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04

『――――アアアアア!!』

 その獣の声は最初、バルとサンがいる場所の遙か後方から聞こえてきていた。

 だが、その叫び声を発する存在は、瞬く間にバル達のすぐ後ろまで接近し。

「ま、せいぜい、頑張ってください。あの人のお気に入りさん」

「……バルー、その言い方やめない?」

 その獣は、砂漠に突き刺したバールのようなものに寄り掛かっているバルと何故かふくれっ面になっているサンにぶつかる直前で大きく跳躍し。

『アア――――……!』

 獣の叫び声を上げるその巨大な物体は、そのままバル達と敵対している鈍色の軍団へと飛び込んだ。

そして、着地すると同時に大量の砂塵を巻き上げながら、鈍色の人形を数体破壊したその巨大な物体は。

『――――』 

 鋼の獅子、としか表現できないような姿をしてた。

 だが、砂煙が落ち着き、晴天の下にその姿が露わになると、少しばかりその表現を変えざるを得なくなる。

 その獅子は、――――継ぎ接ぎだらけの鉄の塊だった。

 その機体は最初から獅子の形をした機体を造るために設計されたのではなく、稼動できる鉄の身体を構成するために、別の用途に使われるはずだったパーツを寄せ集めた結果、何となく獅子のように見えているだけで、魚の鱗のように大量のパーツがついているその姿はあまりにも歪だった。

 だが、その継ぎ接ぎだらけの獅子の戦闘力には目を見張るものがあった。

 爪、牙、尻尾、のように見える部位を巧みに扱い、先程のバルの戦闘よりも効率的に鈍色の人形達を壊し続け、鈍色の軍団は既に壊滅しかけていた。

『――――』

 だが、暴風のような鉄の塊から、比較的離れた位置にいた数体の鈍色の人形が一斉に機関銃を構えたことにより、形勢が逆転した。

 先のバルとの戦闘から鈍色の人形達の射撃の精度がかなり低いということは判明している。だが、巨大な体躯を持つ獅子に弾を当てることは、鈍色の人形達にとって不可能なことではなかった。

 そして、一部を除き装甲がそれほど厚くない継ぎ接ぎの獅子が有効射程内からの機関銃の斉射に耐えることは不可能であり、巨大な獅子に銃口を向けている鈍色の人形達の持つ機関銃が火を噴いたとき、継ぎ接ぎの獅子は間違いなく破壊される。

『――――』

 だが、その時が訪れることはなかった。

 機関銃が火を噴く直前、銃を構えていた鈍色の人形達の直上で、ゴゥというガスが燃えるような音と共に、紫色に光る槍のような物体が何本も現れ、その紫の槍が継ぎ接ぎの獅子に銃口を向けていた鈍色の人形達を貫き、機関銃を構えていた鈍色の人形達は何が起きたのかも理解できぬまま、機能を停止した。

 そして、その光る槍のおかげもあって無傷で十体以上の鈍色の人形達を破壊した継ぎ接ぎの獅子は、次なる敵を求め、砂漠の中心にある岩石地帯へとその鋼の脚を進めた。

 そして、それから約十分後。砂漠の上から銃声は消え去り、音も無く砂が舞う、本来の静かな砂漠に戻った、その砂上で。

『――――!!』

 戦いを望む獣が、何処か悲しげに吠え続けた。


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