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ダービーへようこそ  作者: 葉山インパクト
4/14

いざ、菊花賞

 こんにちは、今回初めて前書きを書かせてもらいます。

 このレースに出てくる馬の血統や騎手を紹介します!


フォルクファイト

父 ディープインパクト

母父ストームキャット

主戦ローラン

 黄金のニックス配合のディープインパクト産駒。逃げ馬として、父譲りのスピードを存分に発揮している。


マルククリスタル

父 ハーツクライ

母父ワイルドアゲイン

主戦辻勝

 某天皇賞馬と同配合。全兄弟ではない。強力な末脚とスピードを武器に皐月賞を制覇。機動力と俊敏性も兼ね備えている。だがゲートにやや難あり。


 馬主席には独特ともとれる雰囲気が広がっていた。この中で次のレースに関係のある人物は何人いるのだろうか。そんな、気休めにもならない考え事はファンファーレの音でかき消される。このファンファーレは夢へのゴングであり、戦いの序曲でもあった。いよいよ始まろうかというゲートインの前、牛窪先生が俺に小声で話しかけてくる。

 「さっきのこと、丸木オーナー、自ら辻さんに作戦の説得をしてたよ。辻さんはいい顔はしなかったけどね、やれることはやるってさ。」

 「そうですか。ありがとうございます。牛窪先生には感謝しかありません。」  

 「お礼は丸木オーナーに言ってよ。南関一の策士と言われた君の作戦を見てみたいってのもあるけどね。ま、すべては3分後にわかるよ」 

 ゲートは全馬スムーズに行われた。ついにゲートが開く。好スタートを切ったの、やはり、フォルクファイト。外目から切り込むようにしてハナを奪う。第一コーナーを回る頃には大勢が決まっていた。マルククリスタルは中段9番手あたり。まずまずのスタートからある程度のポジションを取っていた。そして俺たちの作戦からしてこれはかなり恵まれた展開と言えた。

 「よし、そのままローランがペースを落ち着かせてくれればこっちのもんだ!」

 「え、スローにしてしまってはフォルクファイトのペースになってしまうんじゃないのかね!?」

 「いえ、平均ペース以下、これが我々の作戦を遂行できるかの、まず第一条件でしょう。そしてその第一条件はほぼほぼクリアしてくれると思ってました。ローランがペースを上げるわけないですからね。そして、それによって有利になるのはフォルクファイトじゃない。俺たちの作戦があるからにはマルククリスタルなんですよ」

 1周目のスタンドを通過して、コーナーに向かう。前半1000メートルの通過は63.6秒。スローペースと言っていいペースだ。ローランの仕掛けどころ次第では流れが一気に上がる可能性があるが、その前に手は打つ。勝負は残り6ハロン。仕掛けどころとペース判断を誤らなければこっちのモンだ。向正面に入ると何頭かかかる馬も出始めた。これはスローペースの良い証拠でこちらとしては良いサインだった。残り1800メートルを切って何頭が上がっていく馬がいる。やはりペースが遅いことにみんな気付いているのだ。だがハナを奪うわけでもなく、みんな好位を狙って馬を操縦していく。残り1200メートルを切った。その瞬間、場内から大歓声と共にざわめきが起こる。マルククリスタルだ。9番手あたりから一気に上がっていく。タブーとされる坂の上りでの仕掛け。古くはミスターシービーが犯したタブーは時を超えてマルククリスタルによって再現される。坂の頂上でハナを奪うと最内にぴったりとポジションを取り、第四コーナーに向かう。ここからの直線。辻勝の馬場読みと俺の作戦がハマれば勝てる。行け、マルククリスタル。坂を駆け下りて、最後の直線勝負。内回りとの合流点でフォルクファイトに懐をつかれなければ。そこだけが今回の勝負の唯一の不安材料。もし、最内に潜り込まれては一気にこの勝負が不利になる。ローランはどう判断するか。直線に入って、後続とのリードは二馬身半ほど。ここからはマルククリスタルの皐月賞馬としての資質に全てをかける。駆け抜けろ、淀の直線を。そして凌駕せよ。全ての馬を振り切って。しかし、ローランは最内を選択していた。合流点で内が空いてフォルクファイトも最後の二の足を使っていた。しかし差は縮まらない。のこり400。

