恋をしていない日曜日
最近、暇だった。
仕事は嫌いじゃない。
むしろ、前の仕事を辞めてから、毎日はずっと穏やかになった。
家に帰れば好きなものを食べて、動画を見て、眠る。
休日には友達と出かけたり、旅行の予定を立てたりする。
お金にも、時間にも、昔より余裕がある。
それなのに。
日曜日の夕方になると、ふと思う。
――暇だな。
以前は、こんなふうに思わなかった。
誰かを好きだった頃は、何をしていなくても一日が少し騒がしかった。
スマートフォンを何度も確認した。
メッセージが来ていないか気にした。
次はいつ会えるだろうと考えた。
会う約束が決まれば、それだけで何日も楽しめた。
恋をしていると、普通の日まで特別になる。
何も起きていないのに、何かが起きそうな気がしていた。
けれど今は、何も起きない。
スマートフォンを見ても、特別な通知はない。
彼のことも、もう以前ほど考えなくなった。
きっと私は、恋そのものが好きだったのかもしれない。
誰かを好きになって、
次に会う日を待って、
少しだけ浮かれて、
いつもより自分をきれいにしたくなる。
あの感覚が、なくなった。
だから暇なのだ。
「私、恋愛がしたいのかな」
そう呟いてみる。
でも、答えはすぐには出なかった。
恋人がほしいのか。
結婚したいのか。
それとも、ただ毎日に少し刺激がほしいのか。
わからない。
窓の外を見る。
夕暮れの空が、ゆっくりと青から紫に変わっていく。
静かだった。
昔なら、この時間にも誰かから連絡が来ないか気にしていただろう。
けれど今日は、何も待っていない。
ふと、それが少し心地よく感じられた。
誰かの返信を待たなくていい。
誰かの気持ちを考えなくていい。
次に会う予定を気にしなくていい。
今日を、今日のためだけに使っていい。
彼女は冷蔵庫から好きな飲み物を取り出した。
ソファに座って、窓の外を眺める。
そして思った。
恋をしている日曜日には、
恋をしている日曜日の楽しさがある。
でも、恋をしていない日曜日にも、
きっと別の楽しさがある。
今まで私は、恋をしていない時間を「何もない時間」だと思っていた。
でも、本当は違うのかもしれない。
何もないからこそ、
自分の好きなことを好きなだけできる。
眠ってもいい。
出かけてもいい。
小説を書いてもいい。
何もしなくてもいい。
誰かとの未来を考えなくても、
自分の未来を少しずつ楽しみにしてもいい。
彼女はスマートフォンを伏せた。
そして、窓の外をもう一度見る。
「今日は、恋をしていない日曜日なんだ」
そう呟いて、少し笑った。
恋をしていない。
だから暇。
でも――
だったら、この暇な日曜日を楽しんでみよう。
恋が始まるのを待つのではなく、
恋をしていない今を。
そう思ったら、不思議と日曜日の夕方が、少しだけ楽しみになった。




