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水の精霊にTS転生!   作者: アリエパ
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本能に身を任せ

 あー。独り言を言う気力もない。もう泉の水は吸収しきってしまい、そこを充たすのは何の足しにもならない、自分の水だけだ。吸収してもしても渇きが収まらない。肺に穴が開いたら、きっとこんな気分になるのかな。

 

 もう既に衝動は来てしまい、ずっと狂おしい程に水を求め続けている。だけどどうにもならない。このまま発狂するのか、はたまた干からびるのか。ぷかぷか浮かんで死を思う。死ぬのは怖くない、むしろこの苦痛から解放されるなら本望ーーー


 ガサガサ


 起き上がるのも億劫で、霧を飛ばして確認する。ああ、ウサギが水を飲みに来たのか。初めてあのツノの生え姿を見た時は驚いたな。その後強そうな犬がウサギを殺して血が 、、、、、、 血、血だ 血がある 血を吸えばいいんじゃないか。この際液体なら何でもいい。渇きが収まるなら何でもいい。

 衝動に支配されていた思考が加速する。どうする、逃げられたらお終いだ。動物は怯えて泉に近寄らなくなり、永遠にチャンスがなくなりかねない。

 今ウサギが飲み、体内に入った水は自分の水だ。内側から殺す?いや、あんな少量じゃ致命傷にするのは難しい。かといってウォーターカッターで即死させられるとは限らない。そうだ、水の中に引きずり込めばいいんだ。そうすれば逃げられない。

 油断しきっているウサギを球状の水の中に閉じ込める。水牢だな。藻搔いて脱出しようとするから、中に水流を発生させて翻弄する。

 逃しはしない。このまま窒息させようかと思ったけど、心臓が動いてないとうまく血抜きが出来ないんだっけ。首を切ればいいのかな。動きが鈍くなって来たウサギの首を狙い、一本の水流を鋭く叩きつけた。痛みに呻いて動きが激しさを取り戻してしまった。しかし傷をつけることができた。

 水の中に少しだけ赤いモヤがかかる。それを見た途端、体が勝手に動いた。水牢の中に手を突っ込み、ウサギを握り締める。傷口に指を差し込み、血を吸収する。


「水を返してもらうだけだよ。」


 痙攣するウサギに語りかける。そう、動物達が生きてこられたのは泉の水を飲んだから。だからこれは、水を返してもらっているんだ。当然の事。

 それにずるい、ずるいじゃないか。人が渇いて仕方がない時に、水を飲んで自分だけ潤うなんて。

 ウサギが冷たくなってきた。でもそんなことどうでもいい。

 今はただ、久しぶりの多幸感に包まれて、蕩けていた。


「ああ、生きてて良かった。」


 こんなに幸せなんだもの。眠気を感じながら、生きる喜びに震えた。



 また寝ていたようだ。衝動が満たされた後は、毎回眠くなる。ふと思い出し手を見ると、カピカピになったウサギだったものを両手で持っていた。


「水より不味かったな。」


 あの時は衝動が満たされた満足感で忘れていたけど、何というか癖のある感じで、たくさんは飲みたくない。


「こんな少量でよく満足出来たな。」


 半日で50L。最終的に必要量はそれ以上増えなかった。それにしても ウサギはそんなに大きくないし、明らかに足りないはずなのに。


「青汁的な何か?」


 なんにせよ、水が飲みたい。



 他の動物に気付かれない為に、ウサギの死骸は地面に埋めた。そこだけ少しぬかるんでいるけど、多分大丈夫だろう。

 一息ついて浮かんでいたら、気がついた。髪が伸びていた。肩までだったものが、背中の中程まで。そして深い青色の髪の中に、幾筋か銀髪が混じっていた。


「進化 なのか?」


 衝動が満たされたら進化する?いや、初めての衝動では輪郭がはっきりしただけだった。


「ある程度成長しないとダメなのか?」


 確かに兆候はあった。二回目は物足りなさを感じ初めて、今回は必要量が増えなくなった。


「出来ることを調べないとな。」


 なんにせよ、今後も動物を狩る必要がありそうだし。

~~~~~~~~

 偶に降る雨を除いて、水は吸収できなかった。仕方がないから、泉の近くにいた動物を襲い、血を啜った。

  知覚能力はさらなる高みに達した。水をcc単位で把握でき、霧を飛ばせばかなりの精度で空間把握ができる。水を操る力は半径約15mまで自由自在に水をコントロール出来るまで成長した。何か計算する時は地面に書いていたが、空中に水を配置して字を書くことができるようになった。

 そして肝心の攻撃手段 ウォーターカッター は、小動物の首を貫通できるようになった。砂利を水に混ぜることで威力も上がった。

 しかし金属の針を持った犬や、他にも新たに発見した岩の鱗を持った大蛇のような、防御力の高い動物は、水牢に閉じ込めてじわじわ痛ぶらないと殺せない。もっと手間がかからないようにしたい。


 そんなことを考えながら、いつも通りぼんやりしていたら喉が渇いて来た。そういえば、ある程度成長した後に衝動を充たすと進化するという仮説は正しいのかな。


「また我慢するか。」


 我慢するのはだいぶ慣れた。またやってみるか。






次回 エルフ登場予定

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