好きの反対は無関心
生きていれば幾人と顔を合わせる。けれど、素性など知りはしない。
駅ですれ違う寝癖の人、コンビニでいつもゼリー飲料を買う人、校門くぐるタイミングが同じ人、クラスの皆。そして、ひとつ前の席の君。
「あ、保科さん。」
他意はない。休日に知ってる人を見かけて思わず声が出た。ただ、それだけだった。
明るい印象の人では無い。だが正直ショックだった。「え?誰?」と怪訝な表情の君に、同じクラスで、窓際から二列目、後から二番目の席の相馬寛之である事を告げると「あぁ」と……ただ、それだけ。
高校入学して3ヶ月、確かに殆ど喋った事も無いけど、見事なスルーだった。保科さんは友達と一緒にいたから、僕と知り合いだと思われたく無かったのかもしれないけど。
学校……行くの気まずいな……
➖後日➖
今日も馴染みの顔ぶれと合う。
しかし、寝癖が左右逆、ゼリー飲料の人がスムージー買ってる。思わず《あれ?》って顔をしてしまった。向こうは一瞬《え?》って……気まずい……
校門をくぐるタイミングを意識的にズラしたら《あれ?》って顔されて、気まずい……
教室には何故だか既に着席している保科さんの姿が……
いつもなら予鈴直前に無言で現れるのに「おはよう」そう言って、手をひらいた。
休日の事が気まずいから、なるべく避けて過ごすつもりだったのに。どうして良いか分からないまま「おはよう」そう返した僕に保科さんは不思議な表情を向けた。
「ねえ、相馬くん、彼女とか……」
!!?急展開?梅雨が開けたら春が!まさかの告白?さくら咲く!
「いないよね。」
ん?告白ではない?
平静を装い質問に答えた。勿論、彼女いません。そして保科さんの一方的とも言える会話がHRが始まるまで続いた。
「ま、そゆこと。」
さくら散る。期待した展開では無かった。でも嬉しかった。
保科さんは授業以外教室にいない。同じ中学の女子が2人とも他のクラスにいるので、そっちの方が楽しいらしい。だから高校に入ってからの友達はいないし、自分を認識している人がいると思わなかったらしい。突然声をかけた僕を不審者としか思ってなかったらしく、一緒にいた友人に、学校に行ったら確かめてみろと言われ今に至る。
中間テスト良かったよね?今度勉強教えてね。
顔面偏差値はソコソコだから髪型いじれば?
あの服はセンス無さすぎ。
何でいっつも寝てんの?
誉められたんだか貶されたんだか……
でも、僕だけじゃなかった。顔を合わせれば思う事はあって、知らない人に声はかけないけど、寝癖の人も、ゼリー飲料の人も、校門の人も、何かを感じてる。
せめて、同じ学校の同じクラスの席の近い人くらい、思った事を伝えてみよう。
人見知り爆発させて休み時間寝てる場合じゃないな。
とりあえず、髪型は見直そう。
保科=★ と 相馬寛之=相寛=寛相=感想
の お話
に聞こえる?