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深淵鋼鉄式耐爆メイルの自爆姫  作者: 秘剣・絶対悶絶ちゅばめがえし
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朱翼の騎空団


ーードパァッ……‼︎


スティールが掴んだルーザーの首は、一瞬にして消し飛び蒸発した。それは彼の掌から放たれたインビジブルエネルギーが、絶大な力と、極めて高温であるという事を物語る。


ーードチャッ……。


首から下の胴体が、人形のように力無く地面に崩れ落ちる。ぴゅるぴゅると切断された動脈からは赤い血液が泉のように溢れ出ていた。


「ひぃぃぃ……………………‼︎」


仲間の無惨な姿を前に、逃げ出そうとする残されたルーザーの二人だったがーー


ーートタタタタタタタタタ……!


「ワシもいる事を忘れるんじゃ無いぞい‼︎」


ディドバルによって乱射されたマシンガンにより、残った二人も仲間の後を追う事となった。


再び辺りに静寂が戻り、ディドバルとスティールはシャッターを開けて外気と光を取り込む。


「死屍累々だな……。後始末はどうする?」


頭をぽりぽりと掻きながら、死体の山を見たスティールが嘆く。


「裏庭に置いとけば、鳥達が食べてくれるじゃろう。放っておけ」


「鳥葬とはまたエグいねぇ……爺さん。ーーそうだ、レッドハートのメンテを頼むぜ。あと、俺のメンテも頼む」


「フン、高くつくぞい! 座って待っとれ!」




しばらくして到着したドレイクによって、着地の安全を確保されたレッドハートは、ディドバル機械工場へと着陸する。

動力を止めて、団員達もディドバルの住宅へと入り込んだ。


「……じいじ、ただいま」


「おぉ、お帰りラビ。大丈夫じゃったか? 怪我はないか?」


「……うん。平気。 ……じいじの作った鎧だもん。無敵」


「そうじゃ、無敵じゃ! ラビは良い子じゃのう!」


ディドバルは帰ってきたラビの頭をわしわしと撫でた。彼女はまるで尻尾を振る犬のように、少し照れてはいるが、嬉しそうに撫でられている。


「……ラビは、新しい爆弾を貰いにきたの。 ……フラグピン式二つとスイッチ起爆式の……」


「ああ、いいじゃろう、いいじゃろう、在庫用、厳重保管庫にあるから取ってくるんじゃ」


二つ返事でディドバルは、ラビに厳重保管庫の鍵を手渡した。


「ディドバルさん、レッドハートのインビジブル燃料を貰いたいのですが、よろしいですか?」


「ああ、ええぞ。燃料庫の鍵じゃ。必要なだけ持ってくとええ」


さらに彼は二つ返事で、ミアに燃料庫の鍵を手渡した。


「師匠ぉ〜……。僕もお腹ぺこぺこだから、何か食べる物が欲しいんだけどぉ〜」


「デブだから駄目じゃ。デブゴルド。貴様はレッドハートの修復と整備をするんじゃ。一時間以内にのう」


「そりゃないよ師匠ぉ〜……。あんまりだよぉ〜」


ディドバルとゴルドは師弟関係にある。口ではゴルドの事を邪険に扱うディドバルだが、機械技師の才覚に関しては彼の事を認めていた。

その証拠に、弟子を一切とらないディドバルが、唯一認め、抱えた弟子。それがゴルドなのである。


「んーっ‼︎ 地上にっ‼︎ 王子が舞い降りたよっ‼︎ ここはいつ来ても鉄臭いねぇ……。んーっ‼︎ 王子は臭さで鼻曲がりっ!」


「てめぇは今すぐ出て行くんじゃ。このドブ野郎。お前は王子じゃなくて、ドブじゃ」


「ド、ドブ……。ノンノン! ……ノンノンノンだよっ! サー、ディドバル。ドブじゃない。僕はプリンスルークだよっ?」


「あー、わかった。わかった。邪魔じゃから、しばらくどっかに行っておれ。ドブ臭くてかなわんわい……」


「やれやれ……。僕は臭くて鼻曲がりっ! サー、ディドバルはへそ曲がりっ! ……ってね!」


「やかましいわっ!」


ディドバルによって投げられた工具用のスパナが、ルークの腹部にクリーンヒットする。

彼は腹部を押さえながら、ブツブツと何かを呟きながら外へ出て行った。



工場敷地内に停められたレッドハートでは、爆薬の補充を終えたラビによる、『ラビぷれぜんつ・レッドハートぴかぴか大会』なるイベントが催されていた。

スカーレット、ドレイク、ミア、エーリが、ラビのために用意された高い台、その上にそびえ立つ彼女の演説を聞いている。


「……レッドハートをぴかぴかに……お掃除します。 …………みんなでやれば、すごくぴかぴか……」


「……ボク掃除苦手なんだよねぇ」


クリーンモップに気だるそうに寄りかかる狙撃姫ことスカーレット。彼女はラビの演説など気にもとめずどこか遠くを眺めている。


「ワシものぉ、掃除したいのは山々なんじゃがなぁ……刀の手入れがあるんじゃ……」


