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第八話

 浮遊するランタンに照らされた薄暗い洞穴。その中で白刃が幾度も舞う。

 狭い通路をまるで我が物のように縦横無尽に走り回り、獲物の肉体に死神の刃を突き立てる。

 また一体。哀れなジャアイアントラットが、ブロードソードの斬り上げで胴体を寸断された。

 襲い掛かる別の個体を覚えたてのスキル、“シールドバッシュ”による脳を揺らす盾の一撃で弾き飛ばし、素早く接近。

 そのまま素早い突きの連続で正確に串刺しにしてやる。

 宙から襲ってきたスティルバッドの一撃をバックラーで弾き、1の太刀、2の太刀で誘い、3の太刀で音波で対応出来ない速度と位置から斬りこむ。



 瞬く間にジャイアントラットにスティルバットが消滅していく。

 軽くウィンドウに目をやるが。どうやらドロップはないらしい。

 レベルもどうやらまだ上がらないらしく、ステータスを見れば残り経験値26と表示されている。

 ボスまでにレベルを3に繰り上げたい。能力上昇の恩恵はかなり有用なのだ。

 パーティーを組んでいる分、ボーナスで経験値倍率が上がっているが、それでも一人よりは減っている。

 後5体以上は倒さないとレベルUPは厳しいだろう。周囲に魔物の気配がない事を確認し、口を開く。



「疲れていないか?」

「……大丈夫。なにも、してないから」



 ちょっと申し訳ない顔をする。まだレベルも低く、魔法の錬度も低いエヴリーヌの魔法使用回数は少ない。

 深夜0時にリセットされるソレは、現状では各魔法で5発ずつしか放てなかった。

 既に炎の礫(ファイアビット)を1回、それに石の礫(ストーンブラスト)も1回使ってしまっている。

 その為2階層目では未だ使用しておらず、エヴリーヌは半ばお荷物状態であった。

 それが悲しい。役立てると息巻いたのに、結果がこれではもの悲しくもなる。

 


「……?」


 ぽんっと、エヴリーヌより少しだけ大きな手が頭に乗せられる。

 そのままわしゃわしゃ撫でられ、あぅあぅと内心で混乱してしまう。


「そんな顔するな。後ろに味方が居るっていうのは、それだけで精神的に心強い。それに、エヴリーヌにはボスでたっぷり暴れてもらう予定なんだ。言っただろう? 雑魚は任せておけって」



 それは慰めだったのかもしれない。

 もしかしたら、ただ事実を告げただけかもしれない。

 でもそんな言葉が。態度が、エヴリーヌの心を軽くした。

 今が荷物なら、後で返せばいい。それこそ利子付きで、エヴリーヌ無しが考えられないくらい。

 そう、今はエヴリーヌにとって雌伏の時なのだ。それを理解し、力強くうなずく。



「……うん」

「よし、それじゃあ行こう」

「(こくり)」



 エヴリーヌの雰囲気から暗い感情が払拭されたのを確認し、アリーシャは進む。

 既に2層に降りてきて30分近い。戦闘も先のを合わせれば3度目の遭遇だ。

 が、ドロップは1度だけであり、これでは今日も赤字確定である。

 ランタンに照らされた暗い道を警戒しつつ進む、2層目の魔物は同じ姿でも1層目の魔物より力が強かった。

 つまり、レベルが違うのだ。階層毎で場合によって出現する魔物や強さががらりと変わる場合もあると言うが、流石に初心でそれはないらしい。



 2人パーティーの為、バックアタックが怖いが、幸いこの洞穴は分かれ道が殆どない。

 2層目の岩肌はどこか湿っており、空気も湿気を多く含んでいる。

 警戒しつつ進んでいくと、アリーシャの警戒網に数体の魔物が引っ掛かった。

 丁度このまま進んだ先にある、右にそれている道の先だ。

 あらかじめ決めといたハンドサイン――前方に敵が居る+先行する+背後に警戒してくれ――を送ると、エヴリーヌが力強く頷く。



 己の気配を出来るだけ薄くし、洞穴に溶けるように調整。

 そのまま音の一切を殺して速やかに角へと走りよる。

 素早く耳を済まし、音を拾いつつ気配から数を推測。

 魔物の数は2体。内心でタイミングを見計らう。



(接触まで5秒。5、4、3、2、――1ッ)



