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水の精霊にTS転生!   作者: アリエパ
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閑話 忌子の覚悟

 牢に入ってから1年が過ぎた。あの日読んだ小説の熱は、まだ冷めてはいない。私はただひたすらに本を読み漁り、いくつもの技を磨いた。魔法理論の本の中に、言霊についての記述や火属性魔法について触れられたものが多数あり、目撃者がいないのをいい事に、魔法の練習に力を注いだ。弓矢の練習が出来ないので、腕が下がらないか不安だけど。

 魔物や精霊、魔獣についての本もたくさん読んだ。脱獄の算段だけはついてないけど、エルフの寿命は長いし、気長に考えよう。


 しかし、出獄する日は突然やって来た。衛士が、私を族長の元に連れて行くと言う。

 久しぶりに外の空気を吸う。太陽の光を浴びる。気持ちいい。

 そんなこんなで族長の家に連れてこられた。


「なんの用でしょうか。」


 この人の顔も一年ぶりだ。


「貴様に一つ仕事を頼もう。」


 昔の私なら喜んで引き受けただろう。みんなの役に立てると。だけど、今は違う。新しい目標が出来たのだから。仕事か、なら


「内容と対価次第です。」


 族長は驚いたのか、少し目が大きくなった。


「ほう、言うではないか。だが、残念ながら貴様に拒否権はない。」


「報酬がない仕事ではモチベーションが上がらず、結果に支障が出る可能性があります。」


 間髪入れずに答える。意地でもタダ働きしてやるものですか。


「報酬は無いが、罰則はある。本の差し入れを今後なくす。」


 大人って汚い。


「はあー、解りました。どの様な仕事ですか?」


「聖域は知っておるな。そこにある泉に、巨大な魔力が観測されたと、長老会から連絡があった。最近動物も少なくなって来てな、すでに調査の者を2人送ったが、帰ってこん。化け物が住み着いたと噂になって、誰も調査に行きたがらぬ。そこでお前の出番と言う訳だ。」


 行方不明者が二人も出ている任務を一人でやれと?しかも10歳の子供に?

 ああ、成る程ね。要するにこれは厄介払いなのか。罪を犯した訳でも無いから、殺すのは体裁が悪い。だから牢に入れて自殺する事を期待してたら、いつまでもその様子が無い。そこでこの任務。放棄したら本を読めなくなって救いがなくなるから、自殺する可能性が上がる。仮に逃げようとしても、森はあまりにも広すぎて、子供では一人で踏破出来ない。牢に入って居たからどうしても体は鈍っている。受けたところで、その化け物とかに殺せれるし、万が一成功したら儲けもの。虚偽の報告をしようものなら、それを理由に処刑すればいい。

 やっぱり大人は汚い。


「解りました。武器の所持の許可は?」


「無い。そのまま行け。今すぐにだ。」


 死んでたまるか。


~~~~~~~~~

 今までのことが走馬灯の様に駆け巡る。縁起でも無いな。

 代償魔法を使った。左目が作り変わる。無望の魔眼。動物や、目標の何者かに害を受けない事を願った結果だ。普通は魔眼は目を合わせている間しか効果がないが、この魔眼はどうやら目を逸らしたり、瞑っていてもある程度の効果が期待できる。有効期限は1日だけだけど。

 もう直ぐ泉につく。でも変だな、ところどころ霧が出てる。しかも魔力を感じる。こんなムラのある霧なんてありえないし、明らかに怪しい。霧に触れない様に気をつけよう。

 霧をうまく避けながら泉に近づく。着いた。そこに居たのは


(女の子だ。私よりも幼そう。)


 10歳の私よりも小さな女の子。その体さら強い魔力を感じる。


(水が!?)


 水が浮かんだり、宙を彷徨ったりしている。自然操る力、強い魔力、女性の姿、間違いない、精霊だ!

 これならなんとかなる。精霊は言葉から思念を読み取り、自分の声に思念を乗せることができる。言葉から思念を読み取ると言うことは、言霊の影響を受けやすいということ。演技次第ではこの局面、乗り越えられるかも!

 精霊がこちらを見た。目があった。美しい子だった。何かを憂うかのような瞳。化け物だなんて言葉は似つかわしくない。

 魔眼が働き始めた。そうだ、見惚れている場合じゃない。これでいきなり襲われることはないはず。後は、よし、甘えん坊路線で行こう。


『だあれ?』


 思いの他恥ずかしや。だけど、もう後戻り出来ない。精霊は答えに詰まっている。自分が何者なのか理解してないのかな?だとしたら尚のこと運がいい。私が牢に入る前には、噂なんて流れてなかった。生まれて1年以内なのは確実。まだ自我が発展してない可能性が高いし、主導権を取ろう。


『せいれいさん?せいれいさんなの?』


「そう、私は水の精霊である。」


 自分のことを理解している!?答えに詰まったんじゃなくて、驚いただけだったのかな?


『わたしはリーシャ。せいれいさんのおなまえはなんていうの?』


 これで名前まであったら、何処か別の場所からやって来た、経験豊富な精霊と言うことになる。私の手に負える存在ではなくなってしまう。


「名前はまだない。」


『ほんとう?じゃあじゃあ、私がつけてもいい?』


 ああっ!焦りすぎた!会って間もないのに、名前をつけるのは馴れ馴れしすぎる。名前をつけると言う行為は、付けた相手に対して優越性を発生させる。しかし断られたら、警戒心を高める事になってしまい、魔眼と言霊の効果を振り切られてしまうかもしれない。


「えっ、、、まあ良かろう。」


『やったー。えっとねえっとね。』


 良かったー!だけど、名前を付けさせてくれるなんて幾らなんでもチョロすぎないかな?なんだか心配になって来た。


『あなたのなまえは、、、ユニエ!ユニエだ!』


 私はすでにこの精霊を化け物だとは思えなくなってしまった。ユニエ、それはあの本に出てくる、白竜の名前。

 ユニエ、私が一緒に居てあげる。私が守ってあげる。

 自分で名前を付けたこの子に、母性すら感じる。


『よろしくね、ユニエ!』


 ユニエは何か言いかけたようだったが


「ああ、よろしく、リーシャ。」


 ふふふ、名前を呼ばれることが、こんなにも嬉しいなんて。




リーシャはずっと友達が居なかったので、ちょろい子になってしまっています。

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