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「私はフランソワと、今、この瞬間をもって婚約破棄する事を宣言する!!!」






1万人はいるであろう、民衆たちからどよめきが起こる。それもそのはず、ドリス王子はつい最近まで、ナタリーフランソワを溺愛していたからだ。

王子の隣にいるフランソワはうなだれるでもなく、かといって泣き喚くでもない、神妙な面持ちで王子による婚約破棄宣言を聞いている。

結局この集会場において、婚約破棄の理由が説明されることはなかった。












「なぜですか……!なぜ娘との婚約をとりやめになられるのですか!ドリス様!」










ナタリー夫人が泣き叫び、ドリス王子とその父親、アリアス国王に問いただす。

高級感あふれる、壮大で豪華絢爛なアリアス宮殿において、似つかわしくないみずぼらしい服を身に纏っている。











「ナタリー夫人。貴女には申し訳ないが、娘さんにちょっとした疑惑が生じましてな」










「疑惑……?」










「お前よ、説明しておやり」










まるで何のことか分からない、といった様子のナタリー夫人の前に立ったのは、アリアス夫人だった。













「ナタリー夫人。わたくしの薬指をご覧あそばせ」










そういってアリアス夫人は、贅沢な食事によって肥大化した太い手を、ナタリー夫人の前に差し出す。

ナタリーがそれを視界に入れたのを確認すると、話を再開した。











「我がアリアス一族には代々、嫁ぐと決まったものに真っ赤なルビーの指輪を授ける伝統がありますの。そこで最近、私の指輪が盗まれましたのよ。わたくしがその事を息子に相談いたしましたら、まさかの真実を語ってくれましたわ」










「真実とは、何でしょうか……」












恐る恐る尋ねるナタリー夫人の事を、まるで汚いものでも見るような目をしながら、冷たく言い放つ。













「犯人はフランソワさんらしいのですわ」











アリアス夫人は、手の甲を口元にかざしながら、わざとらしく、残念な口調でそう言った。













「それは…本当なんでしょうか」










「あ〜らやだわ。あなたったら、わたくしの息子を疑うわけですの?失礼じゃないかしら?」









「いえ、めっそうもございません!」










ナタリー夫人は、赤い絨毯に頭を擦り付けながら許しをこう。

そんなナタリー夫人に慈悲の心を向けることなく、アリアス夫人は容赦なく続ける。











「指輪を盗んで既成事実を作ろうとするなんて、ひどいわね〜」










そう言って、アリアス国王に顔を向ける。国王はうん、と頷き、ナタリー夫人とフランソワに、宮殿から立ち去るよう、命じた。

すぐさま護衛の者たちが駆けつけ、泣き崩れるナタリー夫人と、それとは対照的に冷めた目で佇むフランソワを、強引に宮殿から追い出したのだった。

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