 くるりと体を回転し、そのまま刃を右下に走らせる。

 一体のジャイアントラットが切断され、そのままケイヴスネイクに攻撃される前にその胴体を真っ二つにしてしまう。

 反撃を許さない迅速果断。これも筋力と、初心者が扱うには少々攻撃力の高い鋼のブロードソードのお陰だ。

 本来なら一撃とはいかない。そうすればこんな真似も出来ないだろう。

 後ろからとてとてと駆け寄ってきたエヴリーヌを確認し、そのまま先に進んでいく……






 更に奥に進む事数分。初めて見る魔物が出現した。

 全長2メートル近く。2足歩行であり。片手に錆びた剣、伽藍の瞳。

 全身は白骨化し、カタカタと口元が噛み合わさり不快な音を奏でている。

 “スケルトン”と呼ばれる、初心で出るには珍しい魔物だ。



「シッ!!」



 振り下ろされた剣の一撃はブロードソードで跳ね上げ、そのまま素早く一閃。

 今までと違い、硬質な抵抗感と共にあばらを数本叩き折る。

 が、それまで。何事もなかったかのように、緩慢な動作で次々と剣を振り回す。

 それを正確に紙一重で回避しつつ、飛び掛ってきたジャイアントラットにシールドバッシュを叩き込む。

 スケルトンの袈裟懸けの一撃を逆下から掬いあげる様に弾き、確率で発生するスタン状態に陥っているラットに素早い突きを繰り出す。

 そのままクルクルと回転し、スケルトンの脇に潜り込み遠心力を加えた一撃を背骨に叩き込んだ。



 バキャッ――と言う音が響き、砕け散った骨が当りに散乱し、そのまま消滅してしまう。

 そのまま近くから這い寄ってきたケイブスネイクを両断。

 気配察知に魔物が引っ掛からなくなったのを確認し、一息吐く。

 流石に一時間以上の精神集中はアリーシャでもやや疲れる。

 数度の戦闘により、大分生前との肉体差による違和感も消化し終わり、その一撃はより正確かつ鋭いものへと遂げていた。

 ウィンドウを展開し、その画面を見る。スケルトンだけ実力が一足飛びな気がしたのだ。



 〔スケルトン を 倒しました。11の経験値を得ました〕

 〔スケルトン は 錆びた鉄剣をドロップしました。錆びた鉄剣は分配されました〕

 


 やっぱりかと溜息が零れた。ケイブスネイクで経験値は平均4~5である。

 ラットやネズミは3~4。そう考えるとスケルトンの経験値が非常に高いのが分かるだろう。

 つまり、それだけ他の魔物より実力も高いと言うことになる。

 実際その物理的防御力は見かけによらず高い。アリーシャの一撃で倒せないのが良い証明だ。



「……アリーシャ?」

「んっ、ああ。いや、何でもない行こうか」

「(こくこく)」




 その後も極稀であるが、スケルトンが出現。

 一体であればなんの問題もないのだが、複数の魔物と組まれると少々厄介だ。

 どうしてもカバー出来ない面が露呈してくる。

 結果的にケイブスネイクに噛まれる、ラットの牙をもらう。

 が、ここで真価を発揮したのが“軍服”であった。

 その防御力はプレートアーマー。つまりは全身鎧に匹敵する。



 これは取引機能で他の防具を調べて比べた結果なので、間違いない。

 事実スケルトンの一撃すら軍服を突破する事はできなかった。

 ただ、布であるのは変わらない。衝撃までは殺せないのだ。

 相応の打撃を食らえば骨が折れたり、内出血や打撲を起こす可能性は十分にある。

 あまり防具に頼るのはよくないだろうと気を引き締め、上がったレベルによる能力上昇を確認していく。

 そう、先ほど2度目のスケルトンで遂に3レベルに上昇したのだ。



 周囲に魔物の気配は無い。それはそうだ。

 現在アリーシャは遂に初心の洞穴の最奥に到達している。

 通路の先に見える空間は広く、複数の魔物の気配がしているが、こちらまで迫ってくる気配はない。

 恐らくはボスが居るエリアだ。その為にレベルによる能力とスキル把握を決めたのである。



「ちょっと待ってくれ、能力だけ確認する」

「……分かった。エヴリーヌも確認、する――」



 エヴリーヌが宙に視線を走らせるのを横目に、アリーシャもウィンドウを展開。

 そのままステータスの総合の覧をタッチ――


 《総合》

 プレイヤー名:アリーシャ・レイヴニアン

 種族:魔族(???)

