表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/50

第30話:国家を測るレジ(徴税の支配と、王への王手)

王宮の謁見の間。そこには、激怒した国王と、減り続ける上納金に不満を募らせる貴族たちが詰めかけていた。

「ケニー侯爵。貴殿の『働き方改革』とやらのせいで、我が国への上納金が3割も減った。これは反逆にも等しい失態だ」

国王の威圧的な声が響く。だが、20代の若き肉体に宿る49歳の経営者は、震える指先を隠し、不敵な笑みを浮かべた。

1. 「国を没収する」という脅し

「……もはや貴殿に経営を任せてはおけぬ。コンビニのシステム、物流網、魔導レジのすべてを王家が没収し、直轄とする。貴殿は平民に落とし、現場で死ぬまで働かせてやろう」

貴族たちの嘲笑が響く。中身が49歳のケニーには分かっていた。彼らは「システム」さえ手に入れば、自分たちで回せると過信している。前世で、現場を無視して利益だけを吸い上げようとした無能な上層部と、全く同じ顔をしていた。

2. 49歳の「老獪な牙」

ケニーはゆっくりと顔を上げた。その瞳には、若者らしい情熱ではなく、酸いも甘いも噛み分けた経営プロの冷徹な光が宿っていた。

「陛下……。一つ、お忘れではありませんか? 今やこの国の税金の8割は、我が店舗の『収納代行サービス』を通じて納められています」

「それがどうした。没収すれば、その金も王家のものだ」

「いいえ。私が指を一つ鳴らせば、全店舗の通信ネットワークを遮断します。そうなれば、誰が、どこで、いくら税を納めたか、誰に滞納があるか……そのすべてのデータが消失します。陛下、あなたは明日から『誰にいくら請求すればいいか』すら分からなくなるのです」

3. 国家破綻という名の「チェックメイト」

謁見の間が、凍りついた。ケニーは一歩、王座へ歩み寄る。

「さらに言えば、全店舗の決済ポイント流通を停止させれば、市場の物資は止まり、民は飢え、経済は半日で死にます。……私を平民に落とすのは構いません。ですが、その瞬間にこの国は、帳簿も資産もない『盲目の国家』へと転落する」

49歳の経験が、王家の喉元にナイフを突き立てていた。

「私は成り上がりたいのではありません。この国を、働いている者が、そして陛下さえもが誇れる『素晴らしいシステム』に作り変えたいだけなのです。……私を潰すか、私と共に『真の繁栄』を見るか。選ぶのは陛下です」

4. 孤独な勝利と、震える背中

沈黙の末、国王は苦渋に満ちた表情で座り直した。

「……よかろう。改革の猶予を与える。だが、必ず『素晴らしいシステム』とやらを証明してみせよ」

謁見の間を辞し、廊下に出た瞬間、ケニーの膝がガクガクと震え出した。

20代の若い心臓が、限界まで波打っている。

(……死ぬかと思った。前世のクレーム対応より、1万倍きつい……)

そこへ、ソラリスが駆け寄ってきた。彼女は何も言わず、ただ震えるケニーの手を握った。

「……ケニー様。……最高に、かっこよかったですわ」

中身は49歳、見た目は20代。一人の男が、国家を相手に「現場のプライド」を守り抜いた瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