグトスにとってはお遊びなんだ、皆を傷付けてそれを見た私の感情の揺らぎを楽しんでいるんだ。
破壊神ヨグトスの特殊技能【剣之舞】の十六連撃で、高防御力のミカさんの左腕と右脚があっさりと斬り飛ばされノックバックにより吹き飛ばされる。
ミカさんをクリス君は受け止め、シャルとセーニアが入れ替わる様に飛び込む。
特殊技能【縮地改】を使用したシャルは敏捷性において現在メンバー最速になれる、【影分身】で2体の分身体と同時に多重攻撃を仕掛けるが全ての攻撃を回避されている。
セーニアの防御力を無視してダメージを当てれる特殊技能【金剛神拳】を死角から狙っているが全て回避される。
「攻撃が当たらない!」
「攻撃が当たらん!」
破壊神ヨグトスの剣が雷撃と赤い炎を纏いシャルとセーニアを襲う。
アレは魔法剣だ、電撃属性の斬撃がシャルを襲い腹部を貫き全身の神経を焼き切る。
火炎属性の斬撃がセーニアの全身を燃やしながら斬り刻む。まるで子供が無邪気に玩具を壊す様な光景が目の前で繰り広げられる。
邪悪に歪んだ表情の私の姿で・・・・
その度に恐怖と絶望が私の心を黒く黒く染めていく。
共有アイテムストレージの完全回復薬【ハイエリクサー】が次々と減っていく。
もう無理だ。
・・・勝てる訳が無い。
「サクラ離して!もう止めようよ!皆死んじゃうよ!」
「・・・シノブ殿をヨグトスに渡す訳にはいかない。皆はその為に戦ってるでござる。」
サクラは私の腕を強く掴み離そうとしない。
そして私は足が竦み動く事が出来ない。
近距離攻撃を行っているミカさんとクリス君とシャルとセーニアは何度も何度も傷付き血を流し、四肢を欠損するダメージで瀕死になると完全回復薬【ハイエリクサー】を使う。
その間に与えたダメージはDOSの銃撃とデイアの魔法と稀にミカさんの剣撃だけでそれも装備の効果で回復してしまう。
ストレージ内の回復薬は残り少なくなり節約する意識からかクリス君が片腕で戦う。
しかしその腕に握られているのは【魔剣ティルヴィング】。
偶然か、それとも「狙われた」のか破壊神ヨグトスの肩をクリス君の剣撃が捉え、鋭い刃が食い込み黒い血液が噴き出す。
その瞬間にクリス君の全身から鮮血が噴き出し倒れる。
【魔剣ティルヴィング】の特殊効果が発動しダメージが反射したんだ。
「クリス君!!サクラ離して!クリス君が!?」
「・・・・・・」
咲耶が即座に回復しに向かうが、彼の苦渋に帯びた表情ですぐに理解する。
クリス君は自らの攻撃ダメージ反射により絶命したのだ。
それを目の当たりにしたセーニアが怒りを露わにし突撃する様な形で連続攻撃を繰り出すが全て回避される。
セーニアが剣撃をガードした瞬間に【聖剣エクスカリバー】により両腕の【紅蓮】が砕かれ刃が腕に深く食い込み、彼女の骨で止まる。
肉を斬らせて骨を断つを体現するかの様に破壊神ヨグトスの攻撃を止めた事で、左脚で追加攻撃を行う。
しかし、左足に装備した【ヴィザール】も【天之尾羽張】によりあっさりと砕かれると同時に足の甲から斬り飛ばされる。
「ぐぅ・・うあぁぁぁ!」
更に2本の剣は蒼い炎を纏い胸と右手を貫かれて地面に打ち捨てられる。
あれは剣技【地獄ノ業火】、セーニアは燃えながら倒され蹲って動きを止める。
咲耶が回復を向かおうとするが【聖剣エクスカリバー】の中距離攻撃に阻まれ近付けない。
特殊技能【神速】と【剣之舞】によりシャルの回避速度を上回り体中を貫かれ地面に倒される。
「シャル!!」
飛び出そうとするがサクラが離してくれない。
ムリヤリ引きずろうとするが攻撃力極振りのステータスのサクラの腕力は非常に強く、振り解く事が出来ない。
私は小太刀を抜き、構えて叫ぶ。
「サクラ!離して!!」
「駄目でござる!例えその小太刀で刺されようと絶対離さないでござる!」
私は小太刀を上段に構え思いっきり掴まれている方の自分腕を斬り飛ばす。
自分の意識が一瞬躊躇したのが分かる。
しかし私の防御力は紙のように柔らかい為、あっさりと斬り飛ばす事が出来た。
サクラの驚く顔と自身の飛び散る鮮血がスローモーションの様に見えた。
痛い、痛すぎる!
腕と共にフッと引っ張られていた力が抜けてサクラと離れる。
「・・・なっ!?」
私が自分の腕を斬った事で意表を付かれたサクラは動く事が出来ずよろめく。
瞬時に小太刀を収めながらシャルに向かい【縮地】を使い走る。
破壊神ヨグトスは私を殺せない。
そして回避率ならこの中で1番高いはずだ。
共有アイテムストレージには完全回復薬【ハイエリクサー】が残り1個。
私のストレージに1個。
私は迷わず自分のストレージから回復薬を取り出しシャルに振り掛ける。
「き、傷が塞がらない。シャル!シャル!!」
シャルの身体が灰色に染まっていく、間に合わなかった。
狭くなっていた視野で周囲を確認するとクリス君もセーニアも灰色に染まり死亡している事が伺える。
仲間の死を認識する度に心の中に絶望が積み重なる。
後方から叫び声が聞こえた。
その方向に目を向けるとデイアが剣で胸を貫かれていた。
デイアは剣を引き抜こうと血だらけの手で白刃を掴み破壊神ヨグトスを睨んでいた。
引き抜けない事を悟ると、至近距離から極大攻撃魔法を連続で放つ。
属性の違う全ての魔法が破壊神ヨグトスの眼前で光の粒に変わり吸収される。
あれは無効化じゃない反属性を吸収し回復している。
ゲームの時とは有り得ない位に異常な早さで自動発動する、 弱点属性変化が展開されている。
破壊神ヨグトスに向けられていたデイアの両腕を無慈悲に躊躇なく斬り落とす。
「うううぁぁああぁぁ!!」
デイアは失った腕を空に掲げ堪え切れない痛みで咆哮を上げる。
私の姿で邪悪な笑みを浮かべた破壊神ヨグトスはデイアの白銀のドレスを引き裂き、貫いていた切先から【マジクアングラスレイ】を放つ。
黒色細いレーザー内部から全身を貫き、デイアの身体が灰色に染まり絶命した。
自分で斬った左腕が痛む。
仲間が一気に4名殺された事がその場に居た全員の動きを止める。
もはやレベル1でレベル100のボスと戦っている様なモノだ。
この場に居る誰もが思っているはずだ。
ここまま戦うと確実に全滅する・・・と。
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