表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水の精霊にTS転生!   作者: アリエパ
9/74

新たな依り代

 体を磨いたリーシャは、息を飲む程美しかった。ボサボサだった髪は一つの乱れもなく、色も燃え盛る炎のように鮮やかだ。垢と泥だらけだった体はクリームを垂らしたコーヒーの様な褐色で、傷ひとつない玉肌。そして瞳は紅く光り輝いていた。

 幼女から少女になろうとしている肉体は、生命に満ち溢れている。なんかムラムラしてきたぞ。


「おーっ、ふくもピカピカ。」


はっ、いけないいけない。


「そろそろ昼だな。」


 雑念を振り払うために頭を振って、朝の残りを焼き直して食べる事を勧める。

 渇水以外欲求が無くなったと思っていたが、どうなのだろうか。考え込んでいたら、いつの間にか時間がたっていた。日が傾いている。


「ユニエは、ずっとここにすんでるの?」

 

 食べ終わって暇になったのか、リーシャが話しかけてきた。


「へ?あ、ああ。生まれた時からな。」


「ひとりで?」


「そうだ。」


「…さびしくないの?」


「そうは言っても、この泉からは出られん。出られるものなら、出たいさ。」


 今の会話から何か思うところでもあったか、黙り込んでしまった。

 あれ?喉が渇いて来た。そう思った瞬間、衝動が湧いた。どこかに水、無い無い無い。血は、ああ、目の前にあるじゃ無いか。日が沈んで暗くなった中、一つの赤い光が誘蛾灯のように妖しく光っている。水を放つ。捕まえたたら首を


「ユニエ、私が貴女を外に連れて行ってあげる。」


 獲物が何か言った。


「だからーーーー」


 捕まえた。首に…


~~~~~~~~~~

 何かに包まれいる。水?じゃ無い。もっと暖かい何か。温もり、充たされて、何もかも塗り潰すような安らぎだ。ここにいれば大丈夫だと本能が囁く。そうだな、きっと大丈夫。満足だ。


「…!」


 誰かが呼んでいる。だけどどうでもいい。今幸せなんだ。


「..エ!」


 溶けて消えてしまいそう。


「ユ.エ!」


 あっ、やばい。喉渇いてきた。


「ユニエ!」


 目が覚めると、女の子がいた。紅く輝く一つの目。確か…


「リーシャ。」


「ユニエ!良かったっ!生きててくれて!」


 ポロポロと涙が落ちてきて、顔にかかる。それを吸収して渇きが収まる。しょっぱい。血よりは美味しいけど。

 しばらくして落ち着いたのを見計らって声をかける。色々聞きたい事があるけどまずは


「なんで左目が無くなっているんだ?」


 紅い二つの光の内、片方が消えていた。


「全部、全部話すね。」

地面に座って対面する。浮かんでいてもよかったが、何となく目を見て話さないといけない気がした。


「私は忌子なの。エルフは普通金髪碧眼で色白、なのに私は全部違う。

 でもそれだけならまだ良かったかも知れないけど、私は特別な魔法が使えたの。代償魔法って言うんだけど、体の一部を犠牲にして、望みを叶えるのに適したように肉体を変革させるの。この左目はその代償。」


「何を願ったんだ?」


「周囲の人の害意とか、欲望をなくす事。期限は一日だけなんだけど。」


 ああ、それでこの子を殺して、血を吸おうと思わなくなったのか。衝動も消えていたけど、その効果が切れたから一気に強まったのか。何もかも忘れる程に。


「 さっき、何をしたんだ。すごい幸せな気持ちになったんだが。」


 衝動が来てリーシャに襲い掛かったが、あと一歩というところでいきなり意識が暗転して、何かに包まれている感覚を味わった。


「代償魔法を使ったの。ユニエを外に連れ出してあげたいって思ったから。」


「?代償魔法は体を変化させるのだろう?何をどうしたら…」


「貴女が泉から出られないのは、ここが貴女の依り代だからだと推測したの。だから新しく依り代を作れば、泉の外にもいけるんじゃないかなって。それで正解だったみたい。」


 マジで!


「おおぉ!本当だ、出られる!」


 ひとしきり泉から解放された事を味わっていたら、疑問が湧いた。


「そもそも依り代ってなんだ?」


「精霊が自己存在を保つのに必要な物だよ。石や木だったり、この泉だったり、形は色々だけど。依り代からは一定の距離以上離れられないの。だから新しい依り代を作れば、外に出られるよ。」


「新しい依り代を代償魔法で作ったということは…もしかして、お前自身が依り代なのか!?」


「その通りよ。正確には、私の子宮と卵巣だけど。」


「えっ。シキュウトランソウ?」


「子宮と卵巣。もしかして知らないの?子宮と卵巣っていうのは「いや知ってる説明しなくていい!」…そう。」


 どうしよう。聞き間違いがじゃなかった。


「その、なんていうか、いいのか?子供ができない体になっても。」


「大丈夫よ。だって、これからはずーっと、貴女と一緒に居られるんだから。それに…」


 最初はニッコリ笑顔で言って居たのに、最後の方は無表情でブツブツ呟やいて聞き取れなかった。うーん、聞きなおそうかな?でも私もよく独り言言ってたし、良いや。


「ほら、もう夜遅い時間だ。続きは明日にしよう。」


「ふふふ。そうだね、おやすみ。」


 何故か不安を感じる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