 「マルク!残せ!お前は勝たなきゃいけないんだよ!」

 自分でも思わず声が出ていた。それは自分のためか、それとも誰かのためか、思いを馳せた馬に対しての情熱がこの直線で爆発する。押し黙る牛窪先生と丸木さんを横に興奮のあまり自分が何を言ってるかすらわからない。その刹那、大外強襲でピンクの帽子が末脚を伸ばしている。ナイトメアヒーロー。イタリアの勝負師、アンジョリーニ・カルロを背に思わぬ伏兵が躍動する。お呼びじゃねえんだよ。そんな悪夢は。のこり200。独走態勢に入ったはずのマルククリスタルにナイトメアヒーローが襲いかかる。カルロ騎手もバカじゃない。俺と同じ作戦をおそらく考えている。だが勝負師らしくそれを最後の直線に賭けてきた。だが、おそらく俺が見落とした着眼点でこっちの虚をついてきやがった。これはどう決まるかわからない。最後の勝負。

 「クリスタルー!残さんか!粘れ!粘れ!二枚腰見せろ!」

 「そのまま、そのまま」

 牛窪先生と丸木さんもいよいよ声が出る。のこり100。ナイトメアヒーローとの差は半馬身。流石にナイトメアヒーローも手応えが怪しくなってきたか。しかし、じわじわと差を詰めてきている。のこり50。馬体を併せるナイトメアヒーローとマルククリスタル。どっちだ。大勢なんて分からない。そのままゴールへと飛び込む。

 『どっちだーー!!』

 やけにうるさい実況が耳をかすめると、ゴール板を通過していた。ターフビジョンを見ていた感じ、若干マルククリスタルが出ていたような気もしたが断言できない。

 「ハナ差凌いでるよね?勝ってるよね?」

 興奮気味に丸木さんが俺に話しかけてくる。俺も興奮気味に

 「やれることはやりました。あとは勝負の女神がどっちに微笑んでるかですね」

 「俺もハナ差凌いでるように見えるんだけどな」

 牛窪先生、俺、丸木さんが各々好き勝手なことを言っている。

 掲示板に表示される数字は隣に『写真』と書かれて保留されている。ターフビジョンのゴールシーンで見ても正直微妙な感じだ。俺はいてもたってもいられなくなり、小走りで喫煙スペースに向かう。俺の努力と夢が紙一重のところで、逃げていく瞬間を目の当たりにしたくなかった。やけに香ばしい煙は勝敗を占っているようで直視できなかった。ただ肺に入ってくる煙を吐き出して、なんとか落ち着きを取り戻そうとする。

 あと一口でフィルターに火が届くかという時場内からの歓声が耳を貫く。ついに出たか、俺たちの結果が。恐る恐る掲示板を見る。それはとてつもない緊張感と、期待と不安。少しの高揚が入り混じっていた。

 掲示板に表示されていた数字は3が上。一拍置いて歓喜の咆哮とガッツポーズが馬主席に響き渡る。もちろん俺のものだ。

 「よっっっしゃーーーーー!」

 「貝崎くん、興奮しすぎだよ」

そう言って注意する丸木さんの目は潤んでいた。これから表彰式だというのに。だが今はそんな些細なことは全て流せる気がした。もし、財布でも盗まれていたとしても全て許せる気がした。だが、今回は泣かなかった。これから表彰式があるからね。


 第4話をお読みいただきありがとうございました!それでは菊花賞2着馬、ナイトメアヒーローの血統や騎手をどうぞ!

ナイトメアヒーロー

父 ディープインパクト

母父サドラーズウェルズ

主戦アンジョリーニカルロ

 春のクラシックは出走してないが、1000万条件を勝ち上がり、神戸新聞杯3着で出走権を獲得。勝負師、カルロを鞍上に迎え、菊花賞ではその末脚を遺憾なく発揮し10番人気の低評価ながらも2着。今後の活躍が期待される。


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