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恋をしていない日曜日

作者: ごはん
掲載日:2026/09/09

最近、暇だった。


仕事は嫌いじゃない。

むしろ、前の仕事を辞めてから、毎日はずっと穏やかになった。


家に帰れば好きなものを食べて、動画を見て、眠る。

休日には友達と出かけたり、旅行の予定を立てたりする。


お金にも、時間にも、昔より余裕がある。


それなのに。


日曜日の夕方になると、ふと思う。


――暇だな。


以前は、こんなふうに思わなかった。


誰かを好きだった頃は、何をしていなくても一日が少し騒がしかった。


スマートフォンを何度も確認した。

メッセージが来ていないか気にした。

次はいつ会えるだろうと考えた。

会う約束が決まれば、それだけで何日も楽しめた。


恋をしていると、普通の日まで特別になる。


何も起きていないのに、何かが起きそうな気がしていた。


けれど今は、何も起きない。


スマートフォンを見ても、特別な通知はない。


彼のことも、もう以前ほど考えなくなった。


きっと私は、恋そのものが好きだったのかもしれない。


誰かを好きになって、

次に会う日を待って、

少しだけ浮かれて、

いつもより自分をきれいにしたくなる。


あの感覚が、なくなった。


だから暇なのだ。


「私、恋愛がしたいのかな」


そう呟いてみる。


でも、答えはすぐには出なかった。


恋人がほしいのか。

結婚したいのか。

それとも、ただ毎日に少し刺激がほしいのか。


わからない。


窓の外を見る。


夕暮れの空が、ゆっくりと青から紫に変わっていく。


静かだった。


昔なら、この時間にも誰かから連絡が来ないか気にしていただろう。


けれど今日は、何も待っていない。


ふと、それが少し心地よく感じられた。


誰かの返信を待たなくていい。


誰かの気持ちを考えなくていい。


次に会う予定を気にしなくていい。


今日を、今日のためだけに使っていい。


彼女は冷蔵庫から好きな飲み物を取り出した。


ソファに座って、窓の外を眺める。


そして思った。


恋をしている日曜日には、

恋をしている日曜日の楽しさがある。


でも、恋をしていない日曜日にも、

きっと別の楽しさがある。


今まで私は、恋をしていない時間を「何もない時間」だと思っていた。


でも、本当は違うのかもしれない。


何もないからこそ、

自分の好きなことを好きなだけできる。


眠ってもいい。

出かけてもいい。

小説を書いてもいい。

何もしなくてもいい。


誰かとの未来を考えなくても、

自分の未来を少しずつ楽しみにしてもいい。


彼女はスマートフォンを伏せた。


そして、窓の外をもう一度見る。


「今日は、恋をしていない日曜日なんだ」


そう呟いて、少し笑った。


恋をしていない。


だから暇。


でも――


だったら、この暇な日曜日を楽しんでみよう。


恋が始まるのを待つのではなく、

恋をしていない今を。


そう思ったら、不思議と日曜日の夕方が、少しだけ楽しみになった。

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