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第三話

ハッピィニューイヤー!!

まだまだ始まったばかりの小説ではありますが、どうぞ今年も宜しくお願い致します^^




 次の日は宿屋の主人に図書館は無いかと聞き。

 この“リブルーラ大図書館”にやってきたと言う訳である。


 昨日の回想を思い出していると、頭痛が治まったのを確認し、調べ物を続行していく。

 

 この都市に関する情報の他にも、貨幣価値に関しても調べた後だ。

 アリーシャの世界と似た感じであり、混ぜ物をした共通銅貨“ツェニー”が最低硬貨。

 それが50枚で次の硬貨、同じく混ぜ物をした共通銀貨“スーリヤ”。

 次にスーリヤが20枚で混ぜ物をした共通金貨“フェニオール”。

 最後に庶民ではそうお目に掛かる事は無い魔貨“ズイーダル”、魔物から得られる結晶体。

 その中の高純度結晶を特殊な処理で硬貨状にしたものであり、これ自体に大きな価値が存在する。

 これはフェニオール100枚に相当し、大きな金額が動く時に使用される。言わば取引用の貨幣とも呼ぶべき物だ。



 一般人の月の収入までは分からないが、ざっと調べた物価からある程度余裕を持って使っても。

 10日以上は現状の金額でも保つだろうと言うのは、アリーシャの見解だ。

 尤も、その場合は武器の購入が出来なくなるだろうが……

 今度は能力や魔法、それに魔物なんかの資料を探そうと立ち上がる。

 が、先の調べ物に関しては楽に見つかったのだが、今度は場所が分からない。



 先の書物に関してだって、目立つ所に置いてあった為に見つかったようなものだ。

 元来図書館など来ない性質であるアリーシャだ。しかもどうやら、本の収納方法が幾分異なるらしく。

 これは司書に尋ねた方が早いかと思案したところで――



「何かお困りでしょうか?」


 女性の声が背後から響いた。

 振り返れば、アリーシャより長い尖った耳を持つ、ウェーブ掛かった金髪が特徴的な、ややアリーシャより背の高い女性が佇んでいた。


「実は……」


 折角だと、幾分申し訳ない気持ちでかくかくしかじか、ついでにうまうまと事情を話す。


「成る程。それでしたら……こちらと、そしてこちら。後はこれなんて如何でしょうか?」



 そう言ってにこやかな笑みを浮かべる女性の手には。

 “冒険者の基本”“魔法の秘密”“魔物の生態系”と銘打たれた三冊の本が抱えられている。

 その手早さから間違いなく司書。あるいは常連客なのだろうと検討を付け、アリーシャは礼を告げる。



「いえいえ。冒険者を目指すなら頑張って下さいね」



 何か勘違いをしたのか、素敵な笑みを浮かべて女性は立ち去っていく。

 礼を告げたとき、耳が嬉しそうにピコピコ動いていたことから機嫌でも良かったのだろうと結論。

 元の世界ではそう多くは見られない程度には容姿の整った女性であっただけに、アリーシャの気持ちも幾分軽くなる。

 何となく鼻歌を小さく歌いながら、早速三冊とも抱え近くのテーブルに座り込む――




 昼食も忘れて没頭すること数時間。

 あらかた必要な部分は読み終わり、覚えておくべき部分だけを反芻していくアリーシャ。

 まず、この世界では“冒険者”と言う職業がポピュラーだと言うこと。

 語弊があるが、冒険者と言う職業がある訳ではない。