ゴム手袋をつけられた剣豪ことドレイクは、刀の手入れをしたいと訴える。頭を掻き、視線を下に向けていた。


「私もレッドハートの艇系簿を記入しなくちゃいけないのよ……。ラビちゃんには申し訳ないけど、今週は出費が多かったから……」


白いエプロンとマスクの着用を義務付けられたミアは、申し訳無さそうにラビをチラチラと見る。


「私は眠い。私は寝たい……」


スポンジと洗剤を持たされたエーリだったが、地面に横たわり、熟睡カウントが秒読み段階にはいった。


ーーぐすっ。……ずずっ。……ぐすっ。


「…………みんな、ごめんね。迷惑だったよね……。ラビ一人でやるね……ごめんね…………」


やる気の無いレッドハートぴかぴか大会の参加者達を見て、ラビがぐずり出した。それを見た参加者達は、半ば強制的に結論を迫られる。


「あーーーーーーーーっ! 超掃除したいなぁーーーーーーーーっ‼︎ ボクは今すぐぴかぴか大会に参加しないといけない気がしてきたぁーーーー‼︎」


「刀なんて後回しじゃぁぁぁぁぁぁぁぁいっ‼︎ レッドハートぴかぴか大会の覇者になるのは、このワシ、ドレイク様じゃぁぁぁぁぁぁい‼︎」


「あ、え? わ、私もレッドハートの艇系簿なんて記入してる場合じゃなかったわ‼︎ そうよ! レッドハートぴかぴか大会にエントリーしてるんだったわ‼︎」


「あ、眠……くないかもしれない。私もぴかぴかのレッドハートで、最高の夢心地につくためにお掃除頑張らなきゃ! ……や、やりますかね!」


そしてその後、彼らは二時間丸々レッドハートぴかぴか大会に参加したという。大会参加者達は口を揃えてこう語る。『ラビには逆らえない』……と。



「ラビ、耐爆メイルを持ってくるんじゃ。みてやるぞい」


「……じいじ、わかった……」


ディドバルはラビに深淵鋼鉄アビスティール式耐爆メイルを持ってくるように指示を出す。

いかなる爆発にも耐えられる事を想定し作り上げた深淵鋼鉄アビスティール式耐爆メイルだが、少しの裂傷やヒビ、そんな些細な事で、彼女の命に関わるという事をディドバルは十分に理解していた。


「随分派手にやったようじゃのぉ……」


「……じいじ、ごめんね。 ……お手入れはちゃんとしているんだけど……」


「なぁに、気にせんでええわい!すぐに直してやるぞい」


ぽん、とラビの頭に手を置くと、ディドバルは深淵鋼鉄アビスティール式耐爆メイルの補修に取り掛かった。

金ハンマーの音が鳴り響き、研磨するための機械が叫びをあげる。

それからしばらくして、深淵鋼鉄アビスティール式耐爆メイルの補修も終わり、それを彼女がレッドハートに積み込んでいた時だった。


『朱翼の騎空団、至急艇内へ。繰り返します。朱翼の騎空団、至急艇内へ』


レッドハートの艇外放送が流れる。

その内容は伝えられず、緊急性だけを告げていた。

団員達は皆、艇頭にある操縦室に集合する。操縦室のモニターには、何かの地図が映し出され、それをスティールが頭を抱えて眺めていた。


「洞窟戦闘ってのはなぁ……。さて……全員揃ったか」


コンソール画面からミアが操作を加えると、さらに詳しく詳細地図が開く。


「強奪・殺人常習犯のルーザーチームを、ポイントE地点にて発見、これを私達、朱翼の騎空団が叩こうと思います」


「みんな、頼むぜ。我が団は資金が不足しているからな。民間委託でこいつらの討伐依頼が出てるんだ。報酬もわりかし高い!」


「倒せば高級霜降りバイソンってわけじゃの? 腕がなるのぉ!」


「やったねっ‼︎ ボク霜降りバイソン大好き‼︎ すき焼き‼︎」


『霜降りバイソン』……最高級ランクのアースバイソンで、庶民には中々手の届かない高級食材である。

嫌いな者はいない。と言われるほど万人に愛され、給料日や賞与ボーナスの出たお父さんが、家族に買ってくる夢の食材No.1である。


「ぶひぃ〜! 焼肉でしょぉ〜!」


「……ラビ、ハンバーグ食べたい……」


「あはは! プリンスはプリンスらしく、分厚くステーキでオフコース!」


「私はしぐれ煮なんかが好きよ。甘辛くて」


「私はバイソンジャーキーがいいな。保存もきくし、安心して冬眠できる……」


ーードガァァァン‼︎


作戦会議テーブルにスティールの拳が叩きつけられた。辺りは静まり返り、皆一斉に彼を見る。


「……………………霜降りバイソン丼も忘れんな‼︎ 行くぞぉぉぉ‼︎ ポイントEにインビジブルバースト全開ィィィ‼︎」


浮上したレッドハートは旋回行動をとると、インビジブルドライヴ音を撒き散らし、音にも追い付きそうな速度で消えていった。


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