第3話:インフラとしての「拠点」
父上から土地の使用許可は得た。だが、俺はすぐに釘を打つような真似はしなかった。
コンビニ経営において、箱(店舗)よりも重要なのは「システム」と「人材」だ。
俺が目指すのは、単なる物販店ではない。
領民の生活に深く根を張り、そこがなければ領地が回らなくなるほどの「生活基盤」だ。
まず、俺は二つの組織に接触した。
1. 「交番」機能の統合(警備兵の面接)
俺は領地の警備隊から、少し「はみ出し者」だが腕の立つ兵士たちを呼び出した。
「君たちの仕事は、店の前に立って威圧することじゃない。街の『安心』の象徴になることだ」
面接に来た強面の兵士たちは首を傾げたが、俺は構わず「接客と警備の融合」を説く。
店の角に兵士が常駐し、そこが夜でも魔道具で明るく照らされていれば、そこは天然の「交番」になる。
「道案内もする。迷子も預かる。酔っ払いは優しく追い出す。君たちの給与は、ギルドではなく私の『店』が保証する」
兵士を守るための「不敬罪」を適用したカスタマーハラスメント防止規定。これを読み上げると、現場で疲弊していた彼らの目が変わった。
2. 「情報のハブ」としての教育(孤児たちの採用)
次に集めたのは、街の路地裏で必死に生きる孤児たちだった。
彼らは街の隅々までを知り尽くしている。俺は彼らに「読み・書き・計算」を教え、最初のスタッフ候補として育成を開始した。
「いいか。君たちの書く一枚の報告書が、領地の未来を決める。どの棚が空いたか、客がどんな顔をして店を出たか。それを記録することが、君たちの武器になる」
彼らには、開発中の「魔道具カメラ(防犯兼・人流解析用)」の映像をチェックし、異常があれば即座に警備兵へ繋ぐ「オペレーター」としての役割も与える予定だ。
3. ドミナント支配への布石
俺は地図を広げ、一点を見つめる。
「まずは1号店。だが、同時に2号店、3号店の候補地も、警備の死角と人流の結節点に合わせてマーク済みだ」
各店舗を馬車で15分以内の距離に配置すれば、情報の伝達速度はこれまでの数倍になる。
コンビニの看板が立つ場所は、領主の目が届く場所。
街の灯りが消えない場所。
そして、ケニーの「支配」が届く場所だ。
「若様、例の魔道具の試作機が届きました」
孤児たちの中から選抜したリーダー格の少年が、水晶球のようなものを運んでくる。
それは、店内の映像を領主館の俺の部屋へと転送する「遠隔監視システム」のプロトタイプ。
「よし。これで『24時間365日、俺はこの街のすべてを見る』準備が整いつつあるな」
建設が始まる前の静けさの中で、俺は着実に、この街を「塗り替える」ための網を広げていた。