 称号:元英雄

 職業:ナイト

 レベル:3

 技力:102/119

 精力:51/51

 正気度:40/42

 状態:正常

 次のレベルまで:あと194


 《装備》

 武器:鋼のブロードソード

 頭:無し 首:無し 

 身体:異界の軍服〔英雄の正装軍服〕

 腕:無し

 手:バックラー 

 下半身:異界の軍服〔英雄の正装軍服〕

 足:異界の軍靴〔英雄の正装軍靴〕

 アクセサリ:無し アクセサリ2:無し アクセサリ3:無し


 《能力値》

 体力:39(+12) 筋力:42(+13) 敏速:29(+6)

 器用:29(+) 魔力:2(+) 精神:27(+10) 

 運:8(+) 魅力:14(+4)


 《物理耐性》

 貫通:6 斬撃:6 打撃:6

 《魔法耐性+異常耐性》

 無:4 火:1 水:4 風:4 雷:4

 土:4 光:1 闇:6 特殊:2



 筋力の成長が著しい。精神的にはやや疲労しているが、体力的に疲れていないのはどうやら純粋に体力が増加した影響のようだ。

 技力は物理的な魔法によらない技で使用するから、増加は非常に有り難い。

 問題はやはり魔力の成長が殆どないことに、思ったより敏速が伸びていない点だろうか。

 正気度に関してもどうやらステータスの成長に合わせて上昇するらしく、低下よりは成長の方が今のところ高いようだ。

 他にもアクティブスキルの取得を確認すれば、新たに2つ確認した。



 〔咆哮〕

 効果:(半径15メートル内の敵対生命体から大きな敵意を得る)

 条件:戦士系職業に就いている。

 補足:これは一度使用すると1分間再使用出来ない。また、技力15を消費する。


 〔重斬〕

 効果:通常の一撃の125~130%相当の損傷を与える。

 条件:前衛職に就いている+片手剣または両手用の刃物か打撃武器を装備している。

 補足:これは一度使用すると5秒間再使用出来ない。また、技力を5消費する。



 使い方に関してはまるで初めから知っているかのように、頭に自然と浮かんでいた。

 明確に対象スキルを想像し、そのまま条件に該当していれば発動するらしい。

 他にも回復薬ポーションの準備は大丈夫か確認したりしていく。

 問題はなさそうだと判断し、周囲の気配を探りつつエヴリーヌに視線をやる。



「準備はいいか?」

「……んっ」


 こくりと頷かれる。どうやらアリーシャより先に確認が終わっていたらしい。

 よしっと、自身に気合を入れる。脳内で手順を構築し、どうすればより効率的に事が進むかを計算していく。

 暫しの思考の後、アリーシャが口を開いた。

 

