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勇者一行は最強で異常でした。  作者: 秋色ヒマワリ
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素敵な旅立ちになるはずだった。

【ファンファーレ】【門の開く音】【二つの歩む影】


王国を守る大きな門が重々しく開いた。そこに、二人の男女が歩み出る。

二人はカジノのディーラーのような紳士的な服装をしており、勇者一行には到底見えない雰囲気だった。


男の方はぼさぼさの金髪でだらしなくネクタイをゆるめ、クマだらけで目つきの悪い目とやたら目立つ背中の二本の筒を背負いながらだるそうに歩いている。


女の方は少しカールのかかった綺麗な茶髪で胸元が大きく開いている。ぼいんぼいんである。彼女に至っては手ぶらであり、メガネをたまに持ち上げるほど手持ち無沙汰な様子だ。



・・・もう一度言うが、彼らは俗にいう「勇者一行」なのだ。

二人だけど、剣持ってないけど、ガラ悪いけど、横に広がって歩いてるけど、鎧なんて着てないけど。


勇者一行なのだ。




彼らは門の先に広がる比較的明るい森の中をただただまっすぐに進んでいく。

RPGでいう「初期レベル上げ用の森」である。


レン「なぁ、食料はちゃんと持ってきてんのか?」

ミシア「一応ね。」

レン「いつもンとこに入ってんのか?」

ミシア「ええ。」

レン「ミシア、飲みモン出してくれ。」

ミシア「何がいいの。」

レン「リンゴ。」

ミシア「はいはい。」


そう言うと、彼女は胸元に手を伸ばし谷間に手を入れた。するとそこから紙パックのリンゴジュースが出てきたのだ。

ごく自然な、よく見る光景である。現実世界に生きる諸君も週に2、3度は見るであろう。ご覧の通り彼らは何の異変もない普通の人間だ。


レン「ありがと。」

ミシア「いえいえ。」


のんきにリンゴジュースを飲みながら二人は道を進む。


・・・そんな中。


森の木々が死角となり、彼らの後ろにいた一匹のモンスターは身を隠しながらその時を待っていた。

鋭い爪をなめながら襲い掛かるその瞬間を今か今かと・・・!!

突然飛び散る肉片。モンスターが目にしたのは自慢の爪がついた腕が宙を舞う姿だった。

その先には、トランプを構えたミシアがいた。モンスターはあっけにとられ、何が起きたのか理解できていない様子だった。


ミシア「悪いコ。そんなに私のお尻が気になる?」

レン「ったく、下心を持っていいモンスターは【規制音】がデカいオークだけだって学校で教わんねぇのか?」

ミシア「嫌いじゃないけどね、積極的なのは。」


レンがモンスターに近づき、その胸元を蹴りつけ倒す、そして背中の筒から一本のバズーカ砲を取り出すとモンスターの顔面数ミリにまで近づけた。

モンスターはパニックになるが、頭を動かせず胸元は押さえられ、自慢の爪はなくもう片方の腕もカカトでしっかり押さえつけられ、一切の身動きが取れない状態であった。

レンは不敵な笑みを浮かべると、ゆっくりと口を開き・・・


レン「十秒、待ってやるよ。その間に謝罪すりゃ助けてやる。・・・じゅーうー・・・」


モンスターは恐怖し、何か声を出そうとするがしょせんはモンスター。言葉ともわからない唸り声がただただ聞こえるばかりだ。


レン「んあ?何言ってんだお前。きゅーうー・・・」


カウントが着々とすすむが、モンスターは抵抗のすべがない。


レン「はーちぃー・・・なーなぁー・・・」


しかし、モンスターも生物である。生への執念があり、懸命に生きようとしているのだ。


レン「ろぉー・・・。」


唐突に、カウントが止まる。あたりの空気、モンスターの動きも全て、止まった。


レン「飽きた。ゼロ。」



響く轟音。砲口からはなたれた塊はモンスターの首とあたりの地盤をえぐりとった。


しばしの沈黙が訪れる。


ミシア「・・・ほんっと、悪趣味。」

レン「よく言われる。だが・・・今回のはつまらんな。」

ミシア「女の子怖がらせるの大好きだもんねぇ。」

レン「うっせ。・・・ま、次に出てきたらもっと楽しむさ。」



辺りからモンスターの気配が面白いぐらい消えていった。


ミシア「・・・ねぇ、気配消えたんだけど。」

レン「そうだな。」

ミシア「ちょっとー・・・どうしてそういうことするかなー・・・」

レン「試し打ちしたかったんだ。勘弁してくれ。」

ミシア「もー・・・昔から本当に変わんないよね。」

レン「そんなことねぇよ。」

ミシア「変わったのは背丈と目つきだけ。」

レン「お前も性格変わんねぇくせに胸ばっかり育ってんだろ。」

ミシア「本当にねー。困っちゃうわよねー。」

レン「揉んだら小さくなるってやっぱり嘘だったんじゃねぇか?」

ミシア「いや、私はまだ信じてるから。これから効果出るのよ。」

レン「みるみるでかくなってるけどな。」

ミシア「一時的なものだって絶対。レンが頑張ればうまくいくから。」

レン「はいはい。」


片手でレンがミシアの胸を揉みしごきながら歩く、ごく平凡でごく普通な空間が広がっている。

怯えて逃げたモンスター達はその二人の後姿を眺めることしかできない。

本来通ることのできない木のモンスターによってふさがれた道も今やただの近道である。


うっそうと茂る森の先には村があるのだそうだ。とても平和で、本来はレベル4くらいの勇者が辿り着く村が。

彼らはその村で何を見るのか、何を知るのか、何をしでかすのか。

【ほっとして出てくるモンスター】【突如鳴り響く重火器の音】【爆破音】【ミシアの声】

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