力に満ちて
とりあえず水を吸収しよう。
「おおぉ、すっごい吸い込む!」
手を水に浸すと、これまでは波紋が僅かに広がるぐらいの吸引力だったが、今では小さな渦ができるほどの強さになった。
水を操る力はどうだろうか。試してみると20mぐらいは水が飛ぶ様になった。水量もなかなかのもので、暴徒鎮圧用の放水車ぐらいの威力はありそうだ。
「ウォーターカッターもできるかもしれないな。」
野菜だけでなくから時として鉄まで切断する強力な武器、になるかもしれない。必要性が在るのかどうかはわからないが、物は試しだ。
そう思い試してみるが、てんでダメだった。口径を細くすると威力を出せなくなる。細かい作業とパワーを出すのは同時にはできない様だ。
他にも氷を作ってみようとしたり、蒸発させてみようとしたが、できなかった。そもそも温度の変え方がわからない。科学知識が多少は程度あるから、楽にできるかもしれないと考えていたが、そもそもどうやって水を操っているのかもわからない状態だった。
「先ずは観察だな」
動かしている水をじっと見る。すると中に何かモヤモヤが見えた。水が動くより先に、モヤモヤが動いてるように見える。モヤモヤを動かそうとすると、いつもよりも楽に水を操れ、今まではできなかった細かな動きもできる様になった。モヤモヤ、魔力だな、きっと。
「行け、ウォターカッター!」
ザシュ!と木の枝が切れた。
「やった!他にも色々できることがありそうだな。暇つぶしにもってこいだ。」
色々考えていると、あることに気がついた。今、全裸だ!
他に人もいないし、そもそも羞恥心を感じないが、全裸はまずいな。いや、まずいのか?それは人間の常識であって今の自分は…
そこで考えるのをやめた。まあ服は着よう。着て損はない。服の作り方はよくわからないから、とりあえず体を覆う様魔力を動かしてと。
「こんなものか。ないよりはマシだ。」
だだの貫頭衣だ。水で作っているから透けそうだが、波立たせたり泡を作ったりしてちゃんと隠せる様になった。
~~~~~~~~~~~~
水を吸い、水で遊び、また水を吸収する。ずっとそうやって過ごした。
大量の水を放ち続ける【ウォータービーム】
口径を絞り水を高速で撃つ【ウォーターカッター】
技名をつけて見た。やってることは水鉄砲遊びだが、ウォーターカッターは木の枝ぐらいなら切る(折る)ことができる。結局氷を作ったり、水を温めて沸騰させることはできなかった。自分ができるのはあくまで魔力を含んだ水を動かすことができるだけ。
操れる水は自分が吸収した体の中にある水をだけみたいだ。
今は20リットルぐらいの水を操れる様になった。
自分にできることを把握して冷静になった。さあ、この問題を解決しなければ。泉の水深が明らかに下がっている。