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「あなた、どうなっているのよ!国王夫人の私がエステを立ち上げたいっていっているのよ!」











「はぁ…し、しかし…」










「何よ!文句があって?!なんで予算が足りないのか説明なさい!あなた、執事じゃなくって?!」











宮殿内の一角に位置する、アリアス夫人の仕事部屋にて、執事は強く叱責を受けていた。












「はぁ…予算が足りない理由を申し上げますと……誠に申しあげにくいのですが……」











「何よ!言いなさい!」











「奥様はこれまで、アリアス国の国家予算をご自身の美容や食事に使われてきました…」











「だから何よ!文句があって?!」











「い、いえ!とんでもないです!ですが、これ以上は…均衡予算でいかないと、国王様に、その、予算の使い道が知られてしまいます…」











「あら、それはまずいわね」








言葉とは裏腹にアリアス夫人はニヤリと笑い、執事に向かって驚きの言葉を言い放つ。










「もしも私が国家予算を私的運用していることが夫にバレそうになったら、あなた消えてもらうわよ」










「!!!」










あまりに恐ろしいことを、夫人はさも愉快そうに言ってのける。執事の表情は恐怖で引きつっていた。かといって、打開策を思いつくことはなかった。一体、エステを開きたいという私的理由によって命を落とすのだけは、勘弁してほしかった。












「で、ですが奥様。これ以上予算を使うと…」











「あ〜ら、あなた馬鹿ね。使うためには、増やせば良いのよ、増税よ増税」









「ぞ、増税ですか?!」











「夫には適当なこと言って誤魔化しておくわよ。大丈夫だわ」










「ですが、昨年、国税を10%値上げしたばかりです。民衆たちによる暴動が心配されるかと…」











「うるさいわね〜あなた、じゃあわかったわ。

ひとつの村からたんまりとりましょ」










「え……!」











「そうねぇ〜、やっぱりターゲットはあの女、フランソワがいるガイヤ村の税金を50%増やすのよ」










「50……!し、しかし奥様!」










「あら、消されたいの?」










「い、いえ、す、すぐに手配いたします!」










「おっほっほ!分かれば良いのよ!あ、あとあなた、わたくしの次の予定は何かしら?」










「は、はい、ソフィお嬢様とのお食事になっております」









「ソフィね、わかったわいきましょ」











こうしてアリアス夫人とその執事は、ソフィとの食事会のため、あらかじめ手配された部屋に向かった。

アリアス夫人。恐ろしい人物である。

あれほどまでに痛めつけたフランソワに、まだ手を加えようというのか。憎き相手、弱っている相手にも決して容赦しない、いわば野生のような女である。






フランソワは考え込んでいた。

工場での作業は体に負荷はかかるものの、単純な事務的作業であるため手だけを動かしながらあれこれと思考を巡らせることが出来る。

何を考えているのかというと、それは先日のロイドとの約束のことだった。

ロイドは、今度はフランソワが自分を招待してくださいなどと言っていたが、経済力のないフランソワは外食などしたことがないため、招待できるあてなどなかった。

かといって、ロイドに対する日頃の感謝の意を込めてどこか有意義な所に招待したいという気持ちもあり、また、ロイドに喜んでもらいたいという単純な気持ちもある。そんな理想と現実との衝突が、フランソワの頭の中をより混沌とさせる。

まあ、ロイドと次に会うのは明後日のことだ。

それまでにじっくりと考え、結論を出せば良い。今は仕事に真摯に向き合うことが先決だと、真面目なフランソワは頭を切り替えることにした。













一方その頃、ロイドは宮殿内の清掃員に対して片っ端から聞き込み調査を行なっていた。














「すいません」












「ロ、ロイド様…!な、何でしょうか」












「母とソフィさんの昼食会はどこの部屋で行われるか知っていますか?」










「さ、さぁ…申し訳ございません。私は存じ上げておりません」











「そうですか、ありがとうございます」











アリアス夫人と違い、ロイドは身分の明らかに低い清掃員に対しても感謝の意を述べる時にはしっかりと頭を下げる。それに清掃員たちは恐縮するが、いずれもロイドに対する印象は良かった。しかしながらこれで清掃員に対する聞き込みももう30人目。

半ばもう無理だと思いかけたが、先日におけるフランソワの期待のこもった表情を思い出すと、どうしても諦めるわけにはいかなかった。

100人ほど、つまり宮殿にいるほとんどの清楚員に声をかけた結果、ついにロイドは情報を得ることに成功した。













「ええ。ソフィお嬢様とアリアス奥様はアセンブルホールで、執事の方を交えて食事会を行うと聞いていますよ」











「え、本当ですか!ありがとうございます!」










「とんでもございません。しかしそれがどうかしましたのかしら?」











清楚員のその言葉はロイドに向けられたものであったが、ロイドは既にその場にはいなかった。大急ぎで走り出していたのだ。

ロイドは夢中になって走った。アセンブルホールを目指し、広い、あまりにも広いこのアリアス宮殿の中を走り回った。

あの2人が来る前になんとしてでもアセンブルホールに辿り着かなければ。ロイドの頭の中にあるのはただそれだけだった。

ロイドの作戦は既に整っていたのだ。






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