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「こ、ここですわ」










「へぇ!」











フランソワは、ここに来て少々自信を失った。

やはり、王族の人間に対してはより高級なところに案内した方が良かったのかもしれないだとか、色々な心配が急に込み上げてきた。

現にロイドは非常に驚いている様子で、執事に至っては怪訝な顔をしてその光景を見つめている。













「お、お坊っちゃま。貴方ともあろうお方がこんなところにいてはなりません。

帰りましょう。フランソワ君!君も失礼だぞ!」












「え、す、すみません……」












フランソワは動揺している。執事は御構いなしに、車を手配しようと来た道を引き返し始めた。












「執事!待ちなさい!」











「はっ!なんでしょう、お坊っちゃま!」












「執事、今フランソワのことを失礼だと言ったね。だけど、僕は君の方が失礼だと思う」












「えっ」













「フランソワさんがどんな気持ちでここに招待してくれたか、確かに僕には分からない。

だけど、理由はきっとあるはず。それを知ろうともしないで、フランソワさんの思いを踏みにじるのはいかがなものか。

僕は場所に関係なく、フランソワが招待してくれたことに感謝する」












「はっ申し訳ありません!」











「僕じゃなくて、謝るならフランソワさんに謝ってくれたまえ」











「はっ申し訳ありません!」












執事はくるりとフランソワの方を向き、深々と頭を下げ、謝罪した。フランソワはいたたまれなくなり、気にしないで欲しいということを必死に伝えた。

こうした一悶着があったのも、フランソワがロイドを連れてきた所が、例の野菜売り場だったけらだ。確かに執事が腹を立てるのも無理はない。王族の人間が市場の中の小さな野菜売り場に立ち寄るなど、本来ならばあるはずのないことだからだ。

この件に関しては、ロイドが寛大だというだけなのだ。













「ちょっと待っていてくださいね!」











フランソワは野菜売り場の方へ行き、ロイドと執事は近くのベンチに腰掛けた。

ロイドが座ろうとすると、執事がロイドを制し、ベンチを一旦ハンカチで払うところを見ると、やはり王族の気高さを感じる。

しばらくすると、フランソワは野菜を袋に入れて持ち、ロイドの元に戻ってきた。











「ロイドさん。おイモです。どうぞ!執事さんも」










「ありがとう」









「おっこれはかたじけない」












微妙な表情で手に持ったイモを見つめる執事とは違い、ロイドは躊躇なく噛り付いた。












「おっ。美味しいですね!今までには食べことのない味です」










「本当ですか!良かった〜」









自分が勧めたものを喜んで食べてもらえるということが、こんなにも嬉しいことだとは思わなかった。しかしさらに、ロイドは嬉しいことを言ってくれた。











「なんだか…このイモからは、優しさを感じます」










「優しさ…ですか?」










「はい。この優しさは、宮殿にいるどんな一流料理人でも作ることの出来ない、唯一無二のものだ。栽培した人の思いを感じます。

きっと、良い人なんでしょうね」











ロイドは満足そうに笑う。

フランソワは感激した。今すぐにでもその言葉を主人に伝えてやりたいと思った。

本当にロイドは良い人だ。

ロイドを野菜売り場に招待して本当に良かったと、心からそう思った。












「喜んでくれて何よりです!」











「こちらこそ、こんな素敵なところを教えてくれて、どうもありがとうございます!」












ついでにいうと、執事も最初は怪訝な顔をしていたが、イモをひとくちでも口にするや否やその甘美な味わいを絶賛した。









その後、ロイドとフランソワのふたりは他愛もない話で、和気あいあいと盛り上がった。

以前と比べて、かなり打ちとけた様子である。

お互いがお互いを尊重しあい、信用しあう。

フランソワは、婚約破棄の件が解決したらロイドとこのように食事をとることが出来なくなるということに、寂しささえ感じていた。

それ故に、会話には思う存分楽しんだ。

ロイドの方はというと、こちらもとても楽しそうだ。

さて、散々話した後、いよいよ本題に入る。













「フランソワさん。例の件に関してですが」










「はい」










先ほどまでのラフな雰囲気とはうってかわり、緊張感が漂い始めた。


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