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021話 ファンサービスの時間

-オスロウ国 コロシアム-


昼食を終えた私とサクラはコロシアム内の賭博場へと足を運んでいた。


トーナメント午後の部は4試合目はカイゼル対サクラの労働組合(ギルド)対決。

5試合目はシグ対シード選手のクリス君。


王国所属の部隊長対決となっている。


①スカウト:カイゼル 労働組合(ギルド)特別枠


②侍:サクラ 労働組合(ギルド)特別枠


③パラディン:シグ 王国聖騎士団長


④ウォーリアー:クリス 王国近衛兵士長


サクラが勝つのは当然として、次の対戦はシグとクリス君だ。

ゲーム通りに進むなら、ストーリー進行上確実にクリス君が勝つ。


賭博場の倍率を確認すると、サクラの賞金倍率が一気に下がり2番人気へと競り上がっていた。


1番人気は前年度優勝したクリス君だ、前年の戦いを見た観客からしたら強さの信頼度は鉄板なのだろう。


メインストーリーイベントボスだから普通のNPCキャラでは勝つ事が出来ないだろう。

そしてサクラはまだ全然実力を見せていないので、観客からしたら様子見と言った所じゃないかな。


「クリス君!」「クリスでござる。」


次の対戦の賭け対象は満場一致でクリス君に決まる。

私達は所持金の全額をクリス君に賭けた。


シグには悪いが、これだけ予測が簡単な賭けも無い。


「案外、サクラへの愛の力でシグが勝つかもよ?」


「その時は決勝で殺せば良いでござる。」


無慈悲!

さらっと怖い事を言っている。


ゲームシナリオ通りに行けばクリス君が勝利しサクラと決勝を争う事となる。

これはもう定められた運命なのだ。


シグの骨を拾ってやる義理は無いが、私達の旅の資金の足しとなって安らかに成仏してくれ。


「そろそろ行くでござる。」


私達が賭博場を離れて暫くすると、次の試合の掛札を買う為に人集りが出来上がっていた。


貴族の姿は見当たらない。

冒険者と一般人にとっては生活の掛かった娯楽なのだろう。


控室に寄る事無く、私達はその足で闘技場の舞台へと向かう。


「皆さまお待たせいたしました!間もなく午後の部を開催します。第4回戦に出場する選手の方は至急準備をお願いします。」


女性ナレーターの声が会場中に鳴り響き、客席に歓声が聞こえ始める。


サクラの背中を押す様にして急がせる。

周囲の人々がサクラの姿に気付き集まり始めていたのだ。


試合開始まではまだ余裕は有ると思うが囲まれでもしたら厄介だ。

特殊技能(スキル)【抜き足】を使用し、気配を消す様にその場を去り試合舞台へと向かった。


試合の開催時間になりサクラは舞台に上がり、私は舞台下で待機する。

サクラが舞台に立つと、一際大きな歓声が上がる。


サクラは1回戦の時も性別と容姿でそこそこ人気は有ったが、華麗な試合運びを見た観客の中にファンが出来たのだろう。


少しだけ嫉妬心が湧いてくる。


対戦相手のカイゼルが遅れて舞台に姿を現す。


頭上には黒い犯罪者印(どくろマーク)を付け、黒いマントに黒装束を着た姿で如何にもスカウトといった容姿をしていた。


初期職業のスカウトは、その名の通り斥候・偵察に特化した【索敵】や【各種罠】等のダンジョン探索系を主軸とした特殊技能(スキル)を覚える。


私も忍者になる為に通過した職業なので、どんな戦い方をして来るかは想像が付く。


「それでは準決勝第4回戦!労働組合(ギルド)代表カイゼル対労働組合(ギルド)代表侍サクラの対戦です!」


「S・A・K・U・R・A!サ・ク・ラ!!」 「S・A・K・U・R・A!サ・ク・ラ!!」


なんかピンクの半被と鉢巻をした集団が自作と思われる横断幕を広げ観客席から声援を送っている。


何だ?

アイドルの追っかけか?


何処にでもああいった連中は出現するんだな。

先程の2時間休憩の間に準備したのか?


凄い情熱だな。

その熱量を冒険者稼業で使ったら暗黒神ザナファを倒す事が出来るんじゃないか?


