第45話:王女のプレゼンテーション(国境の門と、未知なる利便性)
隣国・ガルディア帝国の謁見の間。そこには、ケニーの提案した「100店舗の同時進出」を「商人の侵略」と断じる、保守的な重臣たちが居並んでいた。
1. 氷の謁見
「第一王女ソラリス。貴国が国内の商戦に敗れ、余った在庫を我が国に押し付けようとしているという噂、否定はできまい?」
帝国の宰相が、冷ややかな視線でソラリスを射抜く。
かつてのソラリスなら、その威圧感に震えていたかもしれない。だが、今の彼女の背後には、不眠不休で物流を支えるケニーの背中と、49年の経験が裏打ちする「確信」があった。
2. 「便利」という名の平和条約
「押し付けではありません。これは『平和と安定の輸出』ですわ」
ソラリスは、ケニーが用意した「帝国内部における物流シミュレーション」の巻物を広げた。
「我が国のコンビニ網は、単なる店ではありません。24時間、どこにいても明かりが灯り、必要なものが手に入る。この『当たり前』が、人々の心の不安をどれほど取り除くか……。宰相閣下、あなたにその価値がわかりますか?」
3. ソラリスの熱意
ソラリスは、あえて王女としての高圧的な態度を捨て、一人の「現場を知る者」として語りかけた。
「かつて私は、店で肉まんを分け合う親子の笑顔を見ました。薬の独占で私腹を肥やす者には、決して作れない景色です。……この店を、あなたの国の人々にも届けたい。それがケニー様と私の、心からの『祈り』なのですわ!」
彼女の瞳に宿る、嘘偽りのない熱意。それは、論理や利害を超えて、疑り深い重臣たちの心を微かに揺さぶった。
4. ケニー、国境に立つ
その頃、ケニーは国境の検問所で、大量の資材を積んだ荷馬車の列を眺めていた。
「……ソラリス、君ならできるはずだ。俺たちが作ってきたものは、国境なんて低い壁で止まるようなもんじゃない」
49歳の2代目オーナーとしての直感。
国内での「敗北」は、世界へ羽ばたくための「助走」に過ぎない。
ソラリスの交渉が実を結ぶか否か——今、隣国という巨大な市場の扉が、ゆっくりと音を立てて動き始めようとしていた。




