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013話 ネカマが女湯を利用するのは犯罪だと思う

-オスロウ国-


オスロウ国に到着したのは時間にして体感で夜7時位だろうか?

夕日も完全に落ち、宵闇が辺りを覆い始めていた。


石畳で綺麗に舗装された街道には街灯が幾つも並び街の夜景を彩っている。


運河には桟橋や渡し船も有り、下水設備や鉄格子で仕切られた用水路への入口等が有り近代化が見受けられる。


整備の行き届いた街並みは人々で活気に溢れていた。

何より住民の衣服もアルテナに比べて上質な生地で作られているのが見ただけで分かる。


街を歩く人々の中には 犯罪者印(どくろマーク)を頭上に掲げた冒険者が多数見受けられる。

しかし街の人は特に気にしている様子は無く、ごく自然に住民の様に溶け込んでいる。


入国の際に労働組合(ギルド)カードの提示を求められてサクラは1人分の入国金を支払っていた。


武力国家と言われるだけ有って犯罪者印(どくろマーク)に寛容な国らしいが、無用なイザコザを防ぐ為に私は【黒猫スーツ】に着替えサクラの使い魔として振舞う作戦を再度実行する。


ストーリーモードでは隣国の魔法都市ハイメス国、機械都市ギュノス国と並ぶ三大都市に上げられる。


街の南端には労働組合(ギルド)が有り、咲耶とDOS(どっちゃん)が立ち寄った形跡が無いか受付の女性にサクラが確認したが一切情報は得られなかった。


労働組合(ギルド)に大勢居る冒険者にも話し掛け情報収集したが、当然ミカさんや暗黒神ハーデス(ハーちゃん)の目撃情報も得られなかった。

アルテナの街の周辺モンスターを多数倒した後、彼女達の足取りは途絶えていた。


受付の女性数人と周囲に居た冒険者がサクラの声を聞いて、引きつった笑顔と訝しげな表情をしていたのを私は見逃さなかった。


自業自得だろうけどサクラも段々耐性が付いたのか割と平気な感じで世間話をしていた。


見た目が華奢でスタイルの良いポニーテールの女侍だから周囲の男性は擦れ違う度に振り向く程の美しい容姿だが、声が完全に男その物なのだ。


多分明日には巷で有名人になっているに違いない。

正直サクラに対する街の人の反応は私の密かな楽しみになりつつ有る。


「深紅の薔薇」の皆はどんな反応するか超楽しみなんですけど、即脱退とかならない様に庇うつもりでは有るけどね。


「困ったでござるな、この街には来ていないでござろうか?」


「まさか、ドラゴンに戦いを挑んで死んでしまったとか?な、無いよね。」


不安を感じてお互いに顔を見合わせる。


ゲームでは戦闘不能状態から1時間以内に蘇生薬か特定の職業の習得出来る魔法又は装備の特殊技能(スキル)で復活させなければ、プレイヤーはデスペナルティを受けた後ホームポイントに設定した街に強制送還される。


果たしてこの世界でも、その設定が適応されるのだろうか?


そもそもホームポイント設定は転送装置に触れる事で『ホームポイントに設定しますか?』とシステム音声で問われ「YES」or「NO」の選択肢で選べる。


セーブやログアウトは出来ない。

死んだら現実世界に戻れるかも知れないけど・・とてもじゃないが試す勇気などない。


「明日もう一度、赤龍に会いに行くでござるか?」


「だね・・・うん、もしドラゴンが2人を殺していたらどうする?」


「無論、仇を打たせて頂く。」


大きめの雑貨屋でモンスターを倒して得た宝石を換金し、比較的金銭的に余裕が出来た私達はこの街の中でも大きめの宿屋に泊まろうとしたが「動物お断り」と言われる。


そして何軒か回る羽目になった。


小さめの大衆向けの宿屋で、汚さない事と小型動物と言う条件で泊めて貰える事を了承して貰い部屋を取る事が出来た。


使い魔と言う理由では三ツ星宿の宿泊条件には適応しない様だ。


庶民的ながら美味しい夕食に舌鼓をうち、サクラは悪びれもせず上機嫌で女性用の大衆浴場へ出向いて行った。


どうやら労働組合(ギルド)で大衆浴場の情報を仕入れた様だ、あの姿で男湯に入るのも問題が有るが女湯に入るのは犯罪じゃないか?


お尋ね者の私は人目の有る所ではこの【黒猫スーツ】を脱ぐことが出来ない為、宿屋の部屋で湯浴みをするしかなかった。


大衆浴場に乗り込んで「コイツ中身は男ですよ!」と大声で叫んでやろうか。

私より犯罪者臭がするんだけど。

いっそピンクの犯罪者印(どくろマーク)でも付いて欲しいものである。


自分の使う窓際のベッドの周辺に粘着罠を厳重に仕掛け、以前泊まった宿より広いベッドに横たわる。


そう言えば、もう3日もスマホ等の現代機器を触っていない。

近代と中世ヨーロッパの中間の様な良く有る世界観では、現代文明で生活してきた私にとって衣・食・住・娯楽には不満は多かった。


改めて思う。

私は非常に恵まれた環境で育ってきたと言う事を実感する。


機械都市ギュノス国ならゲーム内でも近未来的な造りになっていたので暮らしやすそうでは有る。


でも、こちらの世界の方が目的を持って生きていると謎の充実感と言うか・・・

授業の中で先生が言っていた「マズローの五大欲求」的なアレか?

・・・内容は詳しく覚えてないけど。


馬鹿なので考えても無駄だ。

結局人間は自分では気が付かない「心の空白」が埋まると何らかの満足感を得られるのだろう。


今頃サクラは女湯で別の満足感を満たしてそうだけどね。


当面の問題を頭の中で整理してみた。


①咲耶とDOS(どっちゃん)の捜索。

これは明日洞窟のレッドドラゴンに確認しに行く、場合によっては戦闘になるらしい。

2人はオスロウ国に向かう際にレッドドラゴンと戦闘を行い、敗北して死亡した可能性が有る。


②この国の労働組合(ギルド)に有る初級・中級以上の依頼を複数成功させ、国王の悪政の噂を仕入れる。

これがイベントフラグとなっているので正規戦争ルートへの道になる。

依頼を達成し冒険者ランクを上げる事でこの国の武闘大会への出場権を得られる。

ストーリーモード通りにイベントが進むなら出場して優勝する事が必須イベントだ。


③この国と隣国ハイメス国との戦争を起こさない様に物事を上手く進める作戦を考える。

偽国王を倒す事がハイメス国が戦争を仕掛ける理由になるので倒さない。

どうやって時間稼ぎをするか?

しかし、偽国王がハイメス国に進行して戦争が始まる可能性も有りそうで怖い。


咲耶達がこの国に来て居ないと言うことはイベント自体は進んで無いはず。

サクラと話し合って良く考えて行動しなければ・・・


洞窟のドラゴン同様、話し合いで戦争回避出来ない物だろうか?

序盤のレッドドラゴンであの威圧感って事は他のレイドボスやラスボスなんて想像もできない。


無駄に考え事をしていたからか徐々に意識が睡魔に蝕まれていく・・・


睡眠欲の欲するままに、私の記憶は途切れた。

お読みいただきありがとうございます。

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