サクラの方に目を向けると、追っかけっぽい連中に向けてウィンクしながら投げキッスをしていた。


アイツは・・・

女性に対して色気を振りまくイケメンは邪険にする癖に、自分に対する妙なファンサービスには抜かり無いな。


余裕綽々な態度のサクラに対して、カイゼルが短剣を構えて先制攻撃を行うのが見えた。


あの馬鹿完全に余所見をしている。

敏捷性の高いスカウトは攻撃命中率は侮れない。


「何を余所見している!!」


カイゼルの黒く光る短剣がサクラの頬を掠める。

間一髪で回避したが今の攻撃は結構危なかった。


油断しすぎだ!

1回戦を観戦して無かったけど、カイゼルは特殊技能(スキル)【縮地】と【抜き足】を使って高速で間合いを詰めた様だ。


カイゼルは感覚的だけどレベル50以上だろう。


「良く見極めたな!流石に凄腕と噂されるだけの事は有る。」


「・・・・・・」


カイゼルが不敵に笑い挑発する。


先程の攻撃でサクラも気を引き締めた様で真剣な表情になっていた。

カイゼルとサクラはジリジリと摺足でお互いの間合いを測っている。


カイゼルは片手で短剣を構え、もう片手は自身のマントの裏に隠している。


飛び道具だろうか?

スカウトは【軽装備投げ】や【連撃】の特殊技能(スキル)も習得出来る。

短剣や暗器と罠を使用したトリッキーな戦い方をするだろう。


カイゼルが不意に何か正方形の物体をサクラに向けて投げた。


サクラは瞬時に濡れタオルでその物体を弾く。

その瞬間正方形の物体は濡れタオルに纏わり付いた。


あれは【粘着罠】だ、私が毎日防犯用に仕掛けているのと同じ物だ。

カイゼルが更に連続で粘着罠を投げるが、サクラは全ての粘着罠を濡れタオルで捌く。


しかし何度も【粘着罠】を捌いていた事で、濡れタオルは使い物にならない物体へなってしまった。


濡れタオルを投げ捨てサクラは不機嫌な表情で【乱れ桜吹雪(みだれさくらふぶき)】を抜刀した。


「刀を抜いたからには、多少は覚悟をして貰うでござる。」


「クックック・・・望む所だ、勝つのは俺だがな。」


カイゼルは黒い球を地面に投げつけると、軽い爆発音と共に真っ黒な煙幕が広がり舞台全体を覆い始めた。


「おおっと!」


黒い煙幕の中からサクラの驚きの声が響き、会場がどよめく。


黒煙の中からキンッ!キンッ!と金属の刃と刃を打ち合う音が聞こえ、2人が斬り合っている様だが視界が晴れない為状況が掴めない。


舞台を煙幕で塞がれてアナウンサーの饒舌実況が止まる。

カイゼルの攻撃方法は殺し合い向きの戦闘方法だ。


カイゼルは多分、サクラを殺す気で戦っているのだろう。


「剣技!【旋空烈風斬(せんくうれっぷうざん)】!」


サクラが特殊技能(スキル)名を叫び剣技を放つと、黒煙の中央から巨大な竜巻が発生し周囲の煙を掻き消す。


風属性の物理斬撃攻撃、こう言う使い方も出来るのか。


サクラは両足の付け根を粘着物質で拘束されており、下半身を覆う袴は無残にも切り刻まれて鎖帷子から素足が露わになっていた。


カイゼルは左手を負傷しているらしく、だらりと左腕を垂らしていた。

切り裂かれた袴から覗くサクラの素足を見た男性観客は、応援とは別の歓声を上げていた。


サクラ応援団も声援を止めて興味深そうな表情で食い入る様にサクラの素足を見ている。


チャイナドレスの様にスリット状に裂けた黒い袴から覗くサクラの足は長く美しい。

男性なら釘付けになるのも理解出来る。


観客の男性に「魅了」の状態異常が掛かっているんじゃないか?

対戦相手のカイゼルには全く効いていない様だ。


カイゼルは短剣を納め、小型の円形に刃の付いた武器をサクラに向けて放つ。


サクラは刀で弾くが同時に放たれた分銅の付いた鉄の鎖でサクラの右手から順に左手を拘束し、鎖の持ち手を素早く地面に固定する。


さながら舞台上で立ったまま「大の字」に拘束されて、動けない様に固定されてしまった。


「さ~て!ファンサービスの時間と行こうか!」


舞台上で大の字に拘束され、衣服の切り裂かれたサクラに対してカイゼルは下衆い微笑みを向ける。


そして取り出した短剣に舌舐ずりをする、いつも思うがその悪役が良くやる仕草って何の意味が有るのだろう?

