プロリーグ
ガルナイサテライト。
本編『騎馬戦記☆ガールズナイツ』で高校生たちが本気でやっている競技、
《ナイツゲーム》の初心者向け観戦回です。
本編未読でも大丈夫。
とりあえず観戦してみましょう。
「ねえ」
「なに?」
「騎馬戦って、こんなに殺伐としてたっけ?」
「してないわね」
「騎馬戦って、三人で土台を作って人を乗せて、相手の帽子を奪い合う絶滅寸前の運動会競技のはずよね」
「これはナイツゲーム。普通の騎馬戦ではないからね。一応プロスポーツよ?」
「……」
格子円競技場。
サッカーコート四面分の広さを持つ、ナイツゲーム専用競技場だった。
フィールドいっぱいに、各陣営とも二百人近くの選手が騎馬として並んでいる。
しかも。
剣。
槍。
盾。
棍。
そして。
「なんで鎌持ってる人いるの?」
「趣味じゃない?」
「競技の話をしてるんだけど」
「競技用」
「鎌が!?」
もちろん本物ではない。
使用されるのは、安全性を考慮したスポーツチャンバラ用の素材を使った武器。形状は基本自由だが、もちろん審査だってある。
安心安全。
血は出ない。
だからこうして幼い妹にも見せられる。
でも遠目には。
普通に戦争だった。
『両チーム、配置につきました!』
実況席から声が響く。
『西、半身大概ス! 陣形は横陣!』
「横陣?」
「横に広がる」
「見たら分かる」
「じゃあ聞かないで」
「名前だけで分からない部分を説明してよ!」
『東、立ち読みジャイアン! こちらは魚鱗陣!』
フィールドの反対側。
騎馬の集団が。
中央を先端にした三角形を作っていた。
「……ねぇ、もう少しチーム名、なんとかならなかったの!?」
「それは作者に言ってくれ」
「メタいよ!?」
「作風だ」
妹は( ゜д゜)こんな顔になるしかなかった。
「……あれは?」
「魚」
「どこが!?」
「魚鱗陣ね」
「魚の要素を聞いてんの!」
「昔の人に聞いて」
「投げた!」
私は開始前から疲れてきた。
今日は。
友人に勧められて、生まれて初めてナイツゲームという競技を妹と観に来ている。
事前情報。
ゼロ。
「で、結局なにする競技なの?」
「騎馬戦」
「武器持ってるけど」
「騎馬戦」
「陣形組んでるけど」
「騎馬戦」
「実況席に軍事評論家みたいな人いるけど」
「騎馬戦」
「絶対違うでしょ」
『試合――開始!!』
ブザーが鳴った。
その瞬間。
両軍が動く。
「うわっ」
思わず声が出た。
魚鱗陣が。
一気に前へ出た。
三角形の先頭を中心に、後続の騎馬が次々と加速していく。
「速っ!」
「魚鱗は突破向き」
私は[初めてのナイツゲーム]と書かれた冊子を見ながら答える。
「へえ」
「先端に戦力を集中して、相手の陣形を割る」
「あ、そういうのあるんだ」
「ある」
「急にちゃんと説明するじゃん」
「説明会だから」
「誰に?」
知らない。
でも。
なかなか面白い。
横一列に広がっていた半身大概スが、中央だけ少し後ろへ下がった。
「あれ? 逃げた?」
「違うみたい」
「じゃあなに?」
「受ける」
「受ける?」
次の瞬間。
魚鱗陣の先端が横陣へ突っ込んだ。
ぶつかる。
……と思った。
だが。
横陣の中央がさらに下がる。
左右が。
前へ。
「え」
気づいた時には。
魚鱗陣の先端が。
横陣の中へ飲み込まれていた。
「あっ」
妹から声が漏れる。
「囲まれた! お姉ちゃん!? 立ち読みジャイアン、囲まれちゃった!」
興奮した声が可愛い。
「ちょっと待って、これ面白い」
「今さら?」
「騎馬戦だと思ってたから!」
「騎馬戦だけど」
「もういい!」
フィールドでは。
剣を持った騎馬が盾持ちへ切り込む。
槍がその後ろから突き出される。
盾が弾く。
さらに別の騎馬が横から回り込む。
「武器って当てたら終わり?」
冊子を捲る。
「部位によるみたいね」
「部位?」
「センサー判定。致命判定を取られたり、規定条件を満たしたらリタイア」
「なるほど」
ちょうど。
一騎の選手が胸部へ一撃を受けた。
ピピッ。
センサーが光る。
「あ」
直後。
背中の装置から。
赤い液体が。
どぼん。
「なんで!?」
「リタイア」
「いや、それは分かる! なんで赤いの!?」
「血の代わりじゃない? 分かりやすいから」
「公開処刑じゃん!」