「先に私が突撃し、魔物どもの敵意を引く。雑魚の一撃は殆どダメージにならないだろうから、エヴリーヌはボスだけ集中的に魔法を頼む」

「……わかった!」



 力強い肯定に笑みが零れる。心境はまるで父か兄であった。

 一度深呼吸し、身体を最適化アジャストしていく。

 カッと瞳を見開き、バックラーを前方に構えつつ、やや腰を落としブロードソードを右下に構え――

 突撃ッ! 通路を最大速度で走りこみ、瞬く間に広大な広場に侵入。

 そのままボスに一直線。魔物達がアリーシャの侵入に気づき、後ろや横、前から殺到する。

 それらを時に鋭い一撃の元即死させたり、バックラーで弾き飛ばしつつボスの眼前まで移動。

 アリーシャを中心に、全ての魔物が射程内に入った瞬間――――



「ハァアァアアッ!!」



 鋭い気合の声がビリビリと空間に木霊した。

 一瞬でアリーシャに突き刺さる敵意が増加し、攻勢が増す。

 それらを無視してブロードソードを袈裟懸けに振るう。

 が、4本ある腕と剣に受け止められてしまう。



『命知ラズノ娘ダ。殺スニハ惜シイ容姿ダナ、四肢ノ腱ヲ斬リ落トシ、性奴隷トシテヤロウ』



 スケルトンに似た見た目の、“スケルトンロード”がカッカッカッと、カタカタ鳴る頭蓋の口からどうやってか不気味な言葉を発する。

 その体躯は2メートルを凌駕し、構えた4本の腕に装備している武器も錆びてなどいない。

 胸部には胸当てが、頭にも金属性の兜を装着し、足にもグリーブが見える。

 どの装備もまるで新品のような輝きを放っていた。



「ハッ、アンデッドの慰みモノになるつもりなど私にはないッ!」



 発された内容に肉体的な反応か、嫌悪感がぞわぞわと駆け巡り、思わず罵倒してしまう。

 そのまま高速の連撃を流れるように叩き込む。流石は腕が4本と言うべきか、2本では不可能な動きで巧みに剣を操りいなしてくる。

 明らかに剣術に心得のある動き。思った以上にボスの実力は、ダンジョンで出現する魔物に比べて高いようだ。

 舞うようにくるりくるりと身体を捻り、回転するようにブロードソードを叩き込んでいく。

 そのまま雑魚を寄せ付けず、回転に巻き込む形でナマス斬りにしてやる。



『威勢ノヨイ娘ダ。我ガ前デヨガリ狂ウノガ楽シミダゾ!』



 今まで守勢だったスケルトンロードが強引に剣を押し返してきた。

 その台詞と好色な視線に、この世界の元となった遊戯が普及した世界から来た者なら、遊びではないのだと思い知ったかもしれない。

 あるいは腰を抜かしただろうか。それだけの邪悪な気配と威圧を放っている

 幸いアリーシャは元からこの世界を、遊技場などとは見ていない。

 更にはこの程度の威圧に屈する程、柔な生前も生きていない。



「――ッ」


 

 後ろから遅れてエヴリーヌが駆けてくる気配を感じつつ、明らかにアリーシャ以上の腕力に逆らわずバックステップで距離をとる。

 そのまま飛び掛ってきたジャイアントラットを真っ二つにし、ついでとケイブスネイクを切断。

 更にスケルトンを弾き飛ばし、素早く左手からスロイングダガーを投擲し頭蓋を砕く。

 一気に3体始末し、雑魚の数はようやく10を下回ったろうか。

 スケルトンロードが不気味な笑いと共に駆けてくる。

 それにあわせ、再びアリーシャは“咆哮”を発動し、スケルトンロードがエヴリーヌに向かわないよう気を配る。



『ホォ! 別ノ女ガ居タカ、小サイガ、我ハ悲鳴モ好キデナ。先ノ楽シミが増エタワッ!!』


 その声にエヴリーヌが一瞬びくりと震えるが、それを払拭し鼓舞する為にも声を張り上げる。


「言っていろ。どうせ貴様はここで消滅する運命だ、私がその存在を否定するっ!!」



 迎え撃つように走り出し、そのまま4本の腕から繰り出される連続攻撃を次々といなす。

 袈裟懸け、逆袈裟、唐竹、下段斬り上げ……

 確かに純粋な手数の増加は驚異的だろう――がっ! 技量では圧倒的にアリーシャが勝る!

 4本の腕の連続攻撃、その一瞬後に出来る隙を突き、素早く重斬を発動。

 見た目には変化は無いが、殺傷性を増した強烈な一撃がスケルトンロードの胴体に叩き込まれるッ!



『グッグォォオ!?』



 予想以上のダメージか、苦痛の声が鳴り響く。

 そのまま走り出し真横から素早くシールドバッシュを全力で叩き込み、体勢を崩してやる。

 更にスケルトンロードが振り向くより早く、その脚部へとブロードソードを振るう。

 斬り飛ばすには至らないが、がくりとスケルトンロードが膝をついた。

 好機ッ、と渾身の一撃を袈裟懸けに振るう!



