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 煙草を吸ってくると言い残し、トキヤが部屋を出てから、丁度三十分後。

「――――」

 落ち着きを取り戻すだけではなく、普段以上に表情を引き締めたトキヤが部屋に現れ。

「お待たせして申し訳ありませんでした」

『いや、構わないよ。こちらも少し休憩ができて、スッキリしたからね』

 トキヤは部屋に入るなりグリージョとの会話を再開した。そして、トキヤ達がこれから行う作戦の説明のため、映像に幾つかの資料を映し出す作業をすぐに終わらせたグリージョは、長い足を組み直し。

『――――それじゃあ、まずは、今の状況を簡単に説明しようか』

 トキヤ達に現在の政府の状況を語り始めた。

『キミ達のいた基地を反政府の連中が急襲してからまだ半日も経っていないが、この国の情勢は大きく変わった。国が複数保有している統合知能ライリスが一つ破壊されたことにより、襲撃された基地所属のJDだけでなく、国の所有するJDのほぼ半数が行動不能となった。反政府の連中と違い、量より質のスタンスを取っていた我々は流石に手数が足りなくなり、大規模な作戦変更と拠点防衛のため、残存戦力の六割を首都に集結させることになった』

「……つまり、自分達も首都を目指して移動をすればいいのでしょうか?」

『ははは、キミ、わかっていっているだろう? そんなことは有り得ないと』

「……」

 トキヤはそのグリージョの問いに無言を貫くことで肯定を示した。

 そう、只の技師とはいえ、トキヤもそのぐらいは理解していた。グリージョのような地位の高い人間が非常時に自分のような末端の人間と長々と会話をしているのだ。これはそんな単純な話ではないと。

 だが、それでもトキヤは淡い期待を言葉にしてみたのだが、それは一蹴され。

『キミ達に与えられた作戦は、――――基地の奪還作戦。というやつだね』

 地獄のような作戦がトキヤ達に言い渡された。

「……基地の奪還。それは、自分達が所属していた、あの基地ですか?」

『それ以外に何があるんだい? あの基地には起動不能になっているとはいえ、ハイスペックなJDのボディが大量に残されている。それを反政府にバラして使われたり、直接データを入れられて活用される前に基地の奪還ないし、破壊を行う。それがキミ達がこれからやるべき仕事だ』

「……それは、JDによる戦闘が必須の作戦と捉えてもいいでしょうか?」

『もちろんだね』

「なら、まず何よりも優先してお願いしたいことがあります。破壊されていない他のライリスに、ここにいるJD達の人格データを納れさせてください。それからならば、どれほど困難な任務でもうちのJD達が完遂してみせます」

 そして、作戦に戦闘が必須であることを把握したトキヤは、ある企みを心に隠し、ポーカーフェイスでグリージョに要望を出したが。

『ふむ。――――それは許可できない』

 グリージョはその要望を間を置かずに却下した。

「……何故です」

『ライリス内のJDの人格データは改竄が絶対に不可能だと言われている。だが、JDのボディ内部の記憶装置に入れた人格データは第三者が手を加えることが可能だ。そんな危険性を孕んだ人格データをライリスに納れることは許可できるはずもない。……というか、こんな常識、技師のキミが知らない筈がないよね?』

「すみません、ど忘れしてました。そして、非常識と言われても言葉を重ねさせて貰います。どうか、ここにいるJD達の人格データをライリスに納れさせてください。こいつらはボディに人格データを入れてからは殆ど敵と接触していませんから、改竄は……」

『JDの技師として、絶対に有り得ないと言えるのかい?』

「……」

『……ふう、まあ、肩の力を抜きたまえ。この言い合いは無意味だ。これは綱紀なのだからキミと僕で変えることなんてできないよ。そこにいるJD達の人格データをライリスに納れるのは、こちら(首都)に来て、スキャニングを受けてからだ。だから、少なくともこの作戦の間は、そのままの状態で戦闘をさせたまえ』

「……っ」

 そのグリージョの真っ当な発言を聞き、トキヤは歯を強く食い縛った。

 トキヤ自身、今の会話でグリージョは、この国に仕える人間として間違ったことは何一つ言っていないということをよく理解していた。

 だが。

 ……間違っているとわかっていても、退けるわけがないだろうが……!!

 もう、これ以上、一人たりとも失ってなるものか。その一心でトキヤはグリージョに抗議をしようと口を開いたが。

「……シオン?」

 トキヤが紡いだ言葉は、自分の肩に優しく手を乗せた銀髪のJDの名だった。

「……トキヤ様、ありがとうございます。ですが、私達は大丈夫です」

 そして、シオンは自分達を守ろうとしてくれたトキヤに感謝の言葉を述べてから後ろを向き、その動きにつられトキヤも後ろを向くと。

「……お前達」

 そこには、サンが元気よく、バルがからかうように、カロンが優しく、それぞれの、らしい笑みを浮かべていた。そんな三人の姿を見てから、トキヤが隣にいるシオンに視線を戻すと、シオンは力強く頷き。

「――――どうか、私達の力を信じてください」

 そう、トキヤに訴えた。


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