 魔物を退治したり、“ダンジョン”を探索する者を総称してそう呼ぶのだ。



 そして、魔物は外界にも存在するのだが、比較的外界のは弱く気性が穏やかな種が多いらしい。

 無論何事にも例外はあるらしいのだが……

 また、魔物を倒すことで色々なアイテムが手に入ったり“経験値”と言う、命の源のような物が溜まる。

 これが一定量を越えるとレベルアップと言う現象が起き、あらゆる“パラメータ”が上昇していくのだ。

 このパラメータと言うのは、ステータスにあった――



 “体力”。生命力の強さであり。これが高いと疲労を感じ難くなったり、強力な一撃に耐えられる。

 “筋力”。そのまんま筋力の強さ。高ければ対象への物理的ダメージが上昇する。

 “敏速”。肉体の敏速さ。高ければあらゆる行動の速度が上昇する。速度に応じて思考速度も上がったりなどなど。

 “器用”。そのまんま器用さ。様々な習得関係に影響したり、作成などの判定にも影響。また、行動関係にも影響を与える。

 “魔力”。これが高いと相手に与える魔法的ダメージが上昇。筋力の魔法バージョン。

 “精神”。これが高いと精神的干渉を受けにくくなる。また、魔法使用時に使う精力の量に影響。

 “運”。そのまんま運。ドロップ品質、その他様々な事柄に影響。レベルアップで上昇しない。

 “魅力”。容姿を含めたあらゆる総合的な魅力値。良し悪し含めて行動に影響を与える。上昇し難い。



 と書いてあった。

 かなりいい加減な感じではあったが、確かに運や魅力なんてそう言葉には出来ないだろうと納得。

 また、成長性に関してもS・A・B・C・Dの五順で、その能力値の伸び代を表していると言うのも判明。

 なお、アリーシャに関しては上記を上から、A・S・S・A・D・A・A。

 運はレベルで上昇しないので省かれている。魔力に関しては寧ろ無し。そう言った方がいいだろう。

 なお、一般人でCからBと言う事を考えれば異常とも言える成長性だが、プレイヤーは軒並み生前の生き様で補正が掛けられる為、常人より伸び代が高い事が多い。

 筋力や精神に関しては、種族の恩恵にもよるのだが、今のアリーシャの知る所ではなかった。

 


 また、成長性とは目安であり、同じAだからと言って同じような伸びと言う訳でもなく、揺れ幅と呼ばれる乱数が絡んでくる。

 この乱数を高水準で維持する要素の一つが“運”だ。

 平均的な運はC。Bでラッキー野郎。Aともなると神に愛されている、そう呼べるレベルだろう。

 アリーシャの運が高いのはあの神の影響でもあるが、大部分は“帰還のアリョーシャ”。

 あの二つ名が関係している。彼が様々な戦場を片目だけで生き残ってきたのは、実力だけではなく、類まれな運もあった。

 それがこの世界のパラメータにも大きく影響を与え、あの神の悪戯で本来ならBのところをワンランク繰り上げられた訳である。



「と、なると……やはり戦や冒険者として生計を立てるのが一番か?」

 

 

 そう呟くと、黙々と冒険者関係の書物に目を通していく。

 この世界、特に冒険者は智より力を求める傾向が強く、アリーシャのように調べ物をする者は存外に少ない。

 司書やちょっと寄った人々に容姿と相俟って好奇の目で見られていたのだが、視線と言うものに慣れているアリーシャにとっては気になる程のものではなかった。

 


(調べれば調べるほど、この世界はどうなっているのか摩訶不思議だな……)



