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第5話:不夜城の落成と、消えゆく自由

領主の長男ケニーが、7歳のプレゼンから6年の歳月をかけて完成させた1号店――『ケニー・ワンストップ・ショップ』の落成の日だ。

夜の帳が下りる頃、街の住人たちは驚愕に目を見開いた。

これまで夜といえば松明の微かな光しかなかった街に、太陽の欠片を閉じ込めたかのような「不夜城」が出現したからだ。店外に設置された魔道具の街灯が、周囲の路地を昼間のように照らし出している。

ケニーは13歳になっていた。

まだ少年のあどけなさが残る容姿だが、その瞳には冷徹な経営者としての光が宿っている。

「……若様、準備が整いました。監視システム、正常に作動中。死角はありません」

店内のカウンターの裏。

かつて路地裏を這いずり回っていた孤児の少年が、今や清潔な制服に身を包み、鋭い目で魔石のモニターを凝視している。

「よし、開店オープンだ」

ケニーの合図とともに、重厚な扉が開かれた。

店内に入った客たちは、整然と並んだ棚、魔法で冷やされた飲み物、そして何より「値札」という概念に圧倒されている。交渉も駆け引きもいらない。提示された価格で、誰にでも平等に、24時間、必要な物が手に入る。

それが、「自由な商売」の終焉だと気づく者はまだいなかった。

社会的抹殺(クレーマー対応)

「おい! こんな子供の店で商売ができるか!」

客の列をかき分けて入ってきたのは、街の商業ギルドの幹部、ドランだった。

彼は既存の武器屋や食料品店を束ねる実力者で、13歳のケニーが自分たちの利権を侵すことを恐れていた。

「いいか、皆! この店は領主の威を借りて、我々の職を奪おうとしているのだ! インチキな魔道具で我々を監視し、法外な値段で……」

ドランが13歳の少年の細い肩を掴もうとした瞬間、カウンターの影から重装備の警備兵が音もなく現れた。

「……おっと、そこまでだ。ドラン殿」

「な、なんだお前たちは! 私はギルドの……」

「『領地治安維持法・第12条』。店舗運営を妨害し、従業員に威圧的な言動を行った者は、即時、不敬罪および業務妨害罪として拘束される」

ケニーは冷ややかに、ドランの目の前に一枚の羊皮紙を突きつけた。

そこには、今この瞬間のドランの醜い怒り顔が、店外カメラの映像として鮮明に定着されていた。

「ドラン殿。貴殿が今朝、裏路地で隣領の密偵と接触し、この店を破壊するための金を受け取った映像も……すべて本部に記録されていますよ」

「なっ……なぜそれを!」

「店外50メートルは、俺の『視界』だ。……連れて行け」

ドランは悲鳴を上げながら、警備兵に引きずられていった。

野次馬たちは静まり返る。

彼らが目にしたのは、ケニーの店が「便利」なだけでなく、「逆らう者を一瞬で特定し、抹殺する監視システム」の一部であるという事実だった。

支配の完成

翌朝。ドランの店は差し押さえられ、その跡地には早くも「2号店」の看板が掲げられた。

フランチャイズ契約を申し出る商人が、ケニーの部屋の前に列をなしている。

彼らは、粗利60%という地獄のような条件を知りながら、それでもサインを求めてくる。

なぜなら、ケニーの「ドミナント網」の外にいることは、商売敵として、あるいは監視対象として社会的に死ぬことを意味するからだ。

「さあ、次の契約だ」

ケニーは羽ペンを走らせる。

24時間、不夜城の光が広がるたびに、領民の行動、資産、そして命のデータが、彼の手元の「POS」へと吸い上げられていく。

「便利だろう? 安心だろう? ……代償は、君たちの人生のすべてだ」

ケニーの微笑みは、もはや13歳の子供のものではなかった。

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