第25話:パッカーン教誕生(経済という名の哲学)
ソラリス王女が放った「インフレ・パッカーン!」の叫びは、思わぬ方向に波及した。
もともと、24時間不夜の灯を灯し、人々の生活を支えるコンビニを「奇跡の社」として密かに祈りを捧げていた層が、ソラリスの言葉を「聖なる託宣」として受け取ってしまったのだ。
ここに、史上類を見ない宗教、「パッカーン教」が成立した。
1. 経済活動を信仰とする教義
パッカーン教の教典は、ケニーが作成した「店舗運営マニュアル」と「貸借対照表」であった。
「我らは祈る。インフレの如く、愛と富が爆発的に膨らむことを。我らは誓う。デフレの如く、己の欲望を律し、無駄を削ぎ落とすことを。すべてはパッカーンという悟りのために!」
一見ふざけているようだが、その実態は驚くほど哲学的であった。「富の循環=血の巡り」であり、滞り(不況)は悪、活発な取引(誠実な商い)こそが救済であると説くこの宗教は、商人と労働者の間で爆発的に広まった。
2. 教祖ソラリスの覚醒
お仕置きの衝撃で「パッカン」してしまったソラリスは、そのまま教祖(聖女)として祭り上げられた。
「皆様! 物を買うという行為は、世界への祈りですわ! レジで決済の音が響くたび、天に功徳が積まれるのです! さあ、今日もパッカーンと消費いたしましょう!」
彼女の「むっつり」とした情熱は、今や「経済的救済」という大義名分を得て、信者たちの心を掴んで離さない。信者たちは店舗の看板に向かって「インフレ・パッカーン! デフレ・パッカーン!」と唱和し、熱心にポイントを貯める(徳を積む)ようになった。
3. ケニーの戸惑いと論理
ケニーはこの事態を冷めた目で見ていたが、専門家としてある事実に気づく。
「……宗教は盲目だが、その実、極めて論理的だ。共通の信仰があれば、取引のコストは最小化され、信用取引の速度は極限まで上がる。これは最強の『経済ブースト』じゃないか」
ケニーのシステム(POS)は、いつの間にか「信者の徳を管理する神の帳簿」へと進化していた。
4. 陛下、再びの困惑
このカオスな光景を、国王は頭を抱えながら見つめていた。
「……ケニー侯爵。娘がまた怪しげな宗教の教祖になっているのだが、これも『経済戦略』なのか?」
「陛下。宗教とは、目に見えない価値を定義するシステムです。パッカーン教がある限り、この国の経済は絶対に止まりません。……たぶん」
ソラリスの「パッカーン」は、ついに一国の信仰さえも「フランチャイズ化」してしまったのである。




