219話 長期ダンジョン攻略
50階層から続く階段を降りると黒い岩で囲まれた巨大な空洞に出る。
【索敵】を使用すると多数の敵性反応がヒットする。
私は【索敵】を使用しつつ先導する。
DOSがマッピングを行いながら私と並走。
この階層は物理攻撃無効のモンスターが多いので戦士系職業は後方警戒に徹する。
最初の戦闘でモンスターの能力値を測る為に様々な特殊技能を使い戦闘する。
ミカさんとDOSは優先攻撃順位を集中させつつDOSが観察と記録を行う。
一応物理攻撃やそれに該当する特殊技能も試してみる。
私は暗殺特殊技能と【地獄ノ業火】を試してみたが、両方共ダメージが通らなかった。
切れ味の良い刃が一切肉体に侵入出来ないのだ。
念の為【破壊刀イレース】を1度だけ使って見ると簡単に斬る事が出来て一瞬でモンスターを消滅させる事が出来た。
皆が「おおおおー!!!」と歓声を挙げる。
感覚的にだがモンスター1体に対して全SPの約10パーセント程度を消費した感じだった。
SP回復薬や通常のダンジョンなら問題無いかも知れないがアビスダンジョンはSP自然回復量が極端に低い為過剰な使用は出来ない。
うーん。
そう考えるとやはりこの武器は燃費が悪い。
「シノブの刀は物理攻撃無効の相手にも貫通するんだな。」
「うん、でも通常攻撃でも18匹程度討伐した所でSP切れになりそうだよ。SP自然回復速度が半減するこのダンジョンでは使い勝手が悪いかも。」
「それは微妙ですね。」
レイは『つまんない。』とボヤいていたが、「君は最終兵器だからね、切り札は簡単に見せちゃ駄目なんだよ。」と言うと満足そうな口調で『まぁそうだよね、僕最強だし。』と言っていた。
・・・フフフフ生まれたての子供だけあってチョロい。
などと考えていると『今チョロいとか思って無い?』と突っ込みが入る。
以前も感じたがコイツ何処かの猫王の様に思考を読んでるんじゃないか?
そう思いつつ鞘に納め、アイテムストレージに戻す。
暫く戦闘は暗黒神ハーデスとデイアさんと咲耶に任せて、私は【索敵】と罠系特殊技能で後方支援に専念しよう。
洞窟内は広く、縦横無尽に枝分かれした横道が無数に存在し何度も行き止まりに落胆させられる。
DOSはギリギリ「ファミコン世代」だったらしく方眼紙の様にマップを埋めていくのが楽しいと話していた。
むしろ途中で下へ向かう階段を見つけてしまうと埋めて無い空白の部分に希少アイテムが配置されているんじゃないかと気になるらしい。
それって多分ゲーム脳だよ・・・
むしろMMOタイプのRPGは確率レアドロップなので配置して有る宝箱から貴重品が出る事の方が稀なんじゃないかな?
その後、約9日間掛けて60階層に到着し、開けて見通しの良い場所にキャンプを設置して休息を取る。
ここまでの距離的にリアル世界のゲームプレイで1時間位だと思うけど、自分達の足で歩きモンスターを倒しながら進むと9日間も掛かってしまった。
ダンジョン攻略を始めてから何となく感じた、現実のゲーム攻略時間と比べるとかなり時間が掛かっている。
これってアニマ国の「地下遺跡」やコダ国の「蜃気楼の街」で感じた時間差スパンが似ているなと思う。
現実世界の1時間=この世界の7日間=遺跡・蜃気楼の街の1時間って考えると、地下遺跡や蜃気楼の街は現実世界と同じ時間軸なのだろうか?
だからどうとか無いんだけど・・・
この法則は何か意味が有るんだろうか?
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私達は更に下の階層を目指して散策を開始する。
パーティーの先頭は私とDOSが変わらず行い、魔法職の2人は後衛に下がる。
61階層からは魔法攻撃無効のモンスターばかり出現する。
暗黒神ハーデスが真空を作り出す斬撃系の風魔法を使用してみたが傷を付ける事が出来なかった。
咲耶の【雷槌ミョルニル】は打撃系攻撃に該当するのでダメージを与える事が出来るが、電撃属性効果は無効化されて威力半減と言った感じだ。
「デイア、これを使って見るか?」
「何だこの短剣は?」
「魔力を物理攻撃に変換する武器だ。シノブの持っている刀の下位互換品みたいな物だ。無いとは思うが自衛手段にはなるぞ。」
「ほう。」
暗黒神ハーデスの左手には宝石のアクアマリンの様に透き通った刃の短剣が握られていた。
「そんな武器が有るんだ?」
私も気になってデイアの持つ短剣を覗き込む。暗黒神ハーデスがデイアに短剣を渡して使い方を説明していた。
短剣【カルンウェナン】は攻撃魔法職の使えるBランク武器で、そこまでレア装備では無いが使用者の魔法力を物理攻撃力へ変換し威力が上昇するのでプレイヤースキルの自信の有る魔法職が好んで使っていたらしい。
単純な攻撃力では【雷槌ミョルニル】の足元にも及ばないそうだが、レイドボス能力を持ったデイアが装備すると良いかも知れないと言っていた。
デイアが短剣を装備し魔力を込めると、刃先が魔力を帯びて青い光と共に伸びる。
凄い!
その長さは約1.5メートルを超える。
短剣と言うより長剣だ。
見た目はクリス君の【ドラグスレイヤー】みたいな感じだ。
デイアは戦士職みたいな戦闘技術や特殊技能は持っていないので、あくまでも自衛手段として考え、前衛には出ない様にと念を押されていた。
あー私なら、あんな武器を手にしたら前に出たくてウズウズするから暗黒神ハーデスが注意するのが分かる。
通常高レベルプレイヤーが装備しても形状が変化する事が無かったが、レイドボス能力を有したデイアが装備する事で変容したんじゃないかと少し悔しそうな表情で暗黒神ハーデスが話していた。
「我は使わないからお前にやる。」
「ああ、これは良い品だな。有難く使わせて貰うぞ。」
魔法職の2人は何かと気が合う様だ。
単体の戦闘能力はデイアの方が強いが、この世界の知識や情報に関しては暗黒神ハーデス以上に博識な人間は居ない。
昔はNPCと割り切った考えだった暗黒神ハーデスも少しだけ変わって来てる様な気がする。
デイアさんと話をしている時は、学校の先輩と後輩みたいな雰囲気が漂っている。
ミカさんとDOSが先生で、サクラと咲耶と暗黒神ハーデスが1学年上の先輩で、クリス君とシャルとセーニアとデイアが同じクラスの同級生。
私の中で学校に当て嵌めるとそんな配置だ。
実年齢だと全然違うけど・・・イメージ的な。
MMORPGの良い所は世代の違う人々と、こうして同じ目線で語れたり楽しさを共有出来る所だと思っている。
それって翌々考えたら凄いことだと思う。
現実世界で10歳程度でも歳の差があったら、対等に話をする事は難しい。
でもオンラインゲームというツールと自分のキャラクターを持つ事でその見えない垣根と言うか壁を壊せるって感じだ。
そして、この世界はそれをリアルに実現出来ている。
まさに奇跡にも近い場所に今私達は立っているんだ。
私は改めて、この世界を救いたいと強く思うのだった。
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