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第50話:止まり木(昼下がりのお客様と、24時間のシェルター)

店舗の自動ドアが開く。入ってきたのは、日に何度も顔を見せる、少し疲れの見えるご婦人だった。

1. 繰り返される「お買い物」

午前中に一回、午後に一回。そして、日が暮れてからも一回。

彼女が買うのは、決まって小さなつまみの小鉢や、一合の酒だ。

「……すみません、何度も。主人が、これがないと機嫌が悪くて」

申し訳なさそうに笑う彼女の手は、微かに震えていた。

2. 重荷としての「食事」

ある日、ケニーは納品の合間にそっと声をかけた。

「……奥様。1日に何度も足を運ぶのは、大変ではありませんか?」

婦人は一瞬戸惑い、それから堰を切ったように、小さな声で語り始めた。

「……主人は、ご飯のほかに、必ずその時の気分に合った『つまみ』が別にないと許してくれないのです。それを一度に用意しても、後から『これじゃない』と言われるのが怖くて……。だから、その都度、ここへ走るのです」

3. 「逃げ場所」としての不夜城

朝も昼も、そして深夜でも。

ケニーは、彼女がただ「買い物」に来ているのではないことに気づいていた。

家の中に居場所がなく、夫の顔色を伺い、息が詰まるような生活。

その家から外へ出るための「正当な理由」が、24時間開いているこのコンビニだったのだ。

「……ここに来れば、明るくて、誰かがいてくれるでしょう? 買い物さえしていれば、少しの間だけ、あそこから逃げても許される気がして」

4. 49歳の魂が見つめる「祈り」

ソラリスは、その話を聞いて胸を痛め、何か魔法で助けられないかと考えた。

だが、ケニーは静かに首を振った。

「……俺たちができるのは、魔法で彼女を救い出すことじゃない。彼女が逃げたくなった時、いつでもここを明るくして、開けておくことだ」

24時間の明かりは、誰かの「逃げ道」でもある。

「いらっしゃいませ」という言葉で迎え入れ、ほんの数分間の平穏を提供する。

それもまた、ケニーが異世界に持ち込んだ、目に見えない「インフラ」の形だった。

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