『ヌゥッ舐メルナヨッ!!』



 流石はボスモンスター。4本の腕と剣を交差し、しっかりと受け止めてきた。

 そのまま体勢の上位を維持し、グッと力を込めて押さえ込む。

 別にこの一撃が決まるなど、最初からアリーシャだって思っていない。

 腰と腕に全力を注いだままアリーシャが叫んだ。



「エヴリーヌッ!」

「……任せて――炎の礫(ファイアビット)!」



 後ろで機会を窺っていたエヴリーヌが、アリーシャの言葉に詠唱していた魔法を解き放つ。

 高速で飛来する炎の礫はスケルトンロードに命中し、確実にダメージを蓄積させていく。

 更に逸れた一部が雑魚に命中し、一体があっというまに消滅。

 押し返されそうになるのを気合で持ちこたえ、エヴリーヌの更なる魔法の時間を稼ぐ。

 その間ラットやコウモリ、それにスネイクなどの攻撃は一切無視だ。



「……大地の力、石の礫(ストーンブラスト)!」


 次々と一節クラス魔法の詠唱が発動し、下級ながらも侮れない攻撃魔法がスケルトンロードを打ち据える。

 パーティメンバーには損傷がいかない設定である為、問題なく雑魚ごと礫の嵐だ。


『ォ゛ォ゛オ゛オ゛―――ッ!!』



 それに合わせ、わざと体重を後方に引き戻し、相手のバランスを崩してやる。

 そこに重斬による一撃を胴体に叩き込むと、明らかな手応え。

 スケルトンロードの口からは怨嗟のような声が漏れ始める。

 よし、いける! と追撃しようとした瞬間、伽藍の瞳。

 その奥を真紅の怒りに染め上げたスケルトンロードが、手負いの獣よろしく襲い掛かってきた。 



『許サヌ……許サヌゾォッ!! 斬リ刻ンデカラ死体ヲ陵辱シ、ソノ後モ眷属トシテ永劫コキ使ッテヤルワァァアァ!!』


 今までの剣術を匂わせる動きを捨て、筋力にものをいわせた乱撃が次々とアリーシャに叩き込まれる。


「クッ……馬鹿力めっ!」



 時にバックラーで弾きつつ、剣筋を見極め回避し、追いつかれた分だけを刃で逸らす。

 それでも圧倒的な膂力は腕に痺れを走らせる。

 苦痛に顔を歪めながらも、エヴリーヌの詠唱を確認し、自身の位置を調整。

 飛び掛ってくる雑魚をスケルトンロードを盾にする形で防ぐ。



『許サヌッ! 許サヌッ!!』

「白骨死体は大人しく墓場に帰るがいいッ!」


 乱雑な一撃をくるりと回転して回避し、そのまま胴体に重斬を叩き込む。


「……燃えちゃえ……炎の礫(ファイアビット)!」



 更に頭部を狙った魔法が直撃。

 限界までダメージを受け、スケルトンロードの動きが鈍くなる。

 この隙を逃すほどアリーシャは甘くない。

 即座に一歩踏み込み、両腕でブロードソードを握ると、そのまま渾身の膂力で重斬を発動。

 何度も叩き込まれ、ダメージも蓄積していた胴体がついに切断されるッ!



『バ、バカ……ナ―――』



 その言葉を最後に、ずるりと。切断された背骨から上半身が真後ろにどすんと倒れこむ。

 そのまま徐々に薄くなっていき、やがて他の魔物同様に消滅していった。

 ここで気を抜かず、残った雑魚を手早く片付けてしまう。

 完全に洞穴に静けさが満ちた瞬間、アリーシャが大きく息を吐いた。


 ウィンドウを立ち上げ戦闘記録をさかのぼる。


 〔スケルトンロード を 倒しました。100の経験値を得ました〕

 〔スケルトンロード は 小さな宝石箱を落としました。小さな宝石箱を獲得しました〕

 〔スケルトンロード は 初心の洞穴踏破の証を落としました。初心の洞穴踏破の証は分配されました〕



「おわった……?」


 気配察知が出来ないエヴリーヌが不安そうにきょろきょろ当たりを見回している。

 ウィンドウを消し、にっこりと笑みを浮かべて頭をわしゃわしゃ撫でてやった。


「ああ、もう心配ない。流石にエヴリーヌは疲れただろう?」

「そんな……ことない」


 そう強がるが、年齢相応の体力しかないエヴリーヌの膝は笑っている。

 そう遠くない先で立っていられなくなるだろう

 

「じゃあこうしよう。私が疲れたんだ、だから今日はこれで帰ろうか」



 そう言ってアリーシャが道具屋で買っといた“脱出の鈴”を取り出す。

 その名のとおりで、周囲に魔物が居ない場合に使用できるアイテムだ。

 ダンジョンに潜るなら必需品であるが、消耗品の癖に1つで銀貨10枚と中々に高い。

 アリーシャの言葉を信じたのか分からないが、こくりと頷いたエヴリーヌによし帰ろうかと声をかけ、そのまま脱出の鈴を振った。


 ――――チリン、と言う儚い音と共に、一瞬で2人はその場から掻き消えていた………





後書き


予想以上に評価が伸びているので、無駄に量が増えました。

メインがぁ!?

と言うか、ダイスッ! こら、ダイス! 敏速で最低に近い値をたたき出してくれたんですけどw

逆に筋力は最高に近い値を……

ドロップも全然判定成功しないし。酷い――


ボスの経験値はパーティでも増加と減少なしで、全員に分配。

また、必ず何かドロップします。証は絶対です。


感想評価いつでもカモン! あると今日みたいにまた頑張れる。

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