第46話:帝国の夜明け(異郷の1号店と、2代目の最前線)
ガルディア帝国の国境沿いにある交易都市、その中央広場。かつての王国の100店舗から剥がされた看板が、新たな地で再び掲げられた。
1. 「異物」への視線
開店を待つケニーの目の前には、遠巻きに店を眺める帝国市民たちの姿があった。
「24時間、店を開け続けるだと?」「あんなガラス張りの箱、魔物の餌食になるだけだ」
帝国は王国以上に治安が悪く、夜間の外出は禁忌に近い。誰もが、ケニーの「24時間の祈り」を狂気の沙汰だと笑っていた。
2. 49歳の「現場主義」
ケニーは自らエプロンを締め、レジカウンターに立った。
2代目オーナーとして、新店オープンの熱気と不安は何万回と味わってきた。だが、言葉も文化も違う異郷での初日は、49歳の魂を震わせるに十分な「勝負」だった。
「……ソラリス、準備はいいか。ここが、俺たちの新しい戦場だ」
「はい、ケニー様。……帝国の皆様に、本当の『便利』という光をお見せしましょう!」
外交を終えたばかりのソラリスも、王女の正装を脱ぎ捨て、スタッフとして現場に立っていた。
3. 深夜、訪れた最初の「客」
深夜。街が深い闇に包まれる中、コンビニの明かりだけが、暗黒の海に浮かぶ灯台のように輝いていた。
そこへ、一人の負傷した帝国兵が転がり込んできた。
「……ここなら、まだ明かりがあると思って……。頼む、傷を拭く布と、……何か、温かいものを」
商人連合の息がかかった国内のドラッグストアなら、兵士の身分を問い、法外な値を吹っかけただろう。だが、ケニーは無言で清潔なタオルと、保存の効く携帯用の生薬(コールドチェーンで運ばれたもの)、そして熱々のスープを差し出した。
4. 24時間が「盾」になる瞬間
「……助かった。この時間に、こんな温かいものが手に入るとは……」
兵士の涙が、スープに落ちる。
その光景を見ていた帝国市民たちが、一人、また一人と店内に足を踏み入れ始めた。
闇が深いこの国だからこそ、「24時間、必ず開いている」という事実が、どんな外交辞令よりも雄弁に市民の心を掴み始めたのだ。