「観客には分かりやすい」
「本人には悲しい!」
赤くなった選手が、しょんぼり退場していく。
周囲から拍手。
本人も手を振った。
「あ、意外と楽しそう」
「スポーツだからね」
「さっきまで戦争みたいだったけど」
「スポーツ」
「赤い液体かけられてたけど」
「スポーツ」
「鎌いるけど」
「スポーツ」
「押し切る気だな?」
『立ち読みジャイアン、右翼が抜けたぁ!!』
実況が叫ぶ。
「右翼?」
「右」
「それは分かる」
魚鱗陣の一部が。
包囲の外へ抜けた。
「逃げた?」
「違う」
「また?」
「回り込む」
抜けた騎馬が。
ぐるりと外周を走る。
そして。
「うわ」
半身大概スの横陣。
その端へ。
横から突っ込んだ。
陣形が。
歪んだ。
「横から行くのズルくない!?」
「戦術」
「でも今、そこ空いてたもんな」
「見えてきた?」
「ちょっと」
「じゃあ次どうする?」
「え?」
私はフィールドを見る。
半身大概ス。
中央は魚鱗を受け止めている。
右は回り込まれている。
左は。
まだ余っている。
「左……?」
「うん」
「左の騎馬、右へ回したらいいんじゃない?」
妹が、そんなことを言い出す。
『半身大概ス! 左翼後方を右翼へ転進!!』
「あっ!!」
動いた。
妹が言った通りに。
私が思った通りに。
「ほら!! 左!! 左行った!!」
「声でか」
「だって今の私分かった!!」
「観戦二十分」
「私、監督向いてるかも」
「向いてるかもしれないね」
左翼から回った騎馬が。
右翼の穴を埋める。
さらに一騎。
そこから飛び出した。
「あれは何してんの?」
「遊撃」
「遊撃?」
「陣形から離れて、自由に動く役」
「勝手に動いていいの?」
「役割としてね」
遊撃騎馬は。
中央へ向かわない。
右翼にも行かない。
大きく。
外へ。
「どこ行くの?」
「さあ」
「詳しいんじゃないの?」
「相手の監督じゃないから」
「あ」
遊撃騎馬が加速した。
狙っているのは。
魚鱗陣の。
後ろ。
「後ろ!!」
思わず立ち上がった。
「後ろ空いてる!!」
「見えてるね」
「そこ! そこ行け!!」
当然。
選手には聞こえない。
でも。
言いたくなる。
魚鱗陣は前へ強い。
だから。
後ろが薄い。
そこへ。
遊撃騎馬が。
突っ込んだ。
『入ったぁぁぁぁ!!』
「よっしゃあ!!」
「初見とは思えない」
「いやこれ面白いって!!」
気づけば。
私も完全に前のめりになっていた。
「分かった」
「なにが?」
「ナイツゲームって」
「うん」
「騎馬戦じゃない」
「騎馬戦だよ」
「うるさい」
フィールドでは。
横陣が崩れ。
魚鱗が割れ。
遊撃が走り。
盾が止め。
槍が刺し。
剣が閃く。
そして。
その全部を見ながら。
私は叫んでいた。
「そこ右!!」
「聞こえないよ」
「右ぃぃぃぃ!!」
「だから聞こえないって」
「なんでそっち行くの!? 左空いてるって!!」
「もう完全に参加してるね」
「監督替われ!!」
「二十分前までルール知らなかった人が言うな」
その瞬間。
私が左へ行けと叫んでいた選手が。
突然。
右へ走った。
「なんで!?」
次の瞬間。
相手の中央がつられて右へ寄る。
左。
大穴。
そこへ。
別働隊が。
一気に突っ込んだ。
「…………」
「どうした監督」
「……なるほど」
「うん」
「私より賢い」
「当たり前」
『立ち読みジャイアン、中央突破ぁぁぁ!!』
歓声。
私は。
ゆっくり座った。
「ねえ」
「なに?」
「次いつある?」
「来週」
「行く」
「ハマった?」
「別に」
「声枯れてるけど」
「別に」
「監督替われって叫んでたけど」
「別に」
そして私は。
帰りの電車で。
ナイツゲームの動画を。
三時間見た。
◇
ナイツゲーム。
騎馬を組み。
武器を持ち。
陣形を組み。
相手の動きを読み。
突破し。
包囲し。
時には。
観客まで勝手に監督になる。
そんな。
ちょっとだけ変な。
騎馬戦である。
この競技を本気でやってる本編が↓これです。
『騎馬戦記⭐︎ガールズナイツ』
https://ncode.syosetu.com/n4403mc/
高校生たちが、だいたいこんな感じで陣形組んで殴り合ってます。
たまに陰陽師も出ます。
なんで?
作者にも分かりません。




