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「……」

 戦いに赴こうとする強い意志をシオン達から感じ取ってしまったトキヤは。

『……そろそろ、話を続けてもいいかい?』

 そのグリージョの言葉に、小さく頷くしかなかった。

『それで、キミ達が奪還すべき基地の現状は……、んー、言葉で説明するよりも』

 これを見て貰った方が早いか、と呟いたグリージョが手元のデバイスを操作すると、映像に数枚の画像データが大きく映し出された。

『これらは衛星写真や偵察隊が取ってきた画像データで、取り敢えず、一番上の画像を見て貰えるかな。真ん中にあるのが強奪された基地で、三つの方角に線状の光が見えるだろう? これ全部が反政府のJD部隊で、あの基地で合流しようとしているんだよね。いやあ、ほんと、大変なことになってしまったよ』

「……自分はこういう話については素人同然なので見当違いのことを言っていたら申し訳ないんですが、自分にはこの三つの部隊それぞれに基地を襲った部隊と同等の数のJDがいるように思えるんですが……。これはJDの部隊で攻撃するよりも、無事だった基地、もしくは首都からのミサイル攻撃の方が遙かに有効なのでは?」

『残念ながら既に弾道弾迎撃ミサイル(ABM)装備のJDが的確なポイントに配備されている。しかも、しっかり護衛がついているから、ABM装備のJDだけを破壊してミサイル攻撃というのも難しいとのことだね。まあ、ストレッタが開発に関わった兵器を使えば、一瞬で片付くらしいけれど、上がそれを動かすのは時期尚早と判断したから、キミ達に頑張ってもらうしかないということになったんだよ。……とは言っても、流石にこれだけの数の敵の中にキミ達だけで突っ込め、なんて無茶は言わないけれどね』

「……そう、なんですか?」

『うん? 当たり前だろう? なんだい、もしかしてキミの目には僕が勝算のない戦いに身を投げろと命令するような、愚かな人間に見えているのかい?』

「……」

『何故、黙るのかな……? まあ、話を続けようか。先程から何度も言っている通り、キミ達がするべきは基地の奪還。だが、それは最終目標であり、喫緊の目的ではない。キミ達がまずすべきことは、――――敵前線基地の強奪だ』

「……敵前線基地?」

『ああ、左下の画像データに映っている施設がそれさ。そこから敵部隊が出撃し、キミ達の基地を襲ったとのことだ。そして、出撃した敵部隊がその前線基地に戻った形跡はないとの報告を受けている』

「……つまり、敵が放棄した基地を占拠しろ、ということですか?」

『正確にいうと、敵はまだその前線基地を放棄はしていない。ある程度のJDが残っていると推測されているからね。だが、キミ達だけで十分に対応できる数だと判断された。キミ達は武装などの補給を受け取った後、敵前線基地を襲撃し、前線基地を確保。その後、そこを一時的な拠点とし、首都からの本格的な増援と共に我々の基地を取り戻す』

 それが作戦の大まかな流れさ。という言葉を最後に大体の話を語り終わったのか、グリージョが口を閉ざしたので、トキヤは目を伏せ、その作戦について考えてみることにした。

 ……手薄になった敵の前線基地の略奪か。確かに敵部隊が集まっている基地の奪還よりは成功の可能性が見える作戦だ。

「……」

 だが、果たして、そう上手くいくのだろうか。と、トキヤの脳裏に幾つかの不安要素が過ぎった。

 ……基地を脱出する際に遭遇したディフューザー。あれの使い手はどこにいる。それに何より……。

「……グリージョさん、先程、補給の話が少し出ていましたが、その補給に戦術特化JDは含まれているのでしょうか? ここにいるJDの中に戦術特化のJDはいないので、ライリスが使えない今、最低でも二人は欲しいのですが……」

 そして、トキヤはまず最大の不安要素である、戦術特化JDの不在についてグリージョに相談した。シオンたちが如何に強力なJDであろうとも、戦闘の際に戦略、戦術が一切なければ、その力を半分も発揮できないのだ。

 故に、トキヤは戦術特化JDの増員が何よりも優先すべきことであるとグリージョに訴えたが。

『ああ、その件については既に解決済みさ』

 どうやら、グリージョもその事を重要視していたらしく、戦術特化JDの手配がもう済んでいるような言葉を口にしたため、トキヤは安堵から大きく息を吐き。

『何故なら、今回の作戦中は――――キミがJD達を指揮するのだからね』

 そのグリージョのあまりにもふざけた発言を聞き、トキヤは息を吸い込むことを忘れ、思いっきり咳き込んだ。

「……あの、グリージョ、さん? それ、全く面白くないですよ?」

『それはそうだろうさ。冗談で言ったつもりはないからね』

「……は?」

『これはあの人直々の命令でね。今回の敵の動きはあまりに異様で、JDの作戦とはとても思えない。つまり、人間が立てた作戦だとあの人は考えて、こちらも人の指揮の下、JDを動かして対抗してみようということになったんだよ。それで、白羽の矢が立ったのがキミということさ』

「あの人が俺に……? い、いや、幾らあの人の考えでもこればっかりは……!」

『んー、僕に文句を言われてもね。これは決定事項だし。……さてと、それじゃあ僕もやることが色々とあるからそろそろ失礼するよ。必要な補給物資はストレッタのデバイスに補給部隊の連絡先を送ったから、そっちと相談してくれたまえ』

「は? いや、ちょっと待ってください……!」

『ああ、それと僕には意味がよくわからなかったが、あの人曰く、敵の中にはネイティブという種類? のJDがいる可能性があるから気をつけろ。だそうだよ?』

「……敵に、ネイティブ(・・・・・)がいる、だって? それじゃあ、やっぱり、あのディフューザーは……。あのグリージョさん、その話、もっと詳しく……! おい、グリージョ……!」

 そして、グリージョの口から、下手をしたら戦術特化JDの有無よりも重要な単語が飛び出し、トキヤはその詳細を聞こうと、グリージョの名を何度も呼んだが、既にグリージョが映っていた映像は消えており、通信を繋げてくれていたレタが首を横に振っていることから、トキヤはグリージョとの通信が完全に切れてしまったことを理解した。

「……敵にネイティブ。その上、技師の俺がJDを指揮するだって……?」

 そして、トキヤは自分に課せられた責任の重さをひしひしと感じ、暫くの間、その場に呆然と立ち尽くした。


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