 取り敢えず判明したこと。

 それは冒険者になるには登録を行う必要性があると言うことであり、このリブルーラでも行えるらしい。

 そして冒険者の肝とも言える“ダンジョン探索”。これに関しても無論目を通した。

 アリーシャの呟きも、このダンジョンと言う概念が不可思議であったからだろう。

 この世界にはダンジョンと、そう呼ばれるものが存在する。例えば洞窟、塔、神殿、森、砦、遺跡などなど……



 種類は豊富で、階層もバラバラである。

 また、ダンジョンには攻略後に消えるものと、そうでないものの二種類が存在している。

 前者はインスタント型ダンジョン。後者を不思議なダンジョンと呼ぶ。

 大きな差異はないのだが、前者よりは後者の方が階層が深く、広い場合が多い。

 また、前者は一組のパーティ以外侵入出来なかったり、何か条件が付いていたりする場合がある。

 噂では世界のダンジョンの数は一定数で落ち着いていると言うが、人口数百億を越え、その広さも膨大なこの世界ではその真相を知ることは不可能に近いだろう。



 アリーシャが驚いた事はそれだけではない。他にもこの世界には“神”と呼ばれる存在が居るらしいことも原因だ。

 そして冒険者はこの神を一柱だけ“信仰”する事が出来るという。

 各神にはそれぞれ望む行動や“献呈品”が存在しており、その功績如何では様々な報酬や恩恵が得られる。


 有名な神からマイナーな神まで、あるいは異世界の神など。

 様々な神がこの世界に干渉しており、恩恵も報酬も未だ全ては解明されていないどころか、半分以上は未だ暴かれていない神々が居ると言う。

 それら信仰は神の力となり、また、人の行動は神達の目を楽しませる。ギブアンドテイクなのだ。




 ――その後、日が暮れる直前でようやく満足いく知識量を得たアリーシャは図書館を後にする。

 都合の良い事に、記憶力に関してこの少女の肉体はなかなからしいとアリーシャは満足していた。

 宿屋に戻る前に屋台で串物を数本買い、消費したカロリーを補っておく。

 豪快に肉のみを串に刺したそれは、味わったことのない何かと言えば牛に近い味、それに特製のタレが絡みアリーシャの胃袋を慰める。

 暫くすれば宿泊が集う地区に進み、自身が泊まっている宿屋“安らかなる亭”が見えてくる。




「おっ、帰ってきたのかい。晩飯は今から3時間程は先になるぞ」

「了解した」



 宿屋に戻れば入り口のベルが鳴り、カウンターの奥、厨房らしき場所から主人が顔を覗かせ告げる。

 それにアリーシャが受け答えを返し、そのまま宿の部屋へと引き上げていく。


 ――ガチャリ……


「ふぅ……さて、と。次は武器を何とかしないとな」



 部屋に入り、そのまま椅子に腰掛けたアリーシャが呟く。

 そのまま久方ぶりの書物による目の疲れを暫し癒した後、コミュニターを起動させる。

 書物から学んだ知識どおり、そこには“取引”と呼ばれる項目が存在し、それを軽く指でタッチすると画面一杯の文字が列挙された。

 食材やら素材やら、見知らぬ名称がスクリーン全部に表示される。

 そこから更に種類別と言う項目に指を走らせ、次に武器と言う項目、更に剣と言う部分をタッチ。

 すると、このリブルーラで現在取引可能な武器一覧のメニューが表示される。



 この取引機能は人が一定数以上集まる場所でだけ使用可能であり、その集まる範囲内でのみ効果がある。

 今の場合だとリブルーラ内でのみ取引が可能と言うことだ。

 現物が見れないと言う部分はあるものの、登録時にはアイテムも異空間に納めなくてはならず、自動でアイテム名とアイテムの詳細が記述される為、詐欺の心配はない。

 大型の取引や国家同士、都市同士などの交易では使えないが、こう言った場合ではかなり便利と言えた。

 


「剣関係でもかなりあるな……可能な資金で更に絞り込んでみるか」



 そう呟くと、条件検索と書かれた部分に音声入力で出せる資金内での条件を付け足す。

 すると、一気に一覧は減り、その数は僅か10件程度にまで減る。

 入力した条件は1フェニオール以上、5フェニオール以内と言うものだ。

 その中かに一件、気になった項目を見つける。


 “鋼の〔ブロードソード〕、2フェニオールにて販売!” 


 同じく鋼の〔ブロードソード〕と書かれた物の中で、1フェニオール近く安い。

 性能を比べても見たが、他のと変わりはなく、どうやら急ぎで資金が必要らしいのが理由とあった。

 この肉体には片手用とは言え、刀身だけで90センチ程もある為扱いは生前と違うことになりそうだが、この機会を逃す手はないだろう。

 即座に入金の手続きをし、2フェニオールを振り込む。


 《手紙が届きました》


 

 と言う音声が脳裏に響く。

 見てみれば早速アイテムが届いたと言う知らせであった。

 一時管理所と言う形で保管されていた剣を、自身のアイテム欄に移す。

 性能を見てみようと一度具現化し、腰に鞘ごと佩いてからステータスから装備を見る。



 鋼のブロードソード☆

 物攻(30)クリティカル率(3%)

 これは鋼で出来ている。



 異界の軍服〔英雄の軍服〕★☆☆

 物防(65)魔防(45)

 これは神の祝福を受けている

 これは全ての物理耐性を上昇させる☆☆☆

 これは様々な魔法+異常耐性を上昇させる☆☆

 これは稀に物理的攻撃を完全に遮断する☆

 これは劣化しない

 これは自己修復する



 異界の軍靴〔英雄の軍靴〕★☆

 物防(18)魔防(10)

 これは神の祝福を受けている

 これは速度を上昇させる☆☆

 これは疲労を軽減させる☆☆☆

 これは劣化しない

 これは自己修復する

 


 剣の他にもどうやら今着ている軍服も装備として扱われるらしく、その性能が載っていた。

 ☆は五つで黒星となり、計15個が最高である。

 そう考えると軍服と軍靴はかなりの高位装備と言うこととなる。

 元の軍服ならそこまでのレアリティはないのだろうが、あの無貌の神の計らいらしい。

 尤も、今のアリーシャでは、物防がどうたら、物攻がどうたらと言ってもどれくらい凄いのかは不明なのだが……



 その日はそこまでとし、一日の疲れを風呂で癒し、美味い食事で明日からの本格的な活動の為に英気を養う。

 そう、明日は“クラス”拝命所に向かう予定であった――――






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