気になるあの子
前話を改定しました。リーシャの最後から2番目のセリフと、主人公のそれに対する反応です。
とりあえず、自分のことだけでもはっきりさせとこう。
自分の姿に変化は無い。前回の進化からだいぶ経つし、衝動を充たしたのだから何かあっても良いのに。
力はどうだろう。色々試したが、あまり変化して居なかった。
「そういえば、どうして衝動が満たされたんだ?」
リーシャの子、、、ゲフンゲフン!リーシャが新しい依り代になったからって、それだけであんなにも充たされるのか?リーシャが生きているんだから、血を吸収した訳でも無いし。
なんでわざわざ幼い言葉遣いだったんだ?あれ全部演技だったのか?
代償魔法ってのは、凄そうだな。害意や欲望を無くすか、、、渇きが失せたのはわかるけど、ムラムラしたのは対象外なのか?
片目を代償にしてまで、この泉に来たのは何故なんだ?いや、自分の事を忌子と言っていたな。もしかして、追い出されたのか?
あの左耳も代償魔法で無くなったのか?
霧のセンサーをどうやって抜けたのか?
「わからない事だらけだな。」
リーシャのことはもちろん、自分の事さえよくわからない。精霊とは何か。本当に自分は精霊なのか。
悩みの種は、泉の近くで寝ている。渇水の欲求が無くなったあの一日、この子と共にいる時間は心地よいものだった。しかし今となっては
「水さえあればそれで良い。」
喉が渇いて来た。目の前にはあまり美味しくは無いけれど、渇きを潤すには充分な獲物が、、、おっといけない。我慢出来な訳でも無いし、何か動物でも狩るか。ついでに明日の朝ごはん用に、捕まえてお てやろう。この子には健康でいてもらわなくてはならない。私の依り代なのだから。
「外に出れば、水を飲めるよな。」
涙も血よりは不味く無いが、やはり水の方が良い。久しぶりのご馳走に思いを馳せ、夜を明かした。
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朝ごはんを食べ終わったリーシャに、全部の疑問をぶつけた。
「ムラムラしたの?」
第一声がこれである。ずっこけそうになった。正直に言い過ぎたか?
「ふふふ、そっかぁ。私にムラムラしたんだ。」
「何度も言わんで良い。で、答えは?」
何故か嬉しそうにしているリーシャを問いただす。
「わかってるよ。順番に説明するから。先ずはなんで依り代が私の子宮と卵巣になっただけで、充たされて、安心感を感じたのかってことよね。」
女の子があまりその様な単語をポンポンと発するのは如何なものか。今はそれどころでは無いが、いずれ注意しなくては。
「そうだが、、、安心感なんて言ったか?」
「違うの?」
違く無い。確かに安らぎというか、何というか。
沈黙を肯定と受け取ったようだ。
「ね、そうでしょ。多分それは、私の子宮の中に包まれているように感じたんじゃない?それと羊水とかそんなかんじの物を吸収したから、満足も安心も出来たんじゃないかな。
ふふふ、あはははは。これだとユニエは私の娘になったようなものね。ママって呼んでも、良いんだよ?」
え、何が起きたの。かつて泉から出ようとした時と似て、体が動かない。
リーシャは凄惨な笑みを浮かべて、愛おしそうに自分の下腹部を撫でている。話題を変えないと。まごつく口を必死に動かす。
「なっ、なるほどー。じゃあ、次行こう、次。えーと、何で幼い言葉遣いだったんだ?」
「それについては、先に私の能力について説明した方がいいかな。ある日ふとした事で、大怪我しちゃたの。それを治すために左耳を代償にしたんだけど、エルフにとって耳はとっても大事な場所で、種族の誇りと言っても過言ではないの。代償魔法は重要な所を犠牲にする程効果があるんだけど、耳を代償にして起きたことは、傷を癒すに止まらないで、私に高い生命力と自然治癒力、そして大きな魔力を与えたの。言葉に魔力を乗せて言霊にすると、他者に影響を及ぼせるんだけど、甘えた言葉遣いでそれをすると、庇護欲を掻き立てることができるの。」
やっぱり代償魔法ってのは凄いんだな。
「この泉に来た理由だけど、まあていのいい厄介払いかな。ほら、ただでさえ忌子だったのに、耳まで無くなって、しかも妙な力まで持ってる。そりゃあ捨てたくもなるよ。」
まるで他人事だな。
「そこに来て、聖域に異常が発覚して、その調査に派遣された人は戻ってこない。化け物が泉に住み着いたって噂が流れて、誰も再調査に行きたがらないもんだから、死んでも問題ない私がその任を命ぜられたって訳なの。」
「成る程。だからお前は目を犠牲にして、私から害意を無くし、幼い言葉遣いで私を惑わし、身を守ろうとしたのか。」
何となく察しはついていたが。化け物とは失礼だな。まあ、エルフを殺したのも動物を狩ったのも、確かに私だが。
「惑わすって、せめて誘惑って言ってほしいね。
、、、 やっぱり、調査員や動物を殺したのは、貴女なの?」
誤魔化すか?いや、ダメだ。これから共にいる時間は長くなるだろうし、本当の事を話すべきだ。
「そうだ。私が殺した。」
「何の為に?」
間髪入れずに質問が来る。顔は無表情だ。意図はなんだ?
「渇きを充たす為だ。」
「渇き?」
「ああ。渇いて渇いてしょうがないんだ。半日も水を飲まないと我慢できなくなる。だから最初は泉の水を飲んだ。だが水を飲み尽くした時、もう私を潤してくれる物はどこにもなかった。だから血で我慢する事にしたんだ。」
「血の方が、いいの?」
リーシャは相変わらず無表情のまま質問して来た。
「出来れば水が飲みたい。血は喉越しというか後味というか、、、とにかく水の方が好きだ。」
リーシャはなんの反応もしない。どうしたものか。緊張したら少し渇いて来たな。
「分かった。なら、私が貴女に好きなだけ水を飲ませてあげる。それが無理だったら例え血でも。だから、私か「マジ!?やったー!」えっ、ええ。だから、私からはな「じゃあ早く行こう!さあ早く!」、、、」
嬉しいな。動物でも狩ろうかと思っていたが、少しぐらい我慢しよう。楽しみだな。
そうだ、どうやら水を吸収する事に協力してくれるようだし、これからこの子の面倒を見てあげるか。前世の年齢も合わせたら多分私の方が年上だろうし。、、、さすがにエルフだからって、この外見で50歳ってことはないよな。まあ、とりあえず
「リーシャ♪」
「なによ。」
「これからよろしく♪」
「はあぁ、しょうがない。よろしくね、ユニエ。」
あっ、ムラムラした理由と霧の事、結局聞き忘れた