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 予約していたホテルにチェックインしたトキヤは、バルとアイリスに夕食の時間までホテル内限定でそれぞれ自由に行動しようと話してから、自分が泊まるシングルルームへと入った。

 そして、それから少しだけ時間が経過し。

「……ふう」

 熱いシャワーを浴びて汗を流し、冷蔵庫の中に入っていたミネラルウォーターを飲んで一息ついたトキヤは。

「……」

 窓の外の景色を眺めながら、反政府軍の強力なJD、ジャスパーとそのパートナーであるイオンについて考え始めた。

 トキヤ達がショッピングモールでイオン・キケロがどういう人間であるかという話をイオン本人から聞いた後、店から戻ってきたジャスパーが、武装は全て船便で送られてくるはずだったのにディフューザーだけ航空便で送られてきて、先程それが届いたという連絡があった。と全員に話し、ディフューザーを取りに行くことになったジャスパーとイオンとはそこで別れることになった。

 そして、二人と別れた後トキヤは、イオンにアイリスとの関係性について聞かなかったことをアイリスに謝罪してから、ジャスパー達を仲間にすることは現時点では不可能だという自身の出した結論をバルとアイリスに話した。

 特殊なJDであるジャスパーだけでなく人間のイオンも社会通念はもちろん、倫理も道徳も飛び越えた自分ルールで動いていることをよく理解したトキヤは、国家の下に存在する政府軍(普通の社会)に二人を縛り付けることは不可能だと思ったのだ。

 だが、その時の状況によっては二人と協力し合える時もあるかもしれないと思ったトキヤは、今後二人と出会った場合、武器を向ける前に対話をし、戦闘を行わずにすむ道を模索すべきだと考え、トキヤがその考えをバルとアイリスに語ると、バルが少しだけ文句を言いはしたものの、二人ともトキヤの意見に頷いてくれた。

「……出来ることなら、もうジャスパーとは戦いたくないからな」

 心情的にも、戦力的にもな。と呟き、ジャスパーとイオンに関係する思考の整理を終えたトキヤは、窓の外に向けていた視線を部屋の中へと戻し――――

「――――っ」

 唐突にジャスパーの顔が視界に入り、トキヤは少しだけドキリとした。

「……」

 この部屋にはトキヤ以外誰もいない。それなのに部屋の中でトキヤがジャスパーの顔を見たのは、トキヤが幻覚を見たわけでも、窓ガラスにジャスパー本人が張り付いていたとかそういうホラー的な話でもなく、単純に――――

「……シャワーを浴びる前にベッドの上に置いたのをすっかり忘れてたな」

 ベッドの上に置かれた箱にジャスパーの姿が描かれていたからである。

 ジャスパーが手描き風のタッチで格好良く描かれているその箱にはショッピングモールの玩具コーナーで作ったジャスパーのオリジナルプラモデルが入っている。

 ジャスパーのパートナーであるイオンに別れ際、男の人ってこういうの好きなんだよね? と言われ、半ば強制的にそれをプレゼントされたトキヤは若干困りはしたものの、粗末に扱う気にはなれず、国に持って帰るつもりであった。

 そんなジャスパーのプラモデルにトキヤは近づき、何となく手に取った。

「……」 

 ジャスパーのプラモデルが入っているその箱には3Dデータを手描き風にしたジャスパーの姿がフルカラーで描かれ、箱の横には塗装された完成品が様々なポージングをした画像や無塗装状態の完成画像が印刷されていた。そんな既製品にしか見えないジャスパーのプラモデルが入っている箱を眺めていたトキヤが。

「……」

 今、作るわけではないが中身を少し確認してみるかと思い立ち、プラモデルの箱を開けようとした、――――その時だった。

「……っと」

 まるでトキヤがジャスパーに夢中になることを阻止するようなタイミングでデスクの上に置かれていたデバイスからけたたましいコール音が聞こえてきた。

「そうか、もう定時連絡の時間か」

 そして、部屋の時計を見て時間を確認したトキヤは、自分に連絡をしてきたJDのことを想像しながらデバイスを手に取り……。

 ……余計な心配を掛けることになるからな。

 トキヤはジャスパーがこちら(日本)にいることの証拠になるプラモデルが映像に映り込まない位置に座ってから、デバイスを通話状態にした。

「――――」

 そして、トキヤはデバイスに映ったJDの顔を見て、無意識のうちに頬を緩め。

『――――』

 遠くの国から一日中トキヤを心配し続けていたそのJDは、元気そうなトキヤの顔を見て、心から安心したというような表情を浮かべた。

 そして、月の輝きよりも美しい銀色の髪を揺らし、透き通った紫の瞳をトキヤに向けたそのJDは微笑み。

 

『――――こんばんは、トキヤ様。定時連絡の時間です』

 

 そのJD、シオンはトキヤと会話が出来る喜びを噛み締めるように、その言葉を口にした。

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