第115話:兵站(へいたん)の合理化(ギルドの給与革命と、消えた横領)
冒険者ギルドを事実上飲み込んだケニーだったが、内部に足を踏み入れて驚いたのは、その「どんぶり勘定」の極みだった。
1. 腐敗した「経費」の闇
「オーナー、ギルドの帳簿を精査しましたが……これはもはや、帳簿と呼べる代物ではありません」
ロイが頭を抱えて持ってきたのは、不明瞭な「酒代」「武器修理費」「情報収集費」の名目で、予算の3割が消えている現実だった。
中堅幹部たちが地方の支部と結託し、冒険者たちが命懸けで稼いだ報酬から、巧妙にピンハネを行っていたのだ。
2. 「ケニーバンク直接振込」の断行
ケニーは、ギルドの全職員と所属冒険者に対し、一切の猶予を与えず通達した。
「明日から、現金での給与・報酬支払いは全廃する。全てケニーバンクの個人口座へのデジタル振込とする」
幹部たちは顔を真っ青にして抗議した。「伝統を重んじろ! 冒険者は現金が好きなんだ!」
だが、ケニーはレジ越しに冷たく言い放った。
「現金は嘘をつきますが、ログは嘘をつきません。……不満があるなら、今すぐギルドを辞めていただいて結構です。代わりに、うちの『元・問題児アルバイト』たちを支部長として送り込みますから」
3. 透明化が生んだ「本当の忠誠」
システムが導入されると、末端の冒険者たちは驚愕した。
「……報酬が、今までより二割も多いぞ!?」
ピンハネが物理的に不可能になったことで、正当な額が彼らのゴールドカードに直接振り込まれるようになったのだ。
さらに、ケニーは「ギルド厚生施設」として、全店舗の廃棄直前の弁当を格安で提供する「社食サービス」も開始。
「命を預けるなら、口先だけのギルド上層部より、確実に金を振り込み、腹を満たしてくれるコンビニ店主だ」
冒険者たちの忠誠心は、あっという間にケニーへと塗り替えられた。
4. 49歳の「整理整頓」
事務所の椅子に深く腰掛け、クリーンになった収支表を眺めるケニー。
「……結局、魔物を倒すより、身内の不正を正す方がよっぽど組織は強くなる。しんどい仕事ですが、棚卸しと同じですよ」
横領で私腹を肥やしていた幹部たちは、ケニーバンクの口座を凍結され、一晩で「無一文の容疑者」へと転落した。
世界最強の武力集団は、今やケニーが握る「デジタルな給与明細」一つで、完全に統制されていた。
ケニーはふと、111話で決意した「自分の幸せ」を思い出し、自分専用の棚から少し高いプレミアムビールを取り出した。
(……よし、今日は定時で上がらせてもらおうか)




