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第77話:情報の対価(POSデータと、見えない足跡)

コンビニは、24時間365日、この世界の「動悸」を記録し続けている。ケニーの手元には、膨大な数字と映像という名の「資産」が積み上がっていた。

1. 「数字」が語る軍の動き

「オーナー、第402号店付近のPOS(販売時点情報管理)データに異常な偏りが出ていますわ。この三日間で、保存性の高い軍用食と、特定の解毒ポーションの売上が通常の四倍に跳ね上がっています」

ソラリスが提示した魔導端末の数値には、帝国軍の「行軍の予兆」が残酷なまでに正確に表れていた。兵士たちが隠密に動こうとも、彼らが喉を潤し、腹を満たすためにコンビニのレジを通るたび、その「意図」はビッグデータとして可視化される。

2. 「防犯カメラ」が捉えた真実

ケニーは、司令室の大型モニターに防犯カメラのアーカイブを呼び出した。

「……ガストンたちがどれだけ目を光らせても、彼らは『制服』を着た敵しか見ない。だが、うちのカメラは『客』として紛れ込んだスパイの顔も、彼らが買った嗜好品の癖もすべて記録している」

そこには、テロリストが次のターゲットを物色する瞬間の、わずかな視線の動きまでが収められていた。

3. 「情報」という新商品

「……ソラリス、このデータをパッケージ化しろ。王国軍の兵站部、それに一部の有力な商会へ売り込む」

「オーナー、情報を売るのですか? 商店がそれをやれば、客の信用を失うリスクもありますわ」

ケニーは、冷めたコーヒーを口にし、冷徹に言い放った。

「これは『密告』じゃない。『マーケティング情報の提供』だ。どのエリアで、どんな需要・ ・が高まっているか。それを知る権利を、相応の対価で売る。……平和を守るためじゃない。この店を24時間、安全に開け続けるための資金源にするんだ」

4. 49歳の「ビッグデータ経営」

店にやってくる客たちは、自分が支払った代金以上に価値のある「情報」を置いていっていることに気づかない。

「漁師が三時に買うパンも、農家が五時に買う肥料も、すべてはこの世界の『正解』を導き出すためのサンプルだ」

ケニーは、レジから聞こえる「ピッ」という音を、コインの音ではなく「情報の着金音」として聞き流していた。

49歳。小売りのプロは今、この世界の裏側を支配する「情報の商人」へとその姿を変えようとしていた。

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