初めての村になるはずだった。
【活気づく街の音】【元気な子供の声】【明らかに不自然な二人】
小さな町があった。お世辞にも近代的とは言えない小さな町だ。比較的子供も多く、絵にかいたような平和な町だ。ある青年は町の入り口に立ち、「ここは、アントリアの町です」と言い続けていた。
小店を出す男は薬草を売り、武器屋の青年は鉄の剣を売り、古ぼけた宿屋は50ゴールドで泊めてくれるそうだ。ここは文字通りの初期村。本来はレベル4が妥当なところである。
その村の教会の前の小さなスペースに人だかりができていた。そこにいるのはグラマラスな体の女、ミシアだ。
小遣い稼ぎ程度にミシアはゆく町々でマジックショーを開くのだ。集まった子供はミシアのマジックに夢中であり、集まった男たちはミシアの大きく開いた胸元に夢中である。
胸の谷間からスティックが出た時、男どもの歓声が響いた。
・・・ところで、もう一人の者。そう、レンは一体どこに行ったのか。
よくぞ きてくれた ゆうしゃよ。
わたしは アントリア おうこくの おう。
レン「どうもアントリア王。」
きみの ことは ダラス国の おうから きいているよ。
とても つよい ゆうしゃだそうだね。
レン「いえ、めっそうもございません。」
もうひとり なかまが いるんだったね?
レン「はい。ミシアという女がおります。」
・・・ゆうしゃよ。
レン「はい。」
あんまり きかないほうが いいかもしれないんだけど・・・
あのさ、 ふたりが へんたいだって どういう いみかな?
レン「・・・。」
・・・あ、 その べつに はなしたくないなら むりはしないよ?
レン「アントリア王、貴方は偏見をお持ちですか。」
え?
レン「確かに私とミシアは世間でいう変態なのかもしれません。私は鞭や刃物などで体が傷つき苦痛に悶えながら震える女性の姿を見ることにこれ以上ない興奮を覚えるタチでございます。」
あ・・・ そう。 ずいぶん じしんまんまんに いうんだね。
レン「しかし私はそれを異常と思いつつも受け入れております。そしてそれを受けいれてくれたのがミシアなのです。・・・ミシアにも普通ではない趣味があります。しかし、それによって彼女を悪く言うのであれば私はそれを隠そうと、そう思うわけでございます。」
ふぅん・・・。 まぁ、 わたしは きょうみほんいで きいたから
もし きみが わたしを そういった にんげんだと おもったなら
べつに いってもらわなくて いいよ。
レン「・・・とても英明な王に見えております。我が国の王とは大違いです。」
ダラスおう って やっぱり しんらい ないんだ。
レン「このアントリア国にもやがて世話になるかもしれません。アントリア王、この国で我々が羽を休めること、またここをもう一つの故郷とすることをお許しいただけますか。」
・・・うむ。 よきように するがよい。
あまり ゆたかな まちではないが せいいっぱい もてなそう。
レン「ありがとうございます。」
・・・それでさ、 ミシアさん? の しゅみって なんなんだい?
レン「あぁ、それはですね・・・」
【路地裏】【小さな男の子】【メガネの女】
少年が、女性に手を引かれ路地裏へと向かう。薄暗く、人気のない場所だ。
少年は純粋無垢な瞳で女を見上げる。どこか嬉しそうな女の顔を。
少年は問いかけた。マジックのタネを教えてくれるという話なのにどうしてここへ来たのか?
女は答えなかった。ただただ奥へ向かう。
すると女は立ち止まり、少年の前へしゃがみこんだ。
ミシア「マジックのタネ、教えてあげる。お姉さん、どこからマジックの道具出したか覚えてるかな?」
大きく開いた胸元に、少年は指を指した。
ミシア「うん、そうだね。お利口さん。・・・それじゃあ、お姉さんが教えてあげる・・・」
ゆっくりとボタンに手をかける。少年の目は彼女の胸にくぎ付けである。妖艶に女は少年を誘惑し、そして・・・
響く爆発音。そこにはロケットランチャーを構えたレンの姿があった。
路地裏に大穴が開き、ざわざわと町の人々が集まってくる。壊れた家の残骸の上を乗り越え、レンはミシアへ近づいた。
レン「予想通りだよ。」
ミシア「何が?」
レン「見ての通りだよ。何してた。」
ミシア「んー?べーつにー?」
レン「・・・あのなぁ、この国割とダラスに近いんだぞ?もし勇者一行が性犯罪犯したなんてなったら旅終了なんだよ。」
ミシア「犯してない!私はただショタに新しい経験をさせてあげようと思っただけ!!!」
レン「だから!そういうことをすんなっつってんだ!!」
ミシア「仕方ないじゃない!滅茶苦茶かわいいショタがいたんだもの!!」
レン「仕方なくねぇよ!!」
ミシア「もう!これからだったのに!!」
レン「間に合って何よりだよ!!ダラス出る前に言っただろ!!もう少し離れた土地でやれって!!!」
ぎゃーぎゃーと騒ぎ立てる二人を囲むように集まった人々は見続けた。
そんな不可思議な光景をさらに遠くからアントリアの国王が見ているのだった。
国王は小さな声で「なるほど」とつぶやいた。
そうして国王は性癖というものを踏まえたうえであまりこの町に来てほしくないと思ったのだった。
【喧嘩する男女】【増え続ける野次馬】【ここはアントリアの町ですと言い続ける青年】