第26話:境界なきカウンター(ギルド窓口代行と青い看板の侵攻)
ケニーが打ち出した他国進出の切り札は、軍隊でも政治工作でもなかった。それは、自らが展開するコンビニネットワークを駆使した「ギルド・エージェント業務」の開始である。
これまでは大きな王都や主要都市にしか存在しなかった「冒険者ギルド」の機能を、街道沿いや辺境の村にあるコンビニのレジカウンターに持たせるという、実務的な革命であった。
1. 「戻らなくていい」という衝撃
「……今日から、ここで素材を売れるのか?」
他国との国境に近い街道沿いの店舗。泥にまみれた冒険者が、信じられないといった面持ちで店主であるケニーに問いかけた。
「ああ。魔物の部位の一次査定と買取、そして報酬の立替払いをこのレジで行う。ギルド本部の認可も受けている。もう、換金のために数日かけて街に戻る必要はない」
ケニーは49歳のプロ経営者らしい落ち着きで、バックヤードに新設した魔導冷却式の「素材専用倉庫」を指差した。
冒険者は歓喜した。これまでは重い素材を抱えて街に戻る間に、他の獲物を逃し、鮮度も落ちていた。それが「最寄りのコンビニ」という拠点で完結するのだ。
2. ギルド公認の「物流インフラ」
冒険者ギルド本部にとっても、この提携は願ってもない話であった。
「ケニー侯爵の店舗網を使えば、我々は辺境に支部を維持する膨大なコストが削減できる……!」
ギルドの後押しを受けたケニーの「青い看板」は、他国の未開地や辺境の村々にまで、合法的に、かつ民衆や冒険者から熱狂的に歓迎されながら出店を広げていくことになった。
3. ソラリスの「むっつり」な窓口業務
名誉店長としてレジに立つソラリスは、冒険者たちが持ち込む荒々しい素材を、恍惚とした表情で検品していた。
「……まあ、この『狂暴な大熊の胆』。まだ温かくて、野性味溢れる香りがいたしますわ……。これを仕留めた時のあなたの筋肉の躍動、そして剥ぎ取る時の指先の動き……ふふ、想像しただけで私の脳内がパンクしそうですわ(妄想)」
清楚な王女としての仮面を保ちつつも、その瞳は屈強な冒険者たちを「むっつり」とした視線で見つめ、手際よくデータを入力していく。彼女にとって、荒くれ者たちが持ち込む「戦利品」を管理・検品することは、新たな背徳的な悦びとなっていた。
4. 49歳の経営戦略:情報と物流の支配
ケニーの真の狙いは、単なる代行手数料ではない。
「冒険者がどこで何を倒したか。そのデータがレジに集まれば、魔物の発生分布も、未発見の資源の場所も、すべて俺がリアルタイムで把握できる」
49歳の経営者は、レジを通して「大陸の軍事・資源情報」を独占し始めた。
他国の王が「店を閉めろ」と言おうものなら、その国の冒険者という戦力と物流が完全に麻痺する。ケニーは一歩も動かず、レジ一台で他国の急所を掌握したのである。




