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後悔先に立たず

作者: ついしょ

 実際のところ、よく考えてみると「あの時こうしておけばよかった」と思うことは多いはずだ。後悔先に立たずとは言うが、本当にそのとおりである。

 後悔するとわかっていても、あるいはわかっていなかったとしても我々人間はしなければならないことを先送りにする事が多い。それはテスト勉強だったりレポート課題だったりと多岐に渡るが、

 先送りにした問題に直面したとき、もっと早くからしておけばよかった。あのとき済ませておけば良かった、と考えるのである。

 こうなるとわかっていながらも、我々、というか僕はこれを繰り返すからたちが悪い、いやどっちかって言うと頭が悪い。学ばないし、反省もしていないように思える。

 そして人間は懐古する。あのころに戻りたい、あのときにああすれば、あれができたこれができたうんぬんかんぬん。年をとった老人が「わしが若いころは~」社会人が言う「学生に戻りたい」というように。

 そんな大多数の人間に倣って僕も懐古させていただこう後悔させていただこう。

「あ~高校に戻りたいなぁ!」僕は心の中でそう叫んだ。


 僕は今就職活動を間近に控えた大学3年生である。3年にもなると大学にも当然慣れ後輩もでき、手を抜いていい授業もわかるようになるし、授業の位置取りだって難なくこなせる。

 そんな僕は今絶賛後悔中であった。

「高校生ってやっぱり最高だわ」

 学生がたむろする自由なスペース通称学生ホール。

 そこはキャンパスがビルであるうちの大学の一階に位置しており、大きい机を囲むようにいすが置かれていて、そのセットがいくつか、整然とおかれている。

 その向こう側には掲示板があり授業の情報だったり、生徒への連絡だったりが張り出されている。二階以上に行くためにはその学生ホールを通る必要があるので人通りは激しい。

そんなところで僕は一人そうつぶやいていた。

 高校生最高。そう考えるように至った経緯は簡単である。高校のころから読んでいたライトノベルの新刊を読んだからだ。

 高校生だった当時の僕は、大多数のライトノベルの主人公たちと同い年ないし、かなり近い年齢だったわけで、高校でしかできないことというものをわかっていなかった。人間とは失ってからその尊さに気がつく動物である。BY僕。

 実際そのとおりなのではないかと僕は声を大にして言いたい。高校は楽しかった。大学がつまらないというわけではないが、決定的に何かが足りない。それはわかってる。青春だ。

 大学に青春を求めるのは間違っているのかもしれないし、間違ってないかもしれないが、明らかに青春できていない。大学の、しかも三年生になってから青春を求めるのはお門違いかもしれないが、欲求は正直だ。

 高校に戻ったからってライトノベルの主人公よろしく青春ラブコメができると思っているわけではない。それは過去の僕が実証している。グッジョブ過去の僕。

 しかしそれはバットジョブに他ならない。なぜもっとラブコメしなかったのか、ハーレムを作れとまでは言わないしそれは流石に酷ってものだろう。

 しかしせめて彼女の一人くらい作っておいたらどうなのか、高校生だった僕には「大学生のお前になぜ彼女がいない」と返されるかもしれないがそんなことは知ったことじゃない。お前の努力不足だと返そう。

 結局のところ自分の努力不足が原因でこんなに悶々としているのだからぐうの音も出ない。

 就職活動を来年に控えた僕はもう、余命一年という表現がぴったりだ。実に高校生に戻りたい。口癖になるくらい高校生に戻りたい。

 頭では理解している。戻れないことはわかっているだからこそ僕はそれを声に出す。

「高校生に、戻りたいなぁ……」

「戻ってみる?」

僕の言葉に返事をするかのように聞こえた声に振り向くと、女の子のような姿が見えた。

その瞬間僕は光に包まれた。

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