天啓と目標
主人公は興奮すると馬鹿になります。
ムラムラしたことは、聞いたらまたそうだなつつかれそうだな。自分で考えるとするか。霧に関してはそのうち聞くか。今は水を飲む事だけが楽しみだ。
しかし、ここともお別れか。いつか帰って来る日が来るとしたら、その時までに雨が泉を満杯にしてくれると期待しよう。
実験用に溜めていた水を吸収する。体の中の水は、狩りに使ったりリーシャを洗う事に使ったりして少し減ってしまったが、まだまだ4500Lは残っている。初めて水を吸収する所を見たリーシャは目を丸くして言った。
「そうやって飲むの?」
手から吸収する姿を見て驚いている。
「体中どこからでも出来る。飲むというより、吸収だな。」
全部吸収し終わったら、泉の底に放置していた、服や弓矢といった武器が出てきた。
リーシャに渡しておこう。そう思ったら
「ねっ、ねえ、もしかしてだけど、あれだけあっても水は足りないの?」
声に少し焦ったような響きがある。珍しい、慌てているのか?
「これは一度吸収した水だ、また吸収しても足しにはならん。半日で…」
30Lと言おうとしたが、単位は伝わるのか?他に伝え方は、、、確か成人に必要な水は1日で2,3Lぐらいか。
「水なら半日で、大人が一日で飲む量の10倍以上。血なら、そうだなウサギ2,3羽だな。」
リーシャはほっとした顔になった後、なにやら悪そうな表情をしている。もしかして血で済まさせようと考えているのか?
「言っておくが、私は血ではなく、水が飲めると聞いてお前についていくのだからな。」
釘を刺した。
「心配しないでいいよ。この近くに小川があるから、そこに行けば好きなだけ飲めるよ。」
「ならば早く行こう。水が私を呼んでいる。ああ、これ服と武器だ。さあ準備は整った、いざ行かん。」
テンションが上がるな。
「その前にいくつか確認しない?お互いの能力とか、何が出来るのかとか。」
何を悠長な事を、こちらはだいぶ喉が渇いてきたとゆうに。
「ならん。先ずは水だ。水を飲まないとおちおち考え事もできん。」
「はいはい。じゃあ付いてきて、こっちだよ。」
ふよふよリーシャの周りを漂いながら付いていく。そして
「水だー!!」
はしゃぎながら川に突撃し、水を吸収する。
ああ、美味い!血よりよっぽど美味い!
ひと段落して落ち着いたら、リーシャがこちらを微笑ましそうに見ていた。
「…なんだ。」
「別に〜。可愛いなって思っていただけだから。」
日頃からリーシャの前では、威厳のある言動を心がけてきたつもりだったが、ついつい素が出てしまった。何か言わないと。
「水が美味かっただけだ。」
「ふふ、わかってるよ。」
くっ、リーシャの目が、欲しかったプレゼントを貰って大はしゃぎしていたら、ふと我に返って恥ずかしくなり、ついつい強がりを言ってしまった子供を見るような視線だっ!!
なんとか尊厳を回復しなくては。こうなったら奥の手だ。
「リーシャ、今年で幾つになる。」
「?10歳だけど。」
勝った!前世も含めば、こちらの方が年上だ!
余裕の表情で言い放つ。
「リーシャ、よく聞け。私の方が年上だ。お前よりお姉さんなんだぞ。」
「クスッ、そういう事にしといてあげる。」
ああ、母性を感じる。ダメだ、これ以上は墓穴か。手遅れかもしれんが。
もういいや。久方ぶりの水を味わおう。
じっくり吸収しようとしたら、違和感を感じた。さっきはテンションが上がりすぎてて気付かなかったが、泉の水と何かが違う。詳しく分析してみよう。
うっ、なんだこの情報量は。今までは不純物ががあるか否か、そしてその寡多しかわからなかったのに、何がどれくらいあるかよく分かる。んん、だいぶ慣れてきたな。土、魚ぬめり、苔の胞子、動物のにょ…
ザバァ
「よし満足だ。」
「もういいの?まだそんなに飲んでないんじゃない。」
「いいんだ。もう、いいんだ。」
知らない方が幸せな事は、いっぱいある。
「ふーん。私も喉が渇いてきたし、飲もうかな。」
「待て!早まるな!」
慌てて止め、自分の水を出して分析する。不純物、無し、純水。これなら大丈夫だな。
「これを飲め。」
水球をリーシャに突き出す。
「なんで?」
「悪い事は言わない。こっちを飲んだ方がいいぞ。」
「ん?わかったよ。」
はー、これから吸収する水、全部分析していったら一滴も飲めなくなりそう。うん、分析はあまりしない事にしよう。気にしたら負けだ。うん。
大きな決断をした。
「あっ、雨だ。」
呟きにつられて空を見上げる。上は木の葉で覆われているが、隙間からポツポツと降って来る。ついつい分析をしてしまう。は!今しがたしないと決めたのに!非情にも結果が返って来る。うわー、理解するのが怖い。
戦々恐々としていたら、驚きの結果が返ってきた。火山灰、塵などの粒子が極小で存在。ほぼ純水。
吸収すると、美味い。川の水より美味い。
さっきの違和感は不純物が多く含まれていたから感じたのか?血が不味いのは色々な赤血球とか白血球とか混じっていて、純度が極めて低かったからなのか?
きっとそうだ。純度が高い水ほど美味いんだ!
「雨だ、、、雨を降らせればいいんだ!」
美味い水を吸収するには、雨を降らせられるようになればいいんだ!
「リーシャ、私は決めたぞ。天気を、私は天気を操れるようになってみせる!」
「えっ、そう。頑張ってね。」
お前は何を突然言い出すんだ、と言いたそうな顔だ。
「お前に夢はあるか!!」
なんか変なテンションになってきた。リーシャは虚を突かれたようにキョトンとして、考え始めた。
「今は…ユニエと一緒に居られれば、それでいいかな。」
なんともまあ慎ましい願いだ。
「もっと大きな夢はないのか!」
私が天気を操るなんて壮大な夢を語ったんだ、張り合いがないじゃないか。
「…ないよ。そんなのないよ。」
なんだか弱きになってるみたいだな。ここは年上の私が、気合いを入れてやるか。
「ならば私がお前の夢を探す事を手伝ってやる。だからお前も私に協力しろ、リーシャ!!」
隣に降り立ち、手を差し出しす。
「握手だ。これから共に歩んでいこうではないか。」
決まった。すごいかっこいいぞ、今の私。これでリーシャも見直すだろう。
リーシャは感極まったようにこちらを見下げ、、、身長が低いと格好がつかないな。
「わふ。」
「ありがとうユニエ、ありがとう。
ずっと、ずっと一緒に居ようね。私から、離れないでね。」
抱き着いてきた。握手のために差し出した手を彷徨わせ、結局こちらからも抱きしめる事にする。
リーシャを安心させてやるか。
「ああ、ずっと一緒だ。」
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「先ずは街に行ってみよう。情報収集だ。」
照れ臭さを振り払うように告げる。
「そうだね、じゃあ、お互いに出来る事とか確認しようよ。今度こそ。」
「相わかった。私が出来る事とは水を操ってーーーーー
誰かと共にに生きるのも、悪くないかもな。
次からリーシャ目線で閑話を数話します。
純水は特段体に悪いという訳ではないと、筆者は思っております。