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2.婚約破棄と大事件

※本日2回目の投稿です。




そうして、王城の隣にある神殿で茶番劇が始まった。


聖女シアに対し、マルティン王子が婚約破棄を宣言したのだ。


「シア、お前との婚約を破棄する! 聖女シア……いやもうお前は聖女などではない。おとなしく不正の罪を認め、真の聖女ヴェロニカに謝罪しろ!」


そんな王子にすり寄り、私は決められた通りの台詞を口にする。

「ねえ殿下。シアを許してあげて? 魔が差すことぐらい誰にでもあると思うの」


「おお。なんとヴェロニカは寛大なのだ。優しい!大好き!結婚しよう!」

「こんなところで恥ずかしいですぅ殿下」


何というか、いつもの光景だ。神殿にいる神官や巫女たちの視線が痛い。

謝罪しろとか言ってるけど、でっち上げの話なので聖女にまったく非はない。

臨時の聖女試験で不正行為をしたという、証拠もないひどい冤罪だ。


聖女シアは一言も反論せず、虚ろな表情でこちらを見ていた。


現在15歳のシアは、とある事情で5年前から感情を失ってしまっているという。

いつか、助けてあげられればいいのだけれど……



その後、シアは兵士たちにより城に連れて行かれてしまった。

国王陛下から冤罪の取消をしてもらい、巫女への職種変更を勧められるとのこと。

実際は、聖女の座を奪い、位の低い巫女としてタダ働きさせるのだ。


そんな流れで、今回の件は国王による計らいで穏便に執り行われた。

なんとも胸糞の悪い話だ。こんな悪事に加担している自分を殴りたくなってくる。


内心、罪悪感と嫌悪感でいっぱいの私にマルティン王子が話しかけてきた。


「なあヴェロニカ。シアは少し可哀想ではないのか」

「は?」

予想外の言葉に、つい素で返事をしてしまう。

嘘でしょう。そんな真っ当な人の心を持っていたの、王子……!


「私と婚約破棄したらシアを他の王族と婚姻させる計画のはずなのに、先ほど父上はシアを自分の愛人にすると仰っていたのだ」


「…………」

一瞬、言葉を失ってしまった。


なんてこと考えるのよ、あのゲス親父!!

そんな事がバレたら、うちの兄さんに瞬殺されるわよ。私、知らないからね!


 ◇ ◇ ◇


30分後。事件は起こった。


聖女シアが王命により追放され、城を出て行ったのだ。

実のところ、それは偽の命令であり、聖女を外に連れ出す策にすぎない。


兵士たちは大慌てで、方々を探し回った。

「駄目です。聖女様がどこにも見つかりません!」

「大神官様の姿も……あっ! 陛下。一体どうなされたのです!?」


「だ、大神官にやられ…………ぐふっ」

「へ陛下――――ッ?!」


城の片隅で倒れていた国王は、そう言い残したという。死んでないけど。


こうして、犯人の男性(30)は聖女(15)を誘拐し、国王(40)と王子(19)に傷害を加えて、まんまと国外へ逃亡した。


こうやって文章にすると、すごく犯罪臭がぷんぷんするわね。最低……


残された私は途方に暮れつつ、いつも兄との情報をやり取りする、城の裏庭の木のうろを調べてみる。


『予定より早いが、先に帰る。後は任せた。お前はひと月ほどは残っていろ』

という、暗号文による手紙が残されていた。


あんの最低兄貴! 面倒ごとを妹に押し付けて勝手に逃げるなっ!!

次に会ったら、文句の一つや二つも言ってやるからね。覚悟なさい。




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俺様王子が今さら私に泣きついてきた
子爵令嬢マールがノリと勢いで突き進むお話です。
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