閑話 忌子の理想
牢屋は薄暗い。本を読むのも苦労する。
「本当は魔法理論とか、魔物についてとか、役に立つ本が欲しかったんだけどな。」
私はいずれ外に出てやろうと企んでいた。まだなんの計画も無いけど、出た時の為には知識が必要だと思うし。だけど、貰った本には小説だとか、歴史書のような本が多く混じっていた。次に補給が来る時に言っておこっと。しかし、小説なんて読んだことなかったな。まあ物は試しだし、読んでみようかな。
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私は一冊の小説にどハマりした。
「ううう、こんなのあんまりだよー。グスッ、可愛いそうに。」
ああ、なんでみんなわかってあげられないんだろう。こんなにいい子なのに。
小説のタイトルは「白竜と少女」。
貧しい農家の村娘の主人公が、森に食べられる物を探しに行くと、1頭の白竜に出会う。食べられてしまうと怯える主人公だが、実は白竜はとても心優しい性格で、少女に背の高い木になっている果物を落としてあげる。そして交流を深め、次第に絆を結んでいく。ある日、少女は白竜に愚痴るのだ、村は貧しく夢も希望もないと。いつか世界で一番高い場所から世界を眺めてみたいと。それを聞いた白竜は、自分が君を背中に乗せて飛んでやろうと言う。喜ぶ少女は、何かお礼をしたいと思い、何か欲しい物はあるかと尋ねる。しかし白竜は何も欲しがらない。困った少女は、思いついた。あなたが空に連れて行ってくれるのなら、私はあなたの欲しい物がどこかにないか、一緒に探してあげると言う。白竜は笑って、探すだけではなく、手に入れるのも手伝ってくれよと頼む。そうして少女と白竜は、いつか旅に出ようと約束するのだ。
次の日、魔物が村を襲い、それを救おうと白竜が魔物と闘う。しかし村人たちは魔物が来た次は白竜が襲いに来たと勘違いする。村人たちは白竜を攻撃する。少女はそれを止めようとするのだが、間に合わなかった。涙し謝る少女に、白竜は告げる。「空に連れて行ってあげられなくて、ごめん」と。
私は白竜に感情移入してしまった。何も悪い事をしていないのに虐げられる。私だって、集落のみんなに認められたいと思っていたし、努力した。自分で狩りをしたのも、自分も役に立てると、言いたかったのだ。
だけど、白竜はまだ幸せだ。死んでしまっても、自分の事を理解し、涙してくれる人が一人はいるんだから。
「私にも、いないかなー。」
白竜が羨ましい。
どうにもならない事を思っていたら、一つの考えが浮かんだ。
「私が理解して、涙する立場になるんだ。」
私のように誰からも理解されない人がいたら、私が理解するんだ。私が泣くんだ。
主人公の少女の名前は、リーシャ。
「今日から私はリーシャ。私の名前はリーシャ!」
白竜は最後には死んでしまった。
理解するだけじゃだめだ。泣くだけじゃない。私が守るんだ。
私にも、夢が出来た。
閑話が思ったよりも長くなりそうです。後3話ぐらい。