血を舐めたいとか切れ味を良くするとか?


日常的にしてると癖になって毒の塗った短剣を舐めるとかしちゃうんじゃないかと思う。

正直あの行動原理を全く理解も共感も出来ない。


「おおおおおおおおおおお!」


観客席の男性連中が先程よりも大きい声量で、応援とは別の期待の込められた声援を送る。

サクラは項垂れて表情が見えないがワナワナと肩を震わせている。


あー完全に切れてるなこれは。

サクラは「正々堂々真向勝負が大好きな脳筋」だ。


スカウトの上位職の私も同じ様な戦い方は出来るが、サクラの性格を知っているが故にこんな戦い方はしない。


「脱がせー!」「頑張れ!」

「服を剥けー!」「サクラ様!負けないで!」 


観客席から罵声と応援とヤジと様々な声援が上がる。


カイゼルは余裕の表情でゆっくりとサクラに近付き、上半身を包む軽鎧を繋いでいる金具部分に短剣を這わせ力の限り切り裂く。


サクラの肩から軽く鮮血が噴き出し、鎧の肩パッドが外れる。

その瞬間サクラがカイゼルに顔面に頭付きをして見事にクリーンヒットし、カイゼルは額から出血する。


「ぐっ、キサマ!」


カイゼルが一瞬態勢を崩したその瞬間にサクラは動いた。


「グウゥゥゥゥ・・・ダアァァァァァ!!」


石加工の舞台ごと粘着された足と、固定された鎖を力任せに地面ごと抉った。


続いて両手をそれぞれ固定している鎖を地面から引き千切る。

ガコン!ガコン!草鞋ごと粘着された地面を引きずりながら2歩前に出た。


攻撃力重視のカスタマイズされたサクラの筋力は半端ない。

私位の特殊技能(スキル)レベルが無いとサクラの行動を完全に制御する事は出来ないだろう。


拘束を無理矢理解除したサクラの様子は完全に頭に来ていると言った感じだ。


「な・・・そんな・・・馬鹿な。」


修羅の様な殺気を放つサクラを見てカイゼルが腰を抜かした様にへたり込みサクラを見上げる。

サクラは【乱れ桜吹雪(みだれさくらふぶき)】を腰の鞘に納め、刀の柄を握る事無く居合斬りの構えを取る。


何のつもりだろうか?


「剣技!【三日月(みかづき)】!」


あたかもそこに刀が有る様に居合切りのモーションをする。


サクラの腕に巻き付いて拘束していた鉄の鎖が高速で正面に対峙するカイゼルの右肩に豪快に当たり吹き飛ぶ。


うわっ痛そう相手の鎖を濡れタオル替わりに利用した攻撃だ。


すぐに主審が吹き飛ばされて動かないカイゼルを確認しに向かう。


それにしても、あれは濡れタオルの100倍痛いぞ。

完全に肩から鎖骨付近の骨が折れたな。


主審と副審がカイゼルの状態を確認して首を横に振る。

あれ?死んだ?サクラの頭上を見ると 犯罪者印(どくろマーク)は付いていない。


どうやらカイゼルは生きている様だ。


でも結構ギリギリだったんじゃないかな?

鎖が頭部に当たったら死んでいたかも知れない。


「第4回戦の勝者!サクラ!」


女性ナレーターの勝利宣言と共に会場は今までで1番の歓声に包まれた。


私はサクラに近付き特殊技能(スキル)で拘束を解除する。

結構苦戦したんじゃないかな?


良く見ないと分からなかったが、所々装備破損している。

黒煙の中で複数の剣撃を貰っていた様だ。


「ちょっと苦戦した?」


心配を隠すようにワザとニヤニヤしながら訪ねてみた。


サクラは頬を人差し指で掻きながら明後日の方を向きながら少しバツの悪そうな表情をする。


「ふむ、ファンサービスし過ぎたでござる。」


サクラは観客に手を振りながら、はにかんだ感じで答える。


強がっちゃってまぁ。

でも無事勝てて良かったよ。


何はともあれ、お疲れ様サクラ。


第4回戦はトリッキーな戦法にペースを乱されながらも、圧倒的な力の差(物理)を見せ付けてサクラの勝利に終わった。


サクラは当初の予定通り決勝進出を果たした。

お読みいただきありがとうございます。

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