就職活動
あるところに就職先について悩む若者Nがいた。
周りの友人が次々に就職希望先を決める中、自分一人だけが希望する職場を決めかねていたのだ。
というのも若者はこの職業に対してそもそも良いイメージを抱いていない。しかし、若者に職業を選択する権利はなかった。
唯一、彼に許されたのはどこで働くかを決めることだけであった。しかしそれでさえ彼は決めかねていた。
そんな彼を見かねて友人のSが声をかけてきた。
「おい、N。お前まだどこで働くか決めてないのか?」
「仕方ないだろう、僕はそもそもこんな仕事したくないんだから…」
「そんなこと言ってたって俺たちには仕事を選ぶ権利なんてないんだから諦めろって、それに誰かがやらなきゃいけない仕事なんだ。俺たちがいなければ世界が回らなくなるといっても過言ではない」
「わかってるんだけど…そういうSはどこに就職希望する事にしたの?」
「俺か?俺は病院だよ。忙しいだろうけど安定だろ?定期的に仕事も貰えるし」
「病院か、確かに病院は安定しているしそこまで心が病む仕事もなさそうだね。でもあんまり忙しいのも辛いな」
「じゃあ地域一帯を担当するっていうのは?地域で事件とか起きるまで仕事はないし待遇だって悪くない」
「でもそれじゃあ震災とか殺人事件が起きた時なんかは僕が全部担当する事になるんだよ?気を病んじゃうよ」
「じゃあ高齢者施設なんてどうだい?他の現場よりも心を病まずにするかも知れないよ」
「確かにそうだね、ここでの仕事相手はある程度人生を楽しんだ方たちだから心も楽かも知れない。ありがとうSとりあえず就職希望出してくるよ!」
そうして春から新人死神として働くN氏は就職希望先を決めたのであった。