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深淵鋼鉄式耐爆メイルの自爆姫  作者: 秘剣・絶対悶絶ちゅばめがえし
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朱翼の騎空団


万雷の雷を凝縮し、一気に弾けたような凄まじい爆発音がアースフィルの空に鳴り響く。それは周囲の空気を振動させる衝撃波となって駆け巡った。

爆炎と、どす黒い煙を吹き上げて、空の海を沈んでゆく軍用騎空艇。千切れ雲を突き破り、雲の波紋を描いた後に茶褐色の大地へと墜落した。


「スティール、ラビちゃんが軍用騎空艇の撃墜に成功しました。十一時の方向、座標算出。フラット荒野に墜落」


「よし、ラビを迎えに行け! 全速力だ。急げ!」


「了解。目的地フラット荒野に向けて、レッドハート発進します。ゴルド、エーリ、座標修正をお願い」


「了解だよぉ〜」


「…………了解……」



ーー……。



ーー……………………の子だ。



ーー……お前は、悪魔の子だ。



「…………あ、寝ちゃってた……」


辺りは軍用騎空艇の大破した破片と鉄の塊が四散している。

ごうごうと業火の炎が天へと昇り、巨大な黒煙が柱となってそびえ立っていた。


「……墜落したのが、荒野でよかった……。誰もいないもんね……」


自爆姫デストロイヤーは開閉式の兜を、がちゃりと開けて、自分の任務が無事に終了した事を再認識する。

顔側のプレートを開けた兜から、彼女の幼くあどけない表情、小さな顔が覗いている。

ごしごしと顔に滲む汗を拭き取ると、大地に腰掛け空を仰いだ。


騎空艇特有の甲高いインビジブルドライヴ音が周囲の静寂を切り裂き、褐色の大地に巨影が映し出される。


『ラビちゃん、迎えに来たわ巻き取るからワイヤーケーブルに掴まって!』


艇外放送で騎空艇内からメッセージが発信された。それは甘ったるいような優しいトーンで、母性を音声に表したかのような声だった。

ラビと呼ばれた自爆姫デストロイヤーは、朱色の騎空艇から垂らされたワイヤーケーブルに捕まる。巻き取られたワイヤーケーブルはラビを騎空艇内に収納し、朱色の騎空艇は澄みきった青い空へと帰っていった。


ーーかちん、かちん、ごとんっ、ごとっ、


ラビは深淵鋼鉄アビスティール式耐爆メイルの接続留め具を一つ一つ丁寧に外し、艇内の鉄床へと並べる。


姿を現したのは銀髪ショートカットのサラサラとした髪型に、小さな身体の少女だった。

【ラビ・ストレルヒ】

それが彼女の名前である。今年に入り11の歳を数えた。


彼女は脱ぎ並べた防具をしっかりと拭き取り、錆止めの油を塗り込んでゆく。


「おう、ラビ、終わったか。ご苦労さん! 待ってろ。ディドバル爺さんの所だろ? 送って行くぜ」


「……ありがとう。スティール」


「なぁに、いいってことよ! ディドバル爺さんのとこに着いたら、また連絡するぜ。 ……よければ操縦室内にも顔出してやんな。みんな喜ぶぜ」


「……ん。わかった」


【スティール・ハート】

朱翼の騎空団、団長である。歳は22。赤髪の男で、しっかりとした礼装を着こなしている。

高い判断力とカリスマ性で、団員から絶大な信頼を得ている。


スティールはひらひらと手を振ると、ラビが深淵鋼鉄アビスティール式耐爆メイルを手入れしている部屋を後にした。


「……これで、全部……終わり……」


ラビは鎧の手入れを終えると、呟きながらゆっくり立ち上がる。そして鎧を一箇所にまとめて、綺麗に配置をし直した。そんな繊細なところは彼女の女性らしい部分といえる。

部屋から出た彼女はスティールに言われた通りに操縦室に向かう。隅々まで整備や清掃が行き届いた通路を歩き、中通路、甲板を通ると操縦室の扉を開いた。

そこは強化特殊防弾ガラスが全面に備えられた、見晴らしのよい、団員が集う場所である。


「やあ、ラビ! お疲れ様。そしていらっしゃい!」


「……こんにちは、スカーレット」


「鮮やかな自爆だったねっ! ボクの出番は無かったけど、見惚れちゃったよ!」


【スカーレット・バルトバレット】

女性だが、一人称として『ボク』という言葉を使う18歳。

長い三つ編みの黒髪で、活発な性格である。

また視力が8.0あり、遠距離狙撃を得意とする。そして、こと全ての銃において、団員の中では彼女の右に出る者はいない。端的に言えば団員一の銃火器使いである。普段は、その過剰に発達した視力を抑えるために、視力抑制の眼鏡をかけている。


「……スカーレットは、お仕事無かったの?」


「うんうん。ボクとドレイクはお払い箱! 用済みなんだってさっ‼︎ だからお留守番をしていたんだ」


「……そうなの……? ドレイク…………お払い箱なの……?」


「はっはっは‼︎ そうじゃのぉ! お払い箱じゃ!」


【ドレイク・L・グランリバー】

大きな刀を帯刀する22歳の青年。眼帯をして長い黒髪を結ぶ。居合の名手で、斬鉄すら可能である。スティールと同じく最年長の団員で、何かと頼られる事が多い。


「……ドレイクも…………? ラビのせい……?」


ラビの表情はみるみる内に曇ってゆく。幼いながらに責任を感じているのか、瞳にうっすら涙をうかべている。


「ああっ、違うんじゃ、そういう事ではなくてじゃな…………」


「あーあ! ドレイクがラビを悲しませちゃったよ! ドレイクってば最低だなぁー! 女の子を泣かせるなんて最低だぁー!」


「も、元は主のせいじゃろうが、スカーレット!」


「えー⁉︎ ボクが悪いのー⁉︎ 泣かせたのはドレイクだよー⁉︎」


「いいや、主のせいじゃ‼︎ 主がお払い箱などと…………」


「ーー……ドレイクもスカーレットも…………喧嘩したらやだよ………………」


ラビの一言に、ドレイクとスカーレットは口を閉じてお互いを見つめる。苦笑いを浮かべながら頭を掻くと、ラビに謝罪の意を述べる。


「ち、違うんじゃラビ! わしとスカーレットは仲良しじゃ‼︎ 昔から仲良しなんじゃ‼︎ のう? スカーレットよ!」


「……あ、ああ、うん! そうっ、そうなんだよ‼︎ ボクとドレイクはずっとずっと前から仲良しなんだよー‼︎」


「……………………本当?」

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