表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/54

第43話:安価という名の暴力(浸食される市場と、49歳の焦燥)

王都の街角。ケニーのコンビニの目と鼻の先に、敵連合の『王立専売・薬師堂』が巨大な看板を掲げた。

1. 圧倒的な「価格破壊」

「……なんだ、この値段は」

ケニーは、敵の店から出てきた客が持つ買い物袋を見て、言葉を失った。

薬で莫大な利益を出している彼らは、パンやミルク、日用雑貨を「原価割れ」に近い価格で並べていた。いわゆるロスリーダー(目玉商品)戦略だ。

「ケニー様……うちの客数が、昨日の半分以下に落ち込んでいますわ」

ソラリスの声も、かつてないほど沈んでいる。

2. 「見えない品質」の限界

「……あっちの方が安いし、薬も買える。コールドチェーン? トレーサビリティ? そんなの、お腹は膨らまないわよ」

店先で交わされる客たちの容赦ない会話が、ケニーの胸に突き刺さる。

いくら「正しく運んでいる」と訴えても、今この瞬間の「安さ」と「便利さ」という暴力の前では、ケニーのこだわりは「高価な贅沢品」のように扱われていた。

3. 2代目オーナーの「挫折」

49歳のケニーは、前世でも経験した「資本力による殴り合い」を思い出していた。

「……俺がやってきたことは、間違いだったのか?」

先代から受け継いだ「品質への誇り」を異世界でも貫こうとしたが、現実は残酷だ。どれだけ「祈り」を込めて店を開けていても、客がいなければ、そこはただの明るい箱に過ぎない。

4. 運送ギルドの嘲笑

店の前を、敵連合の粗末な荷馬車が土煙を上げて通り過ぎる。

「おい、ケニー侯爵! あんたの丁寧すぎる運送ごっこは、もう終わりだ! 時代は『速さと安さ』なんだよ!」

野卑な笑い声が夜の街に響く。

ケニーは暗い店内で、一人、冷えたコーヒーを握りしめた。

品質を信じて守ってきた自分の「24時間の祈り」が、巨大な資本と利権に飲み込